追放投獄全部乗り越えて復讐を、執着無双の脱獄者〜夜だけ最強?いえ闇の中ならいつでも最強です〜

鮎川重

文字の大きさ
92 / 124
第五章 囚人と奴隷は紙一重

91.何度目かの鎖

しおりを挟む
「色々と言いたいことはあるが……何で俺達はこんな目に遭わされてるんだ。」

 縦一列に並び、細い地下通路を歩く一行。長い隊列の中央付近で、ガジュは今にも暴れそうな勢いで言葉を吐いていく。前にはシャルルとユン、そしてその前には珍しく普通の服装をしたクルト。後ろにいるキュキュも含め、一同の体は鎖と手錠で縛られていた。

「本当だよ!僕ら全員脱獄囚だよ!?手錠と鎖なんて見るだけで吐き気がしちゃう!うげ~!」
「仕方ないじゃないか。アザストに潜入するには奴隷として入るのが一番良いんだ。この街、去る者は追わない癖に、来るものには果てしなく厳しいからな。」
「そうは言っても限度があるだろ。何が楽しくて金剛等級冒険者ともあろう俺達が奴隷にされなきゃいけないんだ!」

 あれから数日後。ガジュ達は大量の奴隷と共にアザストを目指していた。丁度人一人分ぐらいの横幅しかない狭い地下通路、そこを埋め尽くすかのように奴隷達が並び、遥か遠くに奴隷商人のハゲた後頭部も目視できる。

 クルトによれば、この奴隷商人は世界各地を回り、孤児や貧乏人、あるいは田舎の街娘などを片っ端から誘拐してアザストへ連れてくる業界最大手のブローカーであり、ガジュ達がこっそり奴隷として紛れても気づかないぐらいには色々とガバガバな薄利多売の商売人らしい。

 実際こうして勝手に列に混ざり、勝手に数人の奴隷を解放して鎖と手錠を自分達に付け替えても一切バレなかった訳だから、その情報自体は間違っていないのだろう。だが元囚人の身の上からすれば奴隷のフリというのはあまりにも不快感がある。

「奴隷として潜入した後はどうするんですか。ガジュはともかく、一応シャル達は若い女性です。今でこそ大人しくしていますが、何かあればすぐに【投獄】で逃げますからね。」
「あるいは僕とキュキュちゃんがこれでもかと暴れる!僕らおじさんのお相手とかしたくないからね!」
「そこに関しては大丈夫、ちゃんと手を回している。吾輩達はアザストに着いた後、他の奴隷達のように競売にはかけられず、ストレートで吾輩の知り合いの女に買われる。そこまでいけば鎖も外れて自由行動、裏商人解放に向けて作戦開始だな。」
「そうですよ~!クルトさんに任せておけば大丈夫ですって。それにお二人とも、大して可愛くないんですから気にしなくて大丈夫だと思います!」

 最後尾から響く甘ったるい声。その方向をユンとシャルルが素早く振り返り、鬼のような眼光で睨みつける。そうだ、ガジュ達が今回の一件でこんなにも苛立っているのは他でもない、このノアとかいう女のせいでもある。

「ガジュ。この人を【投獄】でベリオットに追い返す許可を求めます。今ならまだ効果範囲内に印がありますから間に合います。すぐ!今すぐに!強制送還しましょう!」
「も~怖~い!助けて~ガジュ様~!」
「くっ!シャルル、我慢しろ。俺としてもこの馬鹿女と同じ空気を吸っていたくはないが、こいつはハクアの妹だからな。顔面をぶん殴りたくても、我慢する他ない。」

 一ヶ月後に試練の迷宮攻略が控えている以上、ガジュ達は一応ハクアへ遠征の旨を伝える必要があった。ガジュとしては単なる連絡のつもりだったが、どうやらハクアは思ったよりガジュ達を信用していなかったらしい。お目つけ役兼連絡役などというよく分からない理由を付け、ノアを遠征に同行させる事を義務付けてきたのである。

 別にハクアの言うことなど従う必要もない。ガン無視して逃亡しても良かったのだが、一応ハクアとは和解したばかり。下手に波風を立てるのも面倒かと思ってガジュはノアの同行を受け入れたが、今となっては後悔の念しかない。

「約束した以上、連れては行くが助けはしないからな。俺達の元を離れない、戦闘の際は後ろに下がる、不必要にボディタッチと煽りをしない。この三点だけは守れ。」
「は~い!ガジュ様の言うことなら、何でも聞きま~す!」
「ガジュ、今の条件にユンちゃんは好きにノアを殴っていい、ってのも追加してよ。初対面の時は面白いで済ましてたけど、いざ絡んでみるとストレスが凄いんだって!何というか、周波数がムカつく!」
「意味のわからない事を言うな。お前が殴ったらこんな女一発でくたばるんだ、諦めて仲良くしろ。」
「くたばっていいんだよ!大丈夫、ハクアには魔族に殺されたって報告するから!」

 ノアは『クリミナル』一同共通の敵である。ガジュはそもそもこの手の女性が苦手であるし、シャルルは事あるごとに男の腕にしがみつくような不埒な行為を許さない。キュキュに関してはノアの方が差別しているから名前も出さないし、ユンは度々煽られたことで殺意を芽生えさせている。
 創立祭で仲良くなれるかとも思ったが、ハクア達との戦闘で忙しかったのもあり、一般生徒にすぎないノアとは結局出会いもしなかった。

 この状況でアザスト探訪となると実に気が重いが……ノアに苛立っている暇などない。一ヶ月という短い期間でクルトの要件である裏商人奪還を成功し、ついでにアザストに居ると思われる魔族、通称『霧』から同胞の情報を得る。やらねばならないことは山積みだ。

「お、先頭の足が止まったみたいだな。いよいよ到着だぞ。」

 奴隷の街アザスト。長い地下通路を抜けた先で、ガジュ達は新たな波乱に巻き込まれようとしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

処理中です...