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第五章 囚人と奴隷は紙一重
91.何度目かの鎖
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「色々と言いたいことはあるが……何で俺達はこんな目に遭わされてるんだ。」
縦一列に並び、細い地下通路を歩く一行。長い隊列の中央付近で、ガジュは今にも暴れそうな勢いで言葉を吐いていく。前にはシャルルとユン、そしてその前には珍しく普通の服装をしたクルト。後ろにいるキュキュも含め、一同の体は鎖と手錠で縛られていた。
「本当だよ!僕ら全員脱獄囚だよ!?手錠と鎖なんて見るだけで吐き気がしちゃう!うげ~!」
「仕方ないじゃないか。アザストに潜入するには奴隷として入るのが一番良いんだ。この街、去る者は追わない癖に、来るものには果てしなく厳しいからな。」
「そうは言っても限度があるだろ。何が楽しくて金剛等級冒険者ともあろう俺達が奴隷にされなきゃいけないんだ!」
あれから数日後。ガジュ達は大量の奴隷と共にアザストを目指していた。丁度人一人分ぐらいの横幅しかない狭い地下通路、そこを埋め尽くすかのように奴隷達が並び、遥か遠くに奴隷商人のハゲた後頭部も目視できる。
クルトによれば、この奴隷商人は世界各地を回り、孤児や貧乏人、あるいは田舎の街娘などを片っ端から誘拐してアザストへ連れてくる業界最大手のブローカーであり、ガジュ達がこっそり奴隷として紛れても気づかないぐらいには色々とガバガバな薄利多売の商売人らしい。
実際こうして勝手に列に混ざり、勝手に数人の奴隷を解放して鎖と手錠を自分達に付け替えても一切バレなかった訳だから、その情報自体は間違っていないのだろう。だが元囚人の身の上からすれば奴隷のフリというのはあまりにも不快感がある。
「奴隷として潜入した後はどうするんですか。ガジュはともかく、一応シャル達は若い女性です。今でこそ大人しくしていますが、何かあればすぐに【投獄】で逃げますからね。」
「あるいは僕とキュキュちゃんがこれでもかと暴れる!僕らおじさんのお相手とかしたくないからね!」
「そこに関しては大丈夫、ちゃんと手を回している。吾輩達はアザストに着いた後、他の奴隷達のように競売にはかけられず、ストレートで吾輩の知り合いの女に買われる。そこまでいけば鎖も外れて自由行動、裏商人解放に向けて作戦開始だな。」
「そうですよ~!クルトさんに任せておけば大丈夫ですって。それにお二人とも、大して可愛くないんですから気にしなくて大丈夫だと思います!」
最後尾から響く甘ったるい声。その方向をユンとシャルルが素早く振り返り、鬼のような眼光で睨みつける。そうだ、ガジュ達が今回の一件でこんなにも苛立っているのは他でもない、このノアとかいう女のせいでもある。
「ガジュ。この人を【投獄】でベリオットに追い返す許可を求めます。今ならまだ効果範囲内に印がありますから間に合います。すぐ!今すぐに!強制送還しましょう!」
「も~怖~い!助けて~ガジュ様~!」
「くっ!シャルル、我慢しろ。俺としてもこの馬鹿女と同じ空気を吸っていたくはないが、こいつはハクアの妹だからな。顔面をぶん殴りたくても、我慢する他ない。」
一ヶ月後に試練の迷宮攻略が控えている以上、ガジュ達は一応ハクアへ遠征の旨を伝える必要があった。ガジュとしては単なる連絡のつもりだったが、どうやらハクアは思ったよりガジュ達を信用していなかったらしい。お目つけ役兼連絡役などというよく分からない理由を付け、ノアを遠征に同行させる事を義務付けてきたのである。
別にハクアの言うことなど従う必要もない。ガン無視して逃亡しても良かったのだが、一応ハクアとは和解したばかり。下手に波風を立てるのも面倒かと思ってガジュはノアの同行を受け入れたが、今となっては後悔の念しかない。
「約束した以上、連れては行くが助けはしないからな。俺達の元を離れない、戦闘の際は後ろに下がる、不必要にボディタッチと煽りをしない。この三点だけは守れ。」
「は~い!ガジュ様の言うことなら、何でも聞きま~す!」
「ガジュ、今の条件にユンちゃんは好きにノアを殴っていい、ってのも追加してよ。初対面の時は面白いで済ましてたけど、いざ絡んでみるとストレスが凄いんだって!何というか、周波数がムカつく!」
「意味のわからない事を言うな。お前が殴ったらこんな女一発でくたばるんだ、諦めて仲良くしろ。」
「くたばっていいんだよ!大丈夫、ハクアには魔族に殺されたって報告するから!」
ノアは『クリミナル』一同共通の敵である。ガジュはそもそもこの手の女性が苦手であるし、シャルルは事あるごとに男の腕にしがみつくような不埒な行為を許さない。キュキュに関してはノアの方が差別しているから名前も出さないし、ユンは度々煽られたことで殺意を芽生えさせている。
創立祭で仲良くなれるかとも思ったが、ハクア達との戦闘で忙しかったのもあり、一般生徒にすぎないノアとは結局出会いもしなかった。
この状況でアザスト探訪となると実に気が重いが……ノアに苛立っている暇などない。一ヶ月という短い期間でクルトの要件である裏商人奪還を成功し、ついでにアザストに居ると思われる魔族、通称『霧』から同胞の情報を得る。やらねばならないことは山積みだ。
「お、先頭の足が止まったみたいだな。いよいよ到着だぞ。」
奴隷の街アザスト。長い地下通路を抜けた先で、ガジュ達は新たな波乱に巻き込まれようとしていた。
縦一列に並び、細い地下通路を歩く一行。長い隊列の中央付近で、ガジュは今にも暴れそうな勢いで言葉を吐いていく。前にはシャルルとユン、そしてその前には珍しく普通の服装をしたクルト。後ろにいるキュキュも含め、一同の体は鎖と手錠で縛られていた。
「本当だよ!僕ら全員脱獄囚だよ!?手錠と鎖なんて見るだけで吐き気がしちゃう!うげ~!」
「仕方ないじゃないか。アザストに潜入するには奴隷として入るのが一番良いんだ。この街、去る者は追わない癖に、来るものには果てしなく厳しいからな。」
「そうは言っても限度があるだろ。何が楽しくて金剛等級冒険者ともあろう俺達が奴隷にされなきゃいけないんだ!」
あれから数日後。ガジュ達は大量の奴隷と共にアザストを目指していた。丁度人一人分ぐらいの横幅しかない狭い地下通路、そこを埋め尽くすかのように奴隷達が並び、遥か遠くに奴隷商人のハゲた後頭部も目視できる。
クルトによれば、この奴隷商人は世界各地を回り、孤児や貧乏人、あるいは田舎の街娘などを片っ端から誘拐してアザストへ連れてくる業界最大手のブローカーであり、ガジュ達がこっそり奴隷として紛れても気づかないぐらいには色々とガバガバな薄利多売の商売人らしい。
実際こうして勝手に列に混ざり、勝手に数人の奴隷を解放して鎖と手錠を自分達に付け替えても一切バレなかった訳だから、その情報自体は間違っていないのだろう。だが元囚人の身の上からすれば奴隷のフリというのはあまりにも不快感がある。
「奴隷として潜入した後はどうするんですか。ガジュはともかく、一応シャル達は若い女性です。今でこそ大人しくしていますが、何かあればすぐに【投獄】で逃げますからね。」
「あるいは僕とキュキュちゃんがこれでもかと暴れる!僕らおじさんのお相手とかしたくないからね!」
「そこに関しては大丈夫、ちゃんと手を回している。吾輩達はアザストに着いた後、他の奴隷達のように競売にはかけられず、ストレートで吾輩の知り合いの女に買われる。そこまでいけば鎖も外れて自由行動、裏商人解放に向けて作戦開始だな。」
「そうですよ~!クルトさんに任せておけば大丈夫ですって。それにお二人とも、大して可愛くないんですから気にしなくて大丈夫だと思います!」
最後尾から響く甘ったるい声。その方向をユンとシャルルが素早く振り返り、鬼のような眼光で睨みつける。そうだ、ガジュ達が今回の一件でこんなにも苛立っているのは他でもない、このノアとかいう女のせいでもある。
「ガジュ。この人を【投獄】でベリオットに追い返す許可を求めます。今ならまだ効果範囲内に印がありますから間に合います。すぐ!今すぐに!強制送還しましょう!」
「も~怖~い!助けて~ガジュ様~!」
「くっ!シャルル、我慢しろ。俺としてもこの馬鹿女と同じ空気を吸っていたくはないが、こいつはハクアの妹だからな。顔面をぶん殴りたくても、我慢する他ない。」
一ヶ月後に試練の迷宮攻略が控えている以上、ガジュ達は一応ハクアへ遠征の旨を伝える必要があった。ガジュとしては単なる連絡のつもりだったが、どうやらハクアは思ったよりガジュ達を信用していなかったらしい。お目つけ役兼連絡役などというよく分からない理由を付け、ノアを遠征に同行させる事を義務付けてきたのである。
別にハクアの言うことなど従う必要もない。ガン無視して逃亡しても良かったのだが、一応ハクアとは和解したばかり。下手に波風を立てるのも面倒かと思ってガジュはノアの同行を受け入れたが、今となっては後悔の念しかない。
「約束した以上、連れては行くが助けはしないからな。俺達の元を離れない、戦闘の際は後ろに下がる、不必要にボディタッチと煽りをしない。この三点だけは守れ。」
「は~い!ガジュ様の言うことなら、何でも聞きま~す!」
「ガジュ、今の条件にユンちゃんは好きにノアを殴っていい、ってのも追加してよ。初対面の時は面白いで済ましてたけど、いざ絡んでみるとストレスが凄いんだって!何というか、周波数がムカつく!」
「意味のわからない事を言うな。お前が殴ったらこんな女一発でくたばるんだ、諦めて仲良くしろ。」
「くたばっていいんだよ!大丈夫、ハクアには魔族に殺されたって報告するから!」
ノアは『クリミナル』一同共通の敵である。ガジュはそもそもこの手の女性が苦手であるし、シャルルは事あるごとに男の腕にしがみつくような不埒な行為を許さない。キュキュに関してはノアの方が差別しているから名前も出さないし、ユンは度々煽られたことで殺意を芽生えさせている。
創立祭で仲良くなれるかとも思ったが、ハクア達との戦闘で忙しかったのもあり、一般生徒にすぎないノアとは結局出会いもしなかった。
この状況でアザスト探訪となると実に気が重いが……ノアに苛立っている暇などない。一ヶ月という短い期間でクルトの要件である裏商人奪還を成功し、ついでにアザストに居ると思われる魔族、通称『霧』から同胞の情報を得る。やらねばならないことは山積みだ。
「お、先頭の足が止まったみたいだな。いよいよ到着だぞ。」
奴隷の街アザスト。長い地下通路を抜けた先で、ガジュ達は新たな波乱に巻き込まれようとしていた。
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