追放投獄全部乗り越えて復讐を、執着無双の脱獄者〜夜だけ最強?いえ闇の中ならいつでも最強です〜

鮎川重

文字の大きさ
94 / 124
第五章 囚人と奴隷は紙一重

93.狂人の管理

しおりを挟む
「ほ、本当にキュキュちゃんなの?う、嘘だよね?」

 大きな口と目を見開き、尻餅までついて困惑するタリ。キュキュと知り合ってからはもう結構な時間が経っている。

 ガジュとしてもこのネガティブ少女の情報は色々と把握して来たつもりだが、彼女の因縁といえば一つしかないだろう。なんせ生まれてからガジュに会うまでずっとアルカトラに投獄されていたのだ。

「す、すみませんすみませんすみません!!!本当にすみません!私のような愚か者が……生きててすみません!!!」
「おい待てキュキュ!落ち着け!落ち着くんだ!」

 土下座、というレベルを悠に超え、キュキュが頭を地面にめり込めせていく。その小さな額からは赤い血が溢れ出し、流石のガジュも宥めずにいられなかった。そしてそれは、謝罪の対象であるタリにしても同じである。

「キュキュちゃん大丈夫!私なら大丈夫だから!あの時のことは何とも思ってないし、怪我もしてないから!ほら見てよこの体!めっちゃ綺麗でしょ!?」
「すみませんすみません!本当にすみません!」
「やっぱりそういう関係か……。おい、タリとか言ったか。なだめるのはいいが、こいつをあんまり肯定するなよ!あくまでもこいつの罪を認めた上でなだめてくれ!」
「えぇ!?何その難しい注文!?」

 この場で今一番恐れるべきことはキュキュの第二人格が顔を出してしまうことだ。どうせこの亜人は丈夫を極めているのだ、頭から血を流したところで死ぬことはない。むしろこの有様をなだめようと適当な言葉を吐かれる方が問題である。それを分かっているからこそ、駆けつけたシャルルもキュキュではなくタリの方を抑えていた。

「すみません。説明は難しいんですが、キュキュは色々と面倒な事情を抱えているんです。一旦落ち着いて話を聞いて下さい。」
「面倒な事情……。も、もしかして私のせい?」
「ケルベロスの亜人っていう体質的な問題もあるが、半分ぐらいはお前のせいだな。あんた、例のだろ?」

 アルカトラでキュキュと出会い、暴走したキュキュによって傷付けられた例の女性。アルカトラにはもう居ないような口ぶりだったからてっきり死んだのかと思っていたが、まさかこんなところで会おうとは。ガジュ達は何とかタリを落ち着かせ、延々と頭を擦り付けているキュキュを囲んで話し合いを始める。

 参加メンバーはガジュ、シャルル、ユン、タリ。そして流血中のキュキュ。事情を知らないクルトとノアは、言うまでもなく蚊帳の外だ。

「えーと、あなた達はキュキュちゃんとどういう関係なのかな。なんとなく、私よりキュキュちゃんと仲良しなのは分かるけど。」
「俺達はこいつとパーティを組んでる冒険者だ。こいつと一緒にアルカトラから脱獄し、そのまま色々と冒険してる。」
「脱獄……。あぁもしかして例の人達!?アルカトラにいる亜人達を解放して、亜人の地位を引き上げてくれた解放の英雄!」
「僕達そんなあだ名付けられてるの?あそこ出てから亜人の人に会うの初めてだから知らなかったや。あ、キュキュちゃ~ん、キュキュちゃんは褒められてないからね~!この愚か者ー!大馬鹿ー!」

 タリのテンションが上がったのを確認し、ユンが素早く罵詈雑言を重ねる。なるほど、考えたこともなかったが、確かにガジュ達は亜人達からすれば英雄と呼ぶべき存在だろう。アルカトラのゴミ箱に居た亜人達を解放し、彼らに罪がないと宣言したことで「亜人=犯罪者」という世間の認識を払拭した。
 まぁガジュ達は暴れただけで、諸般の手続きをしたのはシャルルだが、そこはどっちでもいいだろう。

「で、その英雄さん達が何でこんな所に?」
「まぁ色々あったんだが、俺達はこの街にちょっと仕事をしに来ただけだ。そしたら期せずしてお前と遭遇し、キュキュが発狂した。説明することなんてそれぐらいだ。」
「僕らとしてはお姉さんとキュキュちゃんの関係の方が気になるけどね。昔アルカトラにいたんでしょ?その時にキュキュちゃんとイザコザがあったんだよね!」
「う、うん。当時のキュキュちゃんはまだ子供だったし、色々と私が話してあげてたんだよ。私、パーニュ出身ではあるけど、ほぼ旅人みたいなものだったから。」

 そう言ってタリが己の耳を触る。キュキュと違って柔らかそうな長い耳と、お尻の辺りから垂れている細い尻尾。なるほどこのレベルの獣人であれば帽子とスカート程度で身を隠せるだろう。

「その後は……私もよく覚えてないんだよね。キュキュちゃんの首輪がたまたま壊れかけてるのを見て、皆が『こいつにスキルを使わせて脱獄しよう』って盛り上がっちゃってさ。それで気づいたら私は血塗れで医務室に運ばれて、キュキュちゃんは独房に。」
「どいつもこいつも記憶力の弱い……。まぁいい。分からないなら直接聞いてみればいいんだ。おいクルト!ちょっとこっちに来い!」
「何だ~?吾輩、ノアと楽しく○×ゲームしてたんだが。あいつ、ちょっとうざいが割といい奴だな。」
「お前は本当にすぐ人と仲良くなるな。まぁいい、キュキュ、クルトを【強化】の対象に指定しろ。」
「え?わ、わかりましたすみませんすみません!」

 今のキュキュは完全に冷静さを失っている。タリも過去の件を覚えてないとなると、もう頼れる存在は一人だけだ。キュキュがアホ面のクルトに触れたのを確認し、ガジュはユンに合図する。

「あー、なるほどね。キュキュちゃんって本当に可愛いよね!こんな可愛い子は何の罪もない!生きてるだけで価値がある!ほら、僕の胸の中で甘えるといいよ!」
「……あっはっは!!!過去、追想、後悔!我のような愚か者に生きる価値などない!みんなまとめて狂ってしまえぇぇぇぇ!!!」
「え!?何だ、吾輩の体が勝手にー!!!」
が出てくるのは久々だな。クルト、事情を説明するのは面倒だ。お前はここで眠っとけ。」

【狂化】が発動したところで、操られているのがクルトであれば何の問題もない。操った対象が雑魚であれば、狂乱モードのキュキュはただうるさいだけの存在だ。ガジュがクルト、ユンがキュキュをそれぞれ押さえつけ、第二人格との話し合いが幕を開ける。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

処理中です...