追放投獄全部乗り越えて復讐を、執着無双の脱獄者〜夜だけ最強?いえ闇の中ならいつでも最強です〜

鮎川重

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第六章 試練の迷宮

120.常闇の帝王

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「待ってくれよガジュ!こんな夜中に家を出れば一瞬で魔物に殺される!家に帰るべきだ!」

 暗い暗い夜のユギ村。数少ない住民達が浅い眠りについた頃、幼い二人の子供は家から飛び出していた。
 武器も鎧も持たず、ただ拳一つで魔物がひしめく森へと突撃していくガジュ。そしてそれを追いかける細く弱々しい体のハクア。
 二人はただ、純粋に村を救おうとしていた。

「あのなぁハクア。お前はいつも色々と考えすぎなんだよ。村にいるのはジジイとババアだけ。俺らが魔物を蹴散らさなきゃ村は滅びかねないんだ。だから俺らが全部叩き潰す。簡単な話だろうが。」
「理屈と現実は別だろ!ダラ達は俺達を守ってくれてるんだ!冒険者達もユギを救おうと行動しているし、無力な俺達が戦う理由はない!」
「無力だから逃げていいのか?それに、その冒険者とやらが俺らを助けてくれる間に何人のジジイが魔物に襲われるんだ。強い奴に守られてるだけの人生に意味なんてねぇ。全部ぶっ壊して、勝利を掴む以外に道はねぇんだよ。」

 草むらからわらわらと出てくる有象無象の魔物達。それを睨みつけ、ガジュは拳を握る。体を照らす月明かりと、内から湧く力。勝てるかどうかは問題ではない。挑むことが全ての始まり。その考えは、ずっと変わらない。

◇◇◇

「おうハクア。粋がった割に酷い有様だな。後は俺に任せとけ。」
「ガジュ……。止めろ、お前じゃあいつには敵わない……。」
「昔みたいな事を言いやがって。いいか、お前はさっき自分の人生に敗北はなかったって言っただろ。残念ながら、俺はその真逆だ。お前と冒険者をしていた七年間、俺は敗北と過ちしか経験していない。」

 血を流し倒れたハクアを上から見下ろし、ガジュはその相変わらず細い体を持ち上げる。

「ユギにいた頃ずっと俺の後を着いて来ていたお前が途端に強くなって、代わりに俺は荷物持ちになって。あの頃はそれでいいと思ってたが、あれが最大の間違いだ。ガキの頃に自分が言っていた事を全部忘れて、他人に身を委ねるなんざ俺らしくない。」
「そんなことは……!」
「黙れ。今は俺の自分語りの時間だ。いいか、俺は昔から馬鹿なんだよ。勝算すら計算出来ず、暴れる以外の選択肢を持たない。たまに名案を思いついたかと思えば、大体ろくでもない犯罪行為だ。」

 少し先で腰を抜かしているユンにハクアを放り投げ、ガジュは改めて腕を回す。

「だがな、それが俺にとっての正解なんだよ。俺の邪魔をする奴は、魔物だろうと鎖だろうと太陽だろうと世界だろうと!全部全部、ぶっ壊してやる!」

 ガジュはそう叫び、自分の腹を殴りつける。【闇の王ナイトメア】が使えない理由は、ほぼ確実に魔族との契約だ。

 太陽サン

 一体何故ユンは明らかにガジュと相性の悪いこいつと契約させたのか知らないが、考え方を変えれば実にガジュにふさわしい魔族だ。ムーンは敗北の象徴、そしてサンは勝利の象徴である。

「聞いていても分からない。どうしてそんなに愚かなの?勝てもしないのに拳を握って、その先に完全無欠の未来は訪れない。」
「うるせぇクソ魔族。完全無欠に意味はねぇんだよ。」
「分からない。分からないから……殺す。」

 ふらりふらりと近づいてきたワールドがガジュに手を伸ばし、指をくいと上に動かす。
 その瞬間ガジュの体が勢いよく跳ね上がり、この部屋に入った時と同じように天井へと叩きつけられる。

「くっ……。馬鹿の一つ覚えみたく重力操作しやがって。いいか、覚えとけワールド!俺を照明に近づけることは、考えられる最悪手だ!」

 天井についていたいくつかの照明。かつてのユノがワールドの【創造】を使って作っただけあって、松明とも言い難い不思議な灯りだが、これぐらいの構造物であれば無力なガジュでも破壊できる。
 ガジュは天井を駆け回りながらそれらを壊し、部屋は完全な暗闇に包まれていく。そしてようやく、先ほど殴りつけた腹部を中心にガジュの体に力が巡り始める。

「暗い所で強くなるスキル。なんて事ない雑魚スキル。」
「なことは俺が一番分かってる。だから、一発で状況を変えるんだよ!おいユン!とっととそいつら連れて逃げろ!」
「うひょ~懐かしい攻撃だー!!!」

 下の方でユンが負傷した三人を必死で引きずり、部屋を退出。それが完了したのを確認し、ガジュは屋上からジャンプする。たったその一瞬の間にもワールドが新たなルールを追加して室内が発光していくが、もう手遅れだ。
 ガジュは不安定な体勢から拳を振り抜き、硬い試練の迷宮の壁が打ち砕かれていく。

 アルカトラをぶち抜いた時と同じように、瓦解していく試練の迷宮の天井。降り注ぐ瓦礫の隙間から日光が差し込み、ガジュの体には新たな力が巡っていた。

「やっぱりな……。魔族契約の仕組みはよく分からねぇが、俺が契約したのはサン。つまり今の俺は、暗い所でも明るい所でも最強ってことだ。いくぞ、【常闇の帝王デイドリーム】。」

 新たなスキルを手にしたガジュは、光すらも打ち砕く。
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