追放投獄全部乗り越えて復讐を、執着無双の脱獄者〜夜だけ最強?いえ闇の中ならいつでも最強です〜

鮎川重

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第六章 試練の迷宮

121.決着

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「あーあー。試練の迷宮までぶっ壊すし相変わらずネーミングセンスが壊滅的だし。何がデイドリームよ、スケスケを馬鹿に出来るセンスじゃないっの。」

 試練の迷宮三層。負傷者達を引きずって避難したユンは、ガジュの暴走行為によって地下に閉じ込められていた。
 横には死にかけのハクア、キュキュと、かろうじて意識を保っていたシャルル。ユンは脱出の為、仲間に語りかける。

「シャルちゃんって【投獄】も普通に使えるんだよね。外に印描いてる?何とかして僕らも脱出しないと。」
「も、勿論描いていますが、ガジュは……あれは外に出て行ったんですか?それなら試練の迷宮の仕組み上シャル達も自動で転移されるのでは?」
「ん~。現に今こうして僕らが取り残されてるからねぇ。多分入り口から出ないとそのルールは適用されないんじゃない?ガジュ、壁壊して出て行ったし。」
「何なんですか?あのスキル。煌々と光る部屋の中で超火力を叩き出してましたが。」

 おぼつかない足取りでシャルルが立ち上がり、ユン達の体はまずレザ達が横たわっている試練の迷宮二層へと転移される。この二人を放置しておくわけにはいかない。傷だらけであろうと、シャルルはいつだって冷静だ。

「僕にもよく分からないけど、ガジュの【闇の王ナイトメア】は体に当たっている光の少なさに応じて身体能力が強化されるスキル。で、サンとの契約で新たに得た【常闇の帝王デイドリーム】はその逆。光の多さに応じて身体能力が強化されるスキルなんだろうね。つまり今のガジュはいつだって身体強化レベル百だよ。」
「何ですかそのチートスキルは……。最早敵なしじゃないですか。」
「まぁそうだねぇ。微妙な明るさだとちょっと弱くなるだろうけど、正直火力だけで言えばガジュに勝る存在はもういないと思うよ。しばらくスキルが使えなかったのも、二つのスキルが相殺し合ってたからだろうね。おーいレザ~。起きろ~!」
「だからと言って、ワールドに勝てるんですか?火力を極めた程度で勝てる相手だと思えないんですが。」
「大丈夫大丈夫。シャルちゃんも知ってるでしょ?ガジュは手段を選ばないし選ぶ頭もないから。見えるもの全部使って、全部を救ってくれるよ。」

 こうなればユン達にできることはもう逃亡する事だけ。シャルが手早く一同を転移させ、それと同時に地面が激しく揺れ動いていた。

◇◇◇

「おらおらぁ!どうした完全無欠!」

 一方、試練の迷宮を飛び出して降り立った地上。新たなスキルを手にしたガジュは、ワールドを一方的に殴り飛ばしていた。試練の迷宮の真上は小高い山の上。光を浴びるには十分開けた場所である。

「ようやく分かった。暗さだけじゃなく明るさもトリガーなんだ。じゃあ、全部奪おう。」

 どれだけ殴ってもワールドの体に傷一つ出来ないあたり、そもそも『自分はダメージを受けない』とかその手のルールを付与していたのだろう。ワールドは未だ自分の新たな体に慣れておらず、【創造】で生み出せる理不尽な概念の効果時間はおよそ三十秒。たったそれだけの時間でも、ワールドが次の策を考えるには十分だ。

 ワールドは何食わぬ顔でガジュを蹴り飛ばし、長い尻尾でガジュを叩きつける。
 攻撃が命中したガジュの肩には弾けるような衝撃が走り、飛び跳ねていた体は地に落ちていく。

「はっ、随分と負けず嫌いなこった。」
「私は完全無欠。力だけの君に、勝ち目はない。」

 今度のこれはワールドが取り込んだ試練の迷宮のダンジョンボスの力だろう。ジュノの体から放たれるドラゴンの一撃。それは人間が素で出せる火力を優に超えている。
 理不尽に自由を奪われたガジュの体に熱炎のブレスが降り注ぎ、その浅黒い肌が焼き焦げていく。

 ワールドの【創造】と、ジュノの身体能力、そしてドラゴンの火力。

 この三つを兼ね備えている以上、ワールドは完全無欠のままだ。

「なら奪ってやるとするか。どうせ、ジュノは救ってやらなきゃだからな。」

 ワールドを倒すということは即ち、奴が取り込んでいるジュノとドラゴンも倒すことになる。ドラゴンに関しては至極どうでもいいが、ジュノはハクアの仲間。ハクアの仲間は即ちガジュの仲間のようなものだ。ワールド撃破の前にジュノをどうにかして奪い返すことは急務。
 そしてそれこそが、勝利の糸口だ。

「よし、三十秒。おいクソワールド!ユノを依代にしていた時はこんな立派なダンジョンを作り出せた癖に、今はこんなちっぽけなルールしか作れないのか?この程度じゃ、完全無欠には程遠いと思うがな!」

 再び地面を蹴り付けて飛び上がったガジュはそこらに生えていた大木を力で引っこ抜き、ワールドに向かって投げ付ける。
 ワールドの方はそれをブレスで焼き焦がし、ガジュの前方へ。散々攻撃されて嫌気が刺したのだろう。たちまちガジュの体は鉛のように重くなり、なすすべもなく膝をつく。おそらく、ガジュの体は『肉体の重量を増加』のようなルールを押し付けられたのだろう。動きを止めた体へワールドによる連撃が加えられていく。

 だが、ガジュはこれを好機と捉えていた。

「段々と分かってきた。お前は【創造】を思った以上に自由に使えていない。一度押し付けたルールは三十秒で効果が切れる上、似たようなルールを連続で使用できないんだろ?だから今大木を『ダメージを受けない』ってルールで無視せず、火で焼き焦がした。」
「黙れ。」
「図星か。じゃあ存分に、殴らせて貰うぜ!」

 体が重かろうと、攻撃が出来ない訳ではない。ガジュは間近に迫っていたワールドの体を強く引き寄せ、首を噛み頭をぶつけ、無我夢中の攻撃を繰り返していく。
 恐らくワールドが自由に【創造】を使えていないのは内面の問題だ。ダンジョンボスはともかく、奴が取り込んだもう一つは明確に意志を持っている。ガジュはてっきり自分からワールドを受け入れたのかと思っていたが、ジュノは今この瞬間も抵抗しているのだろう。

「聞こえてんだろジュノ!お前が憧れたユノは凄い奴だが、その根源は思ったよりろくでもない存在だ!だから、今度は俺に憧れろ!お前は、自由の象徴なんだろ!」

 ワールドの首元に出来た噛み跡。そこから黒い煙が噴き出し、ガジュの体に煙が移っていく。
 どういう理屈で体を乗っ取ったのか知らないが、ジュノの体を奪ったのは失策だ。彼女の体はハクアが用意した作り物。少し壊せば、簡単に中身が飛び出てくる。
 
「来たな愚者ジプシー。このガジュ・アザット様と契約して、世界を壊すぞ。」

 ワールドが課したルールが解け、体が軽くなると同時にガジュの体に魔力が巡っていく。
 対照的にワールドの顔は曇って行き、歪な肉体の人らしい部分が消失。ただの龍のような見た目になったワールドは素早く次なるルールを課そうと小さな前足を前に伸ばすが、ジュノ即ちジプシーの力までも手にしたガジュの反応速度には及ばない。

 何よりも速く、何よりも無法な一撃がワールドの体を無情に打ち砕いていった。
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