【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria

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サイドストーリー:フリージア

結婚式

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プロポーズから4ヶ月後。

伝統ある王都の教会で、参列者に見守られながら2人は結婚式を挙げた。

テオと一緒にリューグレンに行く、とフリージアが譲らなかったため、婚約と同時に急ピッチで準備や調整を行いこの日を迎えた。

テオには2人の兄と弟が1人居て、テオの両親も含めて皆が、フリージアの嫁入りを歓迎してくれた。

準備する中で、特に困難を極めたのはフリージアの父、ターナー伯爵の説得だった。

ターナー伯爵は、テオの婚約の申し出に応じてはいたものの、まずは婚約という形でテオだけリューグレンに行ってもらい、また家族水入らずで過ごすつもりでいたようで、当てが外れてしばらく機嫌が悪かった。

頑なに結婚を認めてくれない頃は焦れたりもしたが、フリージアの花嫁姿を見て目をショボショボさせる父を見ていると、少しだけ可哀想になってくる。

「気が変わったなら、残ってもいいんだぞ」

父を見つめるフリージアを見て、テオがそう言うが首を振った。

「お父様にはお母様がいるもの」

そうして見つめあって微笑んだ。



式を終えた後は、ウェディングパーティだ。

2人はそのまま馬車に揺られてジョエルナ伯爵邸へ到着した。

王都で結婚するにあたり、大広間のある当家でパーティすればいい、と伯爵が申し出てくれたのだ。

テオが手を繋ぎながらエスコートし、支度部屋へと入っていく。

来る途中、ちらっと会場が見えたが、クラシカルな大広間に長テーブルが並び、至る所に色とりどりの花が飾られ、豪奢な雰囲気を醸していた。

「テオ、見た?信じられないくらい素敵だったわ!こんなに良くしていただいて、いいのかしら…」

テオは軽くため息をつく。

「いいんだよ。伯爵は、元々そうするつもりだったんだから」

「え?」

「伯爵は、フリージアを後継者にしたいんだよ。だから俺に、ここの養子にならないか打診があった」

「え!?そうなの?」

「フリージアと結ばれるために爵位が必要なら養子になればいい、ってね。そしたら俺はフリージアと結婚できるし、フリージアも好きなソーティングを続けられるし、ジョエルナ伯爵も後継者にフリージアを迎えられるから。爵位なら自力でとるから、って断ったけどな」

「知らなかったわ…」

「だから多分、ジョエルナ伯爵家の式のつもりで準備してるんだよ。あの様子だと、まだ諦めてなさそうだな…」

「そんなに悪い話ではないと思うけど…テオは養子になるのは嫌なの?」

「お義父さんに自分で上の爵位を取るって言った手前、そうしないと格好つかないだろ。俺だって男なんだし、自分の力で取りたいんだよ」

「そう言うものなの?」

フリージアは笑い混じりだ。

「そう言うものだよ。まあ、俺が爵位取った後なら、ジョエルナ伯爵の話も考えてやってもいいけどな。あ、お義父さんには言うなよ。絶対、養子になれって言うに決まってるんだから」

フリージアが笑っていると、部屋のドアがノックされ、母が入ってきた。

「テオ、フリージア、王宮からお祝いの使者がきているの。直接応対してくれる?」

「お祝いの使者?」

「私が殿下にお手紙でお知らせしたからかしら」

母がおっとりと微笑んだ。




応接間には使者が荷物を携えて直立していた。

使者が高らかに読み上げる。

「本日ご夫妻となった、テオ クルーガー並びに、フリージア クルーガー両名に、王太子殿下、妃殿下より、結婚祝い3点を下賜する!受け取られよ!」

「畏れ多くも、王太子殿下、妃殿下より、お祝いの品を賜ります。感謝と共に、王太子殿下、妃殿下のご繁栄を祈念いたします」

テオが口上を述べ受け取る。

使者はすぐに退室し、2人は中を検めた。

2人に宛てられた包みは、王室の紋様の入ったティーセットだった。

王太子殿下から、テオに宛てられた包みは、王都で高級フルーツとして人気の高い”ミセスアン”だった。

山盛りのミセスアンを前に、テオが苦笑いしている。

「どうしたの?」

「いや、お前の乳兄弟は、記憶力が良い上に、なかなか性格が良いな、と思ってな」

「?」

「これはフリージアにだぞ」

「私に?」

包みを開けると、それはシルバーのブローチだった。

円形のブローチの下方には2輪の花が、その上方には1羽の羽ばたく小鳥が型取られている。

2輪の花はそれぞれアメジストが埋め込まれた紫の百合、ピンクトルマリンが埋め込まれたフリージアで、隣り合って花開いていた。

シルバーの小鳥の目に輝く青の石は…

「これ、コッツ サファイア…」

添えられたメッセージカードには、こう書いてあった。


『成婚2周年が過ぎて間もなくの頃に、侍女長が、あなたからの手紙を渡してくれました。

お気持ちは受けとりました。でも、あなたが悔やむことはありません。

私も殿下も、あの頃の全てが天の采配だったのだと、そう思っています。

ご結婚おめでとう。

そして、コッツの民への絶え間ない支援に、心からの感謝を。

殿下も私も、あなたたちご夫妻にお会いできるのを首を長くして待っています。

出立する前に必ず王宮にいらしてね。

リリアナ グロース』

メッセージを読みながら、フリージアの目にみるみる涙が溜まっていくのを、テオがハンカチで吸い取っていく。

「あ、会いたいって書いてある…」

「…俺は殿下には会いたくないぞ」

つい先日、王太子妃殿下のご懐妊が発表された。大事を取って王宮外に出る公務は全て取り止めたと聞いている。体調は大丈夫なのだろうか…

宴の開始が間もなくだから、とジョエルナ伯爵家の執事に急かされ、応接間を後にした。



乾杯の後、沢山の人が代わる代わるスピーチしてくれる。

ジョエルナ伯爵が2人の元へやってきた。

「ジョエルナ伯爵、こんな素敵なパーティにしてくださって、本当にありがとうございます」

「喜んでもらえたなら何よりだ。…ミス ターナー、とはもう言えないんだったな。」

リューグレンでもソーティングやデザインの経験が積めるように、ジョエルナ伯爵が手を回してくれて、伯爵の知己の宝石店でフリージアは仕事する予定だ。

「リューグレンはダイヤモンドやオパールの算出が多い。ここにいる以上に学ぶこともあるだろう。」

フリージアにそう言ってから、伯爵はテオを見る。

「リューグレンで住む家は、もう決まっているのか?」

「大学に世帯用の寮があるので、そこを借りるつもりです」

「そうか。君たちさえもし良ければ、なんだが、同じ街に、儂の別荘を買ったんだ。すぐに行く予定もないから、代わりに住んで管理してくれないかね。」

「伯爵、折角のお気持ちですが…」 

「君たちが住んでいる間は召使いも雇おう。どうだね?」

「いえ、家事なら俺もできますし…」

ターナー伯爵が憮然とした表情で割って入る。

「テオ!なぜありがたく受け取らないのだ!破格の申し出だぞ!」

「囲い込まれてるみたいで嫌なんですよ!」

「それは君に養子に入ってもらいたいせいもあるが…」

「テオ!養子とはなんの話だ!」

「あぁ、もう…」

頭を押さえるテオの背後でおじさま達が、別荘に誰を派遣するか、算段を始めている。

フリージアは堪えきれずに笑い出した。




蓮池のほとりの東家で、将来を憂い、泣いていたあの頃が嘘のようだ。

世界がこんなにも、あたたかで楽しくて愛おしい。

満ちた世界に、フリージアの笑い声はいつまでも響いていた。






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