異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第214話 魔刀から仙刀に?!

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 一方、押し入れのハルミはといえば。

 草木も眠る丑三つ時(午前2時)である。タケウチ工房をそっと抜け出す女剣士がひとり。抜き足差し足忍び足。

「この時間だとさすがに真っ暗だな。月明かりも心許ない」
「暗くなってからと言ったのは俺だが、なにもこんな時間でなくても良さそうなものだが」
「だってせんちゃん、このぐらいの時間にならないと人目に付くではないか」
「そんなに人と会うのが嫌なのか。しかし暗闇は怖くはないのか」

「真っ暗なのはせんちゃんがいるなら大丈夫だ。お主は夜目が利くのであろう?」
「ああ、俺には見えているよ。ナビはまかせろ。それに月夜だ。慣れてくればそれなりにハルミにも見えるだろう」

「頼んだぞ。私はしばらく誰にも会いたくないし、押し入れの中で昼間寝ているから眠くないし。だからこんな時間なのだ。目が慣れるまでは道案内を頼むぞ」

「うむ分かった。夜中の魔物狩りか。久しぶりに興奮するな」
「こんな時間に外に出る物好き人間はいないだろうから、安心して狩りができる。しかしこの暗闇で、素早い魔物を捉えられるかどうかだが」

 ハルミは押し入れに閉じこもっていたが、やはりそこは剣士の端くれ。身体を動かしたくてうずうずしていたのだ。

 しかし、人に会うのは嫌だった。どうしてもあのときの恥ずかしさが蘇るのである。

 そんなとき、いまではミノオウハルの中にいるクドウ仙人が提案した。

「暗くなって人がいなくなってから外に出てみないか? 夜だけ活動する魔物も多いぞ。経験値を稼ぐなら格好の標的であろう」
「ああ、そうか! 私もこうしてじっとしているのは苦手なのだ。人が寝静まったときに出ればいいのだな。よし、そうしよう!」

「俺も自分の、というかこの刀の性能を試してみたいのだよ。この魔刀に俺が入ったことによって、どんな特性が加わったか、あるいは、なくなったか」
「な、なくなっては困るぞ!?」

「それも含めて試そう、ということだ。やってみなきゃ、分からんだろ」
「なんか不安になってきた。早くやろう!」

「ときにハルミよ。この魔刀の斬撃はどのくらいの距離まで飛ばせるのだ?」
「私の目に見える範囲だが、お主……というかミノオウハルは魔物狩りには使えないぞ?」

「えええっ!? そうなのか。それでは俺がいる意味がないではないか」
「私の提灯代わりということで」
「なんだつまらん、俺はもう寝る。ぐぅぅぅ」

「こ、こ、こら。ここで寝るな。私が帰れなくなるではないか」
「だってつまらんではないか。魔物退治はいつももうひとつのニホン刀を使うのか?」

「ああ、そうだ。だから追いかけてニホン刀の届く距離まで近づかないといけないのだ」
「なんだそうだったのか。俺の出番がないのなら、やる気がなくなったぐぅぅ」

「おいおい。ここまで私をそそのかしておいてそれはないだろう。ミノオウハルは物理的力は絶大だが、魔法が掛かっていると威力が半減するようなのだ」
「半減か。それなら斬れるかもしれないのだな?」

「魔物は多かれ少なかれ自分に魔法防御を掛けている。それが邪魔して、いままで魔物はまともに斬れたことがないのだ」
「寝るか」
「寝るなぁぁぁぁ」

(そういえば、防御魔法のかかった戦車も斬れませんでしたね)

「あ、そうだ、それは俺が入る前の話だろ? いまなら斬れるかもしれないではないか」
「あ、そうか。魔刀に仙人の力が宿っていれば……宿ってどうなる?」
「さぁ?」

「センちゃんはたいした仙術は持ってなかったよな? 雲を捕まえるとか、カスミを採取するとか。そんな程度だろ?」
「うぐっ」

「あとは医療関係の能力もあったか。それ戦闘に使えるのかなぁ。せいぜい提灯ぐらいじゃないの?」
「ぐぐぐぐぐぐぐっ。」
「ダメ元でやってみるけどな」

 そういうことになった。

 暗闇でクドウ仙人が魔物を見つける。その場所をハルミに伝える。ハルミは言われた場所をめがけてミノウオウハルを振るう。

「きゃん」

「「あ、当たった!!?」」

「当たったぞ、当たった当たった」
「当たったぐらいで騒ぐなよ。獲物に近づいて見てみよう」

 それは1匹の魔モモンガであった。ちなみに、経験値は1である。しかし、ハルミはこの事実に飛び上がるほど喜んだ。

 暗闇の森の中は、それまで誰も手を付けていない狩り場である。
 つまり獲物がうっはうはいるのである。それを、ハルミはこれからそれらを独り占めできるのだ。こんな嬉しいことはない。

「よし、次は何処だ? どんどん狩るぞ!」
「お、おう。じゃあ、その木の裏になにかいる。木を避けて魔物だけ斬れないか?」

「どうだろう。いまは私に見えなくても魔モモンガが斬れた。ということは、センちゃんが見えてるなら斬れるということかもしれない。やってみよう。えいっ!」

 再びハルミが刀を振るうと、その斬撃は木を通り抜けてその裏にいた魔ヘビをまっぷたつにした。それを確認しにいったハルミは、見るやいなや。

「ひょぇぇぇ」

 と、思わず5mほど飛び退いた。立ち幅跳びのニホン記録である。

「あ、こら。狼狽するでない! こいつは猛毒の魔カガシだ。ニホンで最悪の毒を持つやつだ。これはポイント高いぞ」
「そそそそそ。そうか。わたわたわたたしは、こういう細長いのが苦手なのだだだだだ」

「そうとう苦手なようだな。近づかなくても斬れるようになって良かったではないか」
「そそそそそうだな。それはよかよかよかた。しかし、怖いものは怖い」

「そのぐらいは慣れてもらいたいものだが。ところでハルミ」
「ななななんだ?」
「すぐ後ろにまたヘビ……」

 ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ。

 6m飛び退いた。立ち幅跳びのニホン記録更新である。

「あ、俺の勘違いだった」
「ごらぁぁぁぁぁぁぁ!!! いまわざと言っただろ?!」
「わくわくして言った。そんなに反省はしていない」
「わくわくするな! 反省しろ!!」

 ツッコみはしても、この刀に対して強くは出られないハルミであった。暗闇で道案内ができて、近づかなくても魔物が斬れるという、いままでに増して大切な刀になったのだから。

「この魔カガシのポイントはいくつだった?」
「あ? ああ、えぇと。いま、確認する……28ポイントおぉぉぉぉ、すっげぇぇぇ!! すごいぞセンちゃん。もっといないか? 今日はもうこればっかりでもいい。探してくれ」

「お前、さっきはあんなに怖がっておいて、現金なやっちゃなぁ」
「見なければいいのだ。てか、私は近づかなければどのみち見えない。センちゃん、探してくれ」

 どうやらミノオウハルというこの魔刀。仙人のクドウを吸収したことで、いままで苦手であった魔に対する攻撃力も得たようである。今後は仙刀・ミノオウハルと称されることになるであろう。

 そんなふたりの魔物退治は、夜が明けるまで続けられた。そして1,058ポイントを稼いだハルミは明け方に帰ってきて、そのまま泥のように眠ったのである。


「おあよー。ミヨシ、今日の朝ご飯のおかずはなに?」
「アジの塩焼きに卵焼き。小松菜のおひたしに、味噌汁、ダイコンのサラダ……って説明する前に食べてるじゃないの!」
「おおっ。今日もうまいうまい。お代わり!!」

「相変わらず食欲旺盛ね。あ、そういえばユウ」
「むぐもぐひゃに?」
「ハルミ姉さん、なんか夜中に出かけて筋トレとか? をしているみたいよ」
「ぱくぱくぱく。ほぉ、外に出る気にはなったんだなもしゃもしゃずずず」

「誰もいない夜中にだけどね。明け方に帰ってきて、いまぐっすり寝てる。いいのかしら」
「もぐもぐむしゃ、いいんじゃないか。そのうちシレっと顔を出すようになるだろうむぐむぐ」
「だといいけど。なんかすっごい疲れているみたい」
「久しぶりの筋トレだからもぐもぐ。頑張り過ぎたんだろ」

 そんなことがしばらく続いて、2月になり俺のケガも完治した。寒さも最盛期を迎えるこの季節に、俺はまたハルミがらみでやっかいに巻き込まれるのである。


 ということで、第4章 イズモ+グジョウ+ちょっとトヨタ編(長くなったものだ)の完了であります。

次回からは「冒険者編」ということに。

「なるノか?」
「なるような、そうでもないような」
「答えができてから手を上げるのだヨ!」
「お前は笑点の司会者か」
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