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第95話 ぶんぶんぶん
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ちなみに。俺はミヨシの入浴シーンもハルミの洗髪シーンも、一度も見たことも覗いたこともない。ほんとだよ?
もう1ヶ月も一緒の家で暮らしているにもかかわらず、である。
理由は簡単である。俺は9時に寝てしまう(つまりは8時までには入浴する)が、他の人は11時くらいまでは普通に起きており、入浴はその前後の時間だからである。
覗けるはずはないのだ。
男に生まれてこれだけの環境にありながら、極めて残念無念なことである。
しかしついに。その願いが叶う日が来た。時は来たのである。
目の前に、ハルミやミヨシのヌードがあるのだ。ただしこの壁の向こう側に、の話である。
ちょぽーん。などという天井から水滴の落ちる音はしない。ここは露天風呂である。
カッコーんという風呂桶がなにかにぶつかって響く音もない。天井のない露天風呂だからほとんど響かないのだ。
なんであんたが入っているのよーー。しらねぇよ、ここが混浴だからじゃないのか。ええ、そんなの知らなかったわよーー。とかいうきゃっきゃうふふ的イベントも発生はしない。
ここは男女別だからである。そして男湯と女湯は分厚い壁で明確に仕切られている。誰だ、こんな温泉を作りやがったやつは。気が利かないにもほどがある。
横ではエースとサバエ卿が洗いっこしている。アチラはコウセイさんの背中を流している。ある意味きゃっきゃうふふの世界と言えなくもない。ただし、キモい。おらこんな風呂いやだぁ。東京にでるだぁ。
頭だけ洗ったら部屋に戻って寝よう。もっさもっさもっさ。だっばーーっん。
お約束であるが、壁の向こうは女風呂である。男湯と女湯の間の壁には配管があって、そこから両側にお湯が出る仕組みだ。こうすると、低コストで給水管が設置できるからであろう。
壁を作るついでに設置できるし、一カ所通せば男女両方の風呂にお湯を供給できる。うん、合理的であるな。これでは改善屋の出番はない。
しかしということは。この壁の向こう側では、豊かな胸と締まったウエストのミヨシやハルミが、俺と向かい合って髪とかを洗っているのかもしれない。
そしてあの豊かなウエストときゅっと締まったバストのウエモンも、身体とか洗ってるのかもしれない。
……ものすごくどうでもいい。早く洗って出ちゃおうっと。ばしゃばさぼさー。
その頃女湯では。
「ウエモン、最初にここでよく洗ってから湯船に入るのよ」
「えっと。ミヨシ、ここで洗えばいいの?」
「そうよ。あら、ウエモンはこういうところは始めてだったっけ?」
「うん。孤児院のお風呂にはこんな設備なかったもん」
「そういえばそうか。あそこは5人も入ったら満員だもんね」
「うん。それはそれで楽しかったけどね。あ、押しただけでお湯が出るよ、これすごーい。でも不思議ね、外にあるのにどうしてここのお湯は冷えないの?」
「熱いお湯がいつも湧き出ているからよ」
「うん、それは分かる。じゃあ、そのお湯は誰が沸かしているの? 沸かすのにはお金がかかるんでしょ? もったいないじゃないの。孤児院ではお湯が冷めるから早くお風呂に入りなさいって、よく怒られたよ」
「そうねぇ。ここでお湯を沸かしているのは……地球さん、かな? いっぱい熱を持っているから冷えることもなくなったりもしないのよ」
「へぇぇ。すごいのね地球さんって。ということはこのお湯は、垂れ流しなのね」
「うん、掛け流しって言葉を覚えてね」
「おお、ミヨシ。一緒に風呂に入るのは久しぶりだな」
「あ、ハルミ姉さん。ほんと久しぶりね。昨日は大活躍だったね」
「ああ、昨日は久しぶりに疲れるほど走ったし、斬ったし、飲んだし、騒いだな」
「いったい、なにに一番疲れたのかしら」
「ちょ、ちょ、ちょっと。ねぇハルミ、いつもそれ持ってお風呂入るの?!」
「おっウエモンか。もちろんだとも。これは手放しちゃいけないものなのだ。いつも持ち歩いてるぞ」
「わ、私はお風呂にはおもちゃとか持って入ってはいけないって言われてたのに」
「それはおもちゃじゃないからね。私だって持っているわよ? ほら」
「わぁびっくりした、ミヨシ。それオウミヨシじゃないの。お風呂に持ち込んだりしていいものなの? 錆びたりしないの?」
「手入れをちゃんとすればそんなことならないわよ。いつも抱いて寝ているし、お風呂も一緒に入るのよ」
「い、い、一緒に入るの?! 包丁と?! しかも抱いて寝るの!?」
「そんなの当然だろ。私だってそうしてるぞ。ミノオウハルはもう自分の一部みたいなものだからな」
(なにそれ。私のほうがおかしいの? タケウチでは刀や包丁を持ったままお風呂に入ったり寝たりするほうが普通なの?)
「ねぇミヨシ。それ、ちょっとだけ触ってみてもいい?」
「だーめ。これは危険だから。ウエモンがもっと大きくなってからね」
「じゃあ、ハルミのは?」
「これもダメだ。そんな危険なことはさせられない」
「私だって包丁ぐらい使えるのよ」
「それなら自分の包丁を持ってくればいいだろ?」
(ぐっ。包丁を持ってお風呂に入るということ自体がおかしいのではないだろうか)
「ちょっと持つだけでいいから。持たせてよぷに」
「こ、こら。胸を揉むな。くすぐったいだろ」
わぁ。ハルミのおっぱいに初めて触った。すんごいでっかい。見た目以上にボリュームがあって弾力があるわ。これはこれで楽しそう。
「刀がダメならこっちを触っちゃうからね、もみもみもみ」
「ちょ、ちょっと、ちょっと、ウエモン、そんなとこをやめろって。くすぐったいってば。ミヨシ、笑って見てないでこいつを止めろ!」
「もう、すっかり仲良くなっちゃってあはは」
「いいから止めろ!! あぁぁ、こ、こら。ちょっと、ウエモン。その触り方はちょっと違う。そういうんじゃないあぁあ。こ、こら、さきっちょを指でつまむな! 口で吸うな!! もう、止めろ!! ごっちん!!」
「痛ぁぁぁぁい。わぁぁぁぁん」
「はぁはぁはぁ。イタズラにしても度が過ぎるぞ!」
「ハルミ姉さん、そんな殴らなくたって。大丈夫? ウエモン」
「わぁぁぁぁ。お姉さんが殴ったぁ。訴えてやる!」
「どこにだよ!」
「痛あぁぁぁぁい。うぅぅぐぐぅぅえぇぇぇぇぇもん」
うぐえもん、になってんぞ。
「ほらほらいい子だから、泣き止んで。姉さん。もうこんな子供にやり過ぎよ」
「いや、やりすぎはそいつのほう……分かったよ悪かった。ミノオウハルに触らせてやるからもう泣くな」
「え? ぐすっ、ほんと?」
「ああ、だけど振り回すなよ。持つだけだからな。それから、私の胸はもう吸うなよ!!」
「うん。ありがとう」
「ほれ。この柄のところをしっかり持って、落とすなよ」
泣き止んだウエモン。ミノオウハルを手に持つ。
「おおっ、これが今回の戦で多くの敵を屠ったというミノオウハルなのね」
「ああ、そうだ」
「屠ったのは戦車とか壁とかだけどね」
「ふんふん。すごい。思ってたよりずっと軽い。これならダマク・ラカスよりも軽いかもしれない。ひょいひょいひょい」
手首だけを動かして、ミノオウハルを軽く振ってみるウエモン。大根を切るときのような動かし方である。
「あまり振るなよ。何かに当たったりしたら大変だ。切れ味は抜群なんだからな」
「う、うん。分かってる。ぶんぶんぶん。持ちやすいし、軽いし、短いしふんふんふん。これでどうして戦車が斬れるのか不思議ねぶんぶん」
「ほんと不思議だろ。その刀は私が持つと、切る瞬間にぎゅにゅって伸びるんだ」
「伸びるの? これが? ぶんぶんぶんぶんぶん」
「ああ、私があそこの鉄を斬ってくれと願って振ると、その通りに斬ってくれるんだよ。すごいだろ」
「へぇぇ、すごいね。ぶんぶんふりふりふりふり」
「さあ、もういいだろ? そろそろ返してくれ」
「うん、もうちょっとだけ。なんかこれを振ってるのが楽しいふるふるふる」
「ああ、確かに楽しい、けどな。楽しいけど、それは私のだから。そろそろ」
「ぶんぶんぶん。あははは、楽しい!」
「返せ!!」
「あぁん。もうちょっと持っていたかったのに」
「お前には危険なものを感じる。もうおしまいだ」
「うぅぅ。もうちょっとだけ。お願い」
「じゃあ、ミヨシのオウミヨシを持たせてもらえよ」
「え? ダメよ、これは」
「どうして? ハルミは刀を持たせてくれたよ?」
「うん、だけど、これはだーめ」
「ほほう、そうか。じゃあ、ウエモン。ミヨシのおっぱいを吸ってやれ。私が許す」
「え? なんで、そきゃぁぁぁぁぁぁ。あぁ、ちょっとウエモン、よしなさい!! ダメよ、そんなとこあぁぁぁんぁん。こ、こらぁ。止めなさいって言ってるだぁぁぁぁぁ」
「うんうん、その調子だ、ウエモン頑張れ」
「ちょっと! ハルミ姉さんもいい加減きゃぁぁぁぁ、耳を咬むな!! なめるなぁぁぁん。そこはダメ、弱いんだかぁぁぁ やめろっての! ばしっ」
「うっ……。うわぁぁぁぁぁぁぁ、ミヨシがぶったぁぁぁぁl」
「ほらほらミヨシ。大人げないぞ! こんな子供をなんでぶつんだ」
「はぁはぁはぁ。姉さんに仕返しされた……。分かったわよもう。持たせればいんでしょ持たせれば。はい、これ持っていいから泣き止みなさい、ウエモン」
「わぁぁ、ありがとう。いつもそばで見ていてすごくうらやましかったんだ。ふんふんふん。ああ、これもいいね。すごい切れているって感じがしてぶんぶんぶん」
「刀と違ってそれはまな板の上で働くものだけどね」
「でも、なんかを切っているみたいな、感じがしてすごくキモチイイねふりふりふりふり」
「なんかを切っている感じがする?」
ふと、ミヨシは不安を感じた。ハルミ姉さんの刀は自分が切りたいものが切れると言っていた。そういう意味ではオウミヨシも同じだ。
ただ、私は固いものなど切りたいと思ったことはない。むしろまな板を切らないように気をつけているぐらいだ。
だから試したことはないが、もしかしたらこのオウミヨシでも、ミノオウハルのように鉄を斬ることが可能なのかもしれない。
もしも。もしもよ。この子がオウミヨシもミノオウハルも使える子だとしたら……。そしていま、なにかを切っていたとしたら……。そんなまさかね?
丁度その頃。男湯からこんな声が上がった。
「おーい、なんか急にお湯が出なくなったぞ。すすいでいる最中に止まったら困るんだが、どうなってんだ?」
お湯が出なくなっている?
「ね、ねぇ、ハルミ姉さん。私なんか急に心配になってきたんだけど」
「ん? なんだ、どうした? 私はいまシャンプー中だ。後にしてくれがしゃがしゃわさわさ」
そして、時は来た。
もう1ヶ月も一緒の家で暮らしているにもかかわらず、である。
理由は簡単である。俺は9時に寝てしまう(つまりは8時までには入浴する)が、他の人は11時くらいまでは普通に起きており、入浴はその前後の時間だからである。
覗けるはずはないのだ。
男に生まれてこれだけの環境にありながら、極めて残念無念なことである。
しかしついに。その願いが叶う日が来た。時は来たのである。
目の前に、ハルミやミヨシのヌードがあるのだ。ただしこの壁の向こう側に、の話である。
ちょぽーん。などという天井から水滴の落ちる音はしない。ここは露天風呂である。
カッコーんという風呂桶がなにかにぶつかって響く音もない。天井のない露天風呂だからほとんど響かないのだ。
なんであんたが入っているのよーー。しらねぇよ、ここが混浴だからじゃないのか。ええ、そんなの知らなかったわよーー。とかいうきゃっきゃうふふ的イベントも発生はしない。
ここは男女別だからである。そして男湯と女湯は分厚い壁で明確に仕切られている。誰だ、こんな温泉を作りやがったやつは。気が利かないにもほどがある。
横ではエースとサバエ卿が洗いっこしている。アチラはコウセイさんの背中を流している。ある意味きゃっきゃうふふの世界と言えなくもない。ただし、キモい。おらこんな風呂いやだぁ。東京にでるだぁ。
頭だけ洗ったら部屋に戻って寝よう。もっさもっさもっさ。だっばーーっん。
お約束であるが、壁の向こうは女風呂である。男湯と女湯の間の壁には配管があって、そこから両側にお湯が出る仕組みだ。こうすると、低コストで給水管が設置できるからであろう。
壁を作るついでに設置できるし、一カ所通せば男女両方の風呂にお湯を供給できる。うん、合理的であるな。これでは改善屋の出番はない。
しかしということは。この壁の向こう側では、豊かな胸と締まったウエストのミヨシやハルミが、俺と向かい合って髪とかを洗っているのかもしれない。
そしてあの豊かなウエストときゅっと締まったバストのウエモンも、身体とか洗ってるのかもしれない。
……ものすごくどうでもいい。早く洗って出ちゃおうっと。ばしゃばさぼさー。
その頃女湯では。
「ウエモン、最初にここでよく洗ってから湯船に入るのよ」
「えっと。ミヨシ、ここで洗えばいいの?」
「そうよ。あら、ウエモンはこういうところは始めてだったっけ?」
「うん。孤児院のお風呂にはこんな設備なかったもん」
「そういえばそうか。あそこは5人も入ったら満員だもんね」
「うん。それはそれで楽しかったけどね。あ、押しただけでお湯が出るよ、これすごーい。でも不思議ね、外にあるのにどうしてここのお湯は冷えないの?」
「熱いお湯がいつも湧き出ているからよ」
「うん、それは分かる。じゃあ、そのお湯は誰が沸かしているの? 沸かすのにはお金がかかるんでしょ? もったいないじゃないの。孤児院ではお湯が冷めるから早くお風呂に入りなさいって、よく怒られたよ」
「そうねぇ。ここでお湯を沸かしているのは……地球さん、かな? いっぱい熱を持っているから冷えることもなくなったりもしないのよ」
「へぇぇ。すごいのね地球さんって。ということはこのお湯は、垂れ流しなのね」
「うん、掛け流しって言葉を覚えてね」
「おお、ミヨシ。一緒に風呂に入るのは久しぶりだな」
「あ、ハルミ姉さん。ほんと久しぶりね。昨日は大活躍だったね」
「ああ、昨日は久しぶりに疲れるほど走ったし、斬ったし、飲んだし、騒いだな」
「いったい、なにに一番疲れたのかしら」
「ちょ、ちょ、ちょっと。ねぇハルミ、いつもそれ持ってお風呂入るの?!」
「おっウエモンか。もちろんだとも。これは手放しちゃいけないものなのだ。いつも持ち歩いてるぞ」
「わ、私はお風呂にはおもちゃとか持って入ってはいけないって言われてたのに」
「それはおもちゃじゃないからね。私だって持っているわよ? ほら」
「わぁびっくりした、ミヨシ。それオウミヨシじゃないの。お風呂に持ち込んだりしていいものなの? 錆びたりしないの?」
「手入れをちゃんとすればそんなことならないわよ。いつも抱いて寝ているし、お風呂も一緒に入るのよ」
「い、い、一緒に入るの?! 包丁と?! しかも抱いて寝るの!?」
「そんなの当然だろ。私だってそうしてるぞ。ミノオウハルはもう自分の一部みたいなものだからな」
(なにそれ。私のほうがおかしいの? タケウチでは刀や包丁を持ったままお風呂に入ったり寝たりするほうが普通なの?)
「ねぇミヨシ。それ、ちょっとだけ触ってみてもいい?」
「だーめ。これは危険だから。ウエモンがもっと大きくなってからね」
「じゃあ、ハルミのは?」
「これもダメだ。そんな危険なことはさせられない」
「私だって包丁ぐらい使えるのよ」
「それなら自分の包丁を持ってくればいいだろ?」
(ぐっ。包丁を持ってお風呂に入るということ自体がおかしいのではないだろうか)
「ちょっと持つだけでいいから。持たせてよぷに」
「こ、こら。胸を揉むな。くすぐったいだろ」
わぁ。ハルミのおっぱいに初めて触った。すんごいでっかい。見た目以上にボリュームがあって弾力があるわ。これはこれで楽しそう。
「刀がダメならこっちを触っちゃうからね、もみもみもみ」
「ちょ、ちょっと、ちょっと、ウエモン、そんなとこをやめろって。くすぐったいってば。ミヨシ、笑って見てないでこいつを止めろ!」
「もう、すっかり仲良くなっちゃってあはは」
「いいから止めろ!! あぁぁ、こ、こら。ちょっと、ウエモン。その触り方はちょっと違う。そういうんじゃないあぁあ。こ、こら、さきっちょを指でつまむな! 口で吸うな!! もう、止めろ!! ごっちん!!」
「痛ぁぁぁぁい。わぁぁぁぁん」
「はぁはぁはぁ。イタズラにしても度が過ぎるぞ!」
「ハルミ姉さん、そんな殴らなくたって。大丈夫? ウエモン」
「わぁぁぁぁ。お姉さんが殴ったぁ。訴えてやる!」
「どこにだよ!」
「痛あぁぁぁぁい。うぅぅぐぐぅぅえぇぇぇぇぇもん」
うぐえもん、になってんぞ。
「ほらほらいい子だから、泣き止んで。姉さん。もうこんな子供にやり過ぎよ」
「いや、やりすぎはそいつのほう……分かったよ悪かった。ミノオウハルに触らせてやるからもう泣くな」
「え? ぐすっ、ほんと?」
「ああ、だけど振り回すなよ。持つだけだからな。それから、私の胸はもう吸うなよ!!」
「うん。ありがとう」
「ほれ。この柄のところをしっかり持って、落とすなよ」
泣き止んだウエモン。ミノオウハルを手に持つ。
「おおっ、これが今回の戦で多くの敵を屠ったというミノオウハルなのね」
「ああ、そうだ」
「屠ったのは戦車とか壁とかだけどね」
「ふんふん。すごい。思ってたよりずっと軽い。これならダマク・ラカスよりも軽いかもしれない。ひょいひょいひょい」
手首だけを動かして、ミノオウハルを軽く振ってみるウエモン。大根を切るときのような動かし方である。
「あまり振るなよ。何かに当たったりしたら大変だ。切れ味は抜群なんだからな」
「う、うん。分かってる。ぶんぶんぶん。持ちやすいし、軽いし、短いしふんふんふん。これでどうして戦車が斬れるのか不思議ねぶんぶん」
「ほんと不思議だろ。その刀は私が持つと、切る瞬間にぎゅにゅって伸びるんだ」
「伸びるの? これが? ぶんぶんぶんぶんぶん」
「ああ、私があそこの鉄を斬ってくれと願って振ると、その通りに斬ってくれるんだよ。すごいだろ」
「へぇぇ、すごいね。ぶんぶんふりふりふりふり」
「さあ、もういいだろ? そろそろ返してくれ」
「うん、もうちょっとだけ。なんかこれを振ってるのが楽しいふるふるふる」
「ああ、確かに楽しい、けどな。楽しいけど、それは私のだから。そろそろ」
「ぶんぶんぶん。あははは、楽しい!」
「返せ!!」
「あぁん。もうちょっと持っていたかったのに」
「お前には危険なものを感じる。もうおしまいだ」
「うぅぅ。もうちょっとだけ。お願い」
「じゃあ、ミヨシのオウミヨシを持たせてもらえよ」
「え? ダメよ、これは」
「どうして? ハルミは刀を持たせてくれたよ?」
「うん、だけど、これはだーめ」
「ほほう、そうか。じゃあ、ウエモン。ミヨシのおっぱいを吸ってやれ。私が許す」
「え? なんで、そきゃぁぁぁぁぁぁ。あぁ、ちょっとウエモン、よしなさい!! ダメよ、そんなとこあぁぁぁんぁん。こ、こらぁ。止めなさいって言ってるだぁぁぁぁぁ」
「うんうん、その調子だ、ウエモン頑張れ」
「ちょっと! ハルミ姉さんもいい加減きゃぁぁぁぁ、耳を咬むな!! なめるなぁぁぁん。そこはダメ、弱いんだかぁぁぁ やめろっての! ばしっ」
「うっ……。うわぁぁぁぁぁぁぁ、ミヨシがぶったぁぁぁぁl」
「ほらほらミヨシ。大人げないぞ! こんな子供をなんでぶつんだ」
「はぁはぁはぁ。姉さんに仕返しされた……。分かったわよもう。持たせればいんでしょ持たせれば。はい、これ持っていいから泣き止みなさい、ウエモン」
「わぁぁ、ありがとう。いつもそばで見ていてすごくうらやましかったんだ。ふんふんふん。ああ、これもいいね。すごい切れているって感じがしてぶんぶんぶん」
「刀と違ってそれはまな板の上で働くものだけどね」
「でも、なんかを切っているみたいな、感じがしてすごくキモチイイねふりふりふりふり」
「なんかを切っている感じがする?」
ふと、ミヨシは不安を感じた。ハルミ姉さんの刀は自分が切りたいものが切れると言っていた。そういう意味ではオウミヨシも同じだ。
ただ、私は固いものなど切りたいと思ったことはない。むしろまな板を切らないように気をつけているぐらいだ。
だから試したことはないが、もしかしたらこのオウミヨシでも、ミノオウハルのように鉄を斬ることが可能なのかもしれない。
もしも。もしもよ。この子がオウミヨシもミノオウハルも使える子だとしたら……。そしていま、なにかを切っていたとしたら……。そんなまさかね?
丁度その頃。男湯からこんな声が上がった。
「おーい、なんか急にお湯が出なくなったぞ。すすいでいる最中に止まったら困るんだが、どうなってんだ?」
お湯が出なくなっている?
「ね、ねぇ、ハルミ姉さん。私なんか急に心配になってきたんだけど」
「ん? なんだ、どうした? 私はいまシャンプー中だ。後にしてくれがしゃがしゃわさわさ」
そして、時は来た。
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