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私、早速重要任務を任されてしまいました(全19話)
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やっと全部拭き終わった頃にはとっくに太陽は高いところまで昇っていた。
これは遅いのか、早いのか……多分遅いな。
大体最初はこんなものかな、なんて。
掃除用具を片付けて、厨房へ向かう。
「遅かったじゃないか!」
肌の所々に青みがかった灰色の鱗が浮いた、青い短髪の青年。
黒い瞳が私をとらえる。
にっと笑うと、発達した犬歯。
「アナベルに聞いてるぜー、俺はロスト、厨房で仕事してる」
「リーシュです、よろしくお願いします……ロストさん」
「おぅ!よろしくな、リーシュちゃん」
爽やかな笑顔の好青年。
白いコックコートがよく似合っている。
厨房の奥へ振り向いて誰かに声をかける。
「おーい!ふたりともー新入りのメイドちゃん来たぞー
リーシュちゃんっていうんだってー!」
「どれどれどんな子かしら?」
「怖そうな人だと嫌ですね……」
……丸聞こえなんだけど。
出てきたのは、灰色の毛色をしたネズミそのものの獣人に、目元を鉄仮面で隠した細身の青年。
ネズミが私に微笑む。
「あたしはレイラン、リーシュちゃん……これからよろしく頼むわよ!」
あれ、思ったよりダンディーな声。
そして話し語尾が女性らしい。
「レイランさん、よろしくお願いします」
ぺこりとお辞儀する。
次にとなりにいた青年が自己紹介をはじめた。
「俺はネロ……です。よろしくお願いします」
消え入りそうな語尾。
黄緑色の後ろに束ねられた髪の毛。
そしてなぞに目元を隠す鉄仮面。
口元だけで表情を読み取ることは困難だ。
「ネロさん、よろしくお願いします」
「……っと、厨房はこの俺とレイランとネロの三人で担当してるんだぜ」
ロストさんがレイランさんとネロさんの肩を組んで、爽やかに笑う。
所々鱗が浮いた好青年とネズミと鉄仮面。
……三人集まるとカオス。
でも、見た目に怖がっていてはいけない。
でも、三人で昨日の量を作っているのかと考えると、すごい三人なのかもしれない。
「昨日のお料理、美味しかったで……」
───ぐぅぅうぅ……。
「ぷっ!」
「……あら、リーシュちゃんったら」
「フッ……」
「……すみません」
恥ずかしい。
今まで食べ物をろくに食べてこなかったので、空腹でお腹が鳴るなんてことも無かった。
空腹すぎて鳴らなくなっていた。
昨日は久しぶりの満腹で。
空腹も久しぶりなわけで。
「そうよ!リーシュちゃん、朝ごはんまだじゃない!」
「えぇ?!こんな時間までやってたのか?!」
「……もう、昼食の支度を始めるところですよ?何か持ってきます」
みんなが口々に心配してくれた。
これはこんなに心配されることなの?
「いえ……掃除に時間が掛かってしまって」
「そうかそうか!頑張ったんだな!仕事はゆっくり覚えていけばいいさ!」
「そうよリーシュちゃん、あたし、応援してるからね」
『頑張ったんだな』
『応援してるからね』
こんなこと言われたのは初めてだ。
なんだか胸の奥が熱くなった。
これは遅いのか、早いのか……多分遅いな。
大体最初はこんなものかな、なんて。
掃除用具を片付けて、厨房へ向かう。
「遅かったじゃないか!」
肌の所々に青みがかった灰色の鱗が浮いた、青い短髪の青年。
黒い瞳が私をとらえる。
にっと笑うと、発達した犬歯。
「アナベルに聞いてるぜー、俺はロスト、厨房で仕事してる」
「リーシュです、よろしくお願いします……ロストさん」
「おぅ!よろしくな、リーシュちゃん」
爽やかな笑顔の好青年。
白いコックコートがよく似合っている。
厨房の奥へ振り向いて誰かに声をかける。
「おーい!ふたりともー新入りのメイドちゃん来たぞー
リーシュちゃんっていうんだってー!」
「どれどれどんな子かしら?」
「怖そうな人だと嫌ですね……」
……丸聞こえなんだけど。
出てきたのは、灰色の毛色をしたネズミそのものの獣人に、目元を鉄仮面で隠した細身の青年。
ネズミが私に微笑む。
「あたしはレイラン、リーシュちゃん……これからよろしく頼むわよ!」
あれ、思ったよりダンディーな声。
そして話し語尾が女性らしい。
「レイランさん、よろしくお願いします」
ぺこりとお辞儀する。
次にとなりにいた青年が自己紹介をはじめた。
「俺はネロ……です。よろしくお願いします」
消え入りそうな語尾。
黄緑色の後ろに束ねられた髪の毛。
そしてなぞに目元を隠す鉄仮面。
口元だけで表情を読み取ることは困難だ。
「ネロさん、よろしくお願いします」
「……っと、厨房はこの俺とレイランとネロの三人で担当してるんだぜ」
ロストさんがレイランさんとネロさんの肩を組んで、爽やかに笑う。
所々鱗が浮いた好青年とネズミと鉄仮面。
……三人集まるとカオス。
でも、見た目に怖がっていてはいけない。
でも、三人で昨日の量を作っているのかと考えると、すごい三人なのかもしれない。
「昨日のお料理、美味しかったで……」
───ぐぅぅうぅ……。
「ぷっ!」
「……あら、リーシュちゃんったら」
「フッ……」
「……すみません」
恥ずかしい。
今まで食べ物をろくに食べてこなかったので、空腹でお腹が鳴るなんてことも無かった。
空腹すぎて鳴らなくなっていた。
昨日は久しぶりの満腹で。
空腹も久しぶりなわけで。
「そうよ!リーシュちゃん、朝ごはんまだじゃない!」
「えぇ?!こんな時間までやってたのか?!」
「……もう、昼食の支度を始めるところですよ?何か持ってきます」
みんなが口々に心配してくれた。
これはこんなに心配されることなの?
「いえ……掃除に時間が掛かってしまって」
「そうかそうか!頑張ったんだな!仕事はゆっくり覚えていけばいいさ!」
「そうよリーシュちゃん、あたし、応援してるからね」
『頑張ったんだな』
『応援してるからね』
こんなこと言われたのは初めてだ。
なんだか胸の奥が熱くなった。
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