33 / 44
33 お土産
しおりを挟む
翌日の夜、アレックスさんとレイアさんは食堂の方で夕食を摂ることになった。
アレックスさんの希望で、気取らない普段の料理と酒も味わってみたいとのことだった。
そう言われれば断る理由もないのだが、見るからに品のあるお二人が酒場の雰囲気に馴染めるのかどうかが心配だった。
心配だったのだがーー
まあ、要らぬ心配だったわ。
「美味いっ、美味いぞ、これは!」
ほとんど咆哮と言ってもいいような絶叫が店内に響く。
アレックスさんが絶賛してるのはお馴染みのゴブ煮込みである。最初は小鉢で出したのだが、今はどんぶりでかっ食らっている。
「まさかゴブリンが食い物になるとは! しかもそれがこんなに美味いとは!!」
「だろう。これはな王都でも食えない、絶品中の絶品なんだぜ」
常連の一人が肩を抱くようにしながらアレックスさんに自慢する。
大丈夫かな? アレックスさんって、下手なことすると不敬罪に問われる人のような気がするんだが……
俺の心配など知らぬ気に盛り上がっているのを見ると、放っといてもいいかと思い始めた。
それよりも料理に集中しないと、これだけの人数は捌ききれない。リイナちゃんにもフル稼働してもらっているが、それでもてんてこ舞いだ。
「ほい、餃子あがり」
「お、待ってました!」
歓声があがる。相変わらず餃子の人気は高いようだ。
「何だ、これは!? これもとてつもなく美味いぞ!」
「餃子といいます。店主の考案です」
本当は違うけど、そういうことにしておかないと話がややこしくなるので、曖昧に頷いておいた。
「これは美味しいですねえ」
レイアさんも喜んでくれてるようでなによりだ。
「ねえあなた、私、帰りたくなくなってきたんですけれど」
「うむ。これを知ってしまうと、向こうでの毎日が色あせてしまいそうだな」
「いっそのこと、移住しませんか?」
「一考の価値はあるな」
アレックスさんが腕組みして唸り声をあげた時だった。
「ゲンタさん、大ニュース!」
店の扉が乱暴に開け放たれた。と同時に一人の女性が飛び込んできた。
「ーーアスカさん?」
数ヶ月前に任務で国境方面へ向かったアスカさんが血相を変えて立ち尽くしていた。
「これを見てくれ!」
アスカさんは一抱えはありそうな大きな袋を大事そうに抱きしめていた。
「何だい、それ?」
「とにかく見てくれ。見ればわかる!」
ものすごく興奮しているアスカさんから袋を受け取った瞬間、全身に電流が走ったような錯覚を覚えた。
これはーー
一気に期待が膨らむ。
袋の口を開けた瞬間、俺のテンションはマックスまで跳ね上がった。
そこに入っていたのはーー
「米ーーっ!」
思わず絶叫していた。
アレックスさんの希望で、気取らない普段の料理と酒も味わってみたいとのことだった。
そう言われれば断る理由もないのだが、見るからに品のあるお二人が酒場の雰囲気に馴染めるのかどうかが心配だった。
心配だったのだがーー
まあ、要らぬ心配だったわ。
「美味いっ、美味いぞ、これは!」
ほとんど咆哮と言ってもいいような絶叫が店内に響く。
アレックスさんが絶賛してるのはお馴染みのゴブ煮込みである。最初は小鉢で出したのだが、今はどんぶりでかっ食らっている。
「まさかゴブリンが食い物になるとは! しかもそれがこんなに美味いとは!!」
「だろう。これはな王都でも食えない、絶品中の絶品なんだぜ」
常連の一人が肩を抱くようにしながらアレックスさんに自慢する。
大丈夫かな? アレックスさんって、下手なことすると不敬罪に問われる人のような気がするんだが……
俺の心配など知らぬ気に盛り上がっているのを見ると、放っといてもいいかと思い始めた。
それよりも料理に集中しないと、これだけの人数は捌ききれない。リイナちゃんにもフル稼働してもらっているが、それでもてんてこ舞いだ。
「ほい、餃子あがり」
「お、待ってました!」
歓声があがる。相変わらず餃子の人気は高いようだ。
「何だ、これは!? これもとてつもなく美味いぞ!」
「餃子といいます。店主の考案です」
本当は違うけど、そういうことにしておかないと話がややこしくなるので、曖昧に頷いておいた。
「これは美味しいですねえ」
レイアさんも喜んでくれてるようでなによりだ。
「ねえあなた、私、帰りたくなくなってきたんですけれど」
「うむ。これを知ってしまうと、向こうでの毎日が色あせてしまいそうだな」
「いっそのこと、移住しませんか?」
「一考の価値はあるな」
アレックスさんが腕組みして唸り声をあげた時だった。
「ゲンタさん、大ニュース!」
店の扉が乱暴に開け放たれた。と同時に一人の女性が飛び込んできた。
「ーーアスカさん?」
数ヶ月前に任務で国境方面へ向かったアスカさんが血相を変えて立ち尽くしていた。
「これを見てくれ!」
アスカさんは一抱えはありそうな大きな袋を大事そうに抱きしめていた。
「何だい、それ?」
「とにかく見てくれ。見ればわかる!」
ものすごく興奮しているアスカさんから袋を受け取った瞬間、全身に電流が走ったような錯覚を覚えた。
これはーー
一気に期待が膨らむ。
袋の口を開けた瞬間、俺のテンションはマックスまで跳ね上がった。
そこに入っていたのはーー
「米ーーっ!」
思わず絶叫していた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる