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49 指名依頼

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「そろそろ落ち着いてきたか?」

 リョウさんに訊かれて、俺は頷いた。

「そうですね。一時期みたいにどこへ行っても大騒ぎみたいなことはなくなりましたね」

 結婚式から二ヶ月が経過し、ようやく俺たちの周辺も日常を取り戻しつつあった。

 本来の美貌を取り戻したシルヴィアはしばらくの間、王都の話題の中心になっていた。街を歩けば周りを取り囲まれ、遠方からわざわざシルヴィアの顔を拝みに来る者もいたくらいだ。

 俺の方も、羨ましがられたり、妬まれたり、からかわれたりと何かと騒がしかったのだが、それもようやく落ち着いてきた。

「ぼちぽち仕事復帰しようぜ。おまえがいると効率がいいんだ」

 とりあえず騒ぎが一段落するまでは、不測の事態に備えて、受ける依頼を町中での雑用系に限定していたのだ。

「そう言ってもらえると嬉しいっすね」

「最近魔物の数が増えてきてるみたいなんだ。討伐依頼が激増してる」

「そうなんですか?」

 ここのところ討伐系の依頼をチェックしていなかったので、それは初耳だった。

「んで、数だけじゃなくて、タチの悪いのが出没してるんだ。冒険者にも被害が出てる」

「よくない傾向ですね」

「だから最近は回復役の需要が高まってる。ウチみたいな物理攻撃特化型にしてみれば、のどから手が出るほど欲しい人材だ」

「元々少ないもんなあ……」

 魔法使いそのものが少ないところにもってきて、治癒魔法の使い手はかなり稀少だ。いたら争奪戦が確実に勃発する。

「確かにいてくれれば心強いよなあ」

 怪我をした時、あるいは連戦でスタミナを失った時、ヒーラーがいてくれればどれほど頼りにできるか。

「まあ、ないものねだりをしてても解決にはならん。それくらいなら既存戦力の強化を図る方が建設的だ」

「そりゃそうですね」

「だから早く復帰しろ。俺たちにとってはおまえの復帰が一番の強化になる」

「了解です」

 そこまで言われたら、復帰しないわけにはいかない。シルヴィアも頷いてくれたし、本格的に冒険者稼業を再開しよう。

 話がまとまったタイミングでカズサさんとユキノさんが我が家へやってきた。

「どうだった?」

「ああ、復帰するってよ」

「よかった。実はね、ウチのパーティ宛に指名依頼がきたのよ」

「ほう」

 指名依頼とは、ギルドからの直接の依頼になる。一般では達成困難と思われる依頼を、達成できそうなパーティに任せようというもので、一流か否かの判断材料とも言われている。俺の一番最初の仕事が指名依頼だったが、あれはイレギュラーとするべきだろう。

 それが来たと言うのだ。断ったりしたら、今後の活動にも支障を来す。

「だから、コータローが復帰してくれれば、すごく助かるんだよ」

「期待に応えられるように頑張りますよ」

 ということになった。
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