異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

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83 わたしの主

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 戦場跡には弛緩した空気が漂っていた。皆何が起こったかわからないというのが正直なところだろう。

 俺も現実感のなさに気が抜けてしまっていた。

 それでも誰かが発した「助かったあ」という呟きからそこここで歓声が湧き、戦場全体に伝播していった。

 そんな中をツブラが戻ってきた。本来の神獣姿だ。

 近くまできたツブラがピョンと飛び跳ねた。その姿が空中で光に包まれ、人化した。そのままの勢いで飛び込んでくる。

「どわっ!?」

「頑張ったよ。褒めて」

 褒めるのはいいんだがーー

「服着ろー!」

 そう。人化する時の常で裸だったのだ。

「ツブラ、ダメーッ!」

 シルヴィアがとっちらかる。ツブラを俺から引き離そうとするのだが、ツブラは離されまいと俺にしがみつく。

 ついさっきまで戦場だったとは思えないシュールな光景、と他人事なら笑えるが、当事者にはそんな余裕はない。修羅場だ。

「待ちなさい、ツブラ。人が来るわ。とりあえず何か着なさい」

 カズサさんの言う通り、軍人さんらしき人たちがこちらへ向かって来ていた。このままではいかにも体裁が悪い。

「ツブラ、頼むから何か着てくれ」

 懇願すると、不承不承といった様子だったが、魔法で衣装をまとってくれた。

 ほっと胸を撫で下ろす。これで何とかあらぬ誤解は避けられそうだ。

 近づいてきた一団は、いかにも軍人といった雰囲気を醸し出していて、正直あまり関わりを持ちたいとは思わなかったのだが、そういう訳にもいかないんだろうな。

「今現れたのは神獣だろうか?」

 先頭で近づいてきた男が声をかけてきた。まだ若い男だが、上に立つ者のオーラというか威厳をその身にまとっている。

「そうです」

 あれだけばっちり目撃されてしまえば、とぼけても仕方ない。

「おお!」

「やはりーー」

 どよめきが起こる。

「それで、その神獣はどこへ?   この辺りで消えたように見えたんだが……」

「…えーっと、実はこの娘がそうです。神獣が人化した姿です」

 そう言って、ツブラを示す。

「おおーっ!!」

 先程よりも大きなどよめき。

 確かに、神獣なんてもんが現れたらこうなるよな。

 声をかけてきた男が、ツブラの前に片膝を着いた。

「この度は多大なるご助力をいただき、まことにありがとうございました。おかげで被害を最小限で食い止めることができました。第一王子たるブライト・オルタナが国民を代表して御礼申し上げます」

「第一王子!?」

 道理で偉そうに見えるわけだ。

「わたしは主の意向に従っただけなので、礼なら主に言ってください」

 ちょっと待て、ツブラ。余計なことは言わんでいい。

「え?   主?」

「はい。ここにいるコータローがわたしの主です」

「ええーっ!?」

 そりゃ驚くよな……できれば秘密にしときたかったんだけどな……
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