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73 復活

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「狩りだ、狩りだ!」

 フロントの街は時ならね喧騒に包まれていた。

「ケント直々の召集だ。ヤツに恥かかせんじゃねえぞ!」

「「「おう!!!」」」

 ギルドマスターであるゴライオの檄に、集まった冒険者たちは咆哮で答える。

「聞いたところによると、相手はヴァンパイアらしいが、怖じけづくような腰抜けはいねえだろうな!」

「あったりめえだ!」

「ヴァンパイアごときにビビってて冒険者が務まるかよ!」

「フロントの冒険者の実力見せてやるよ!」

 気勢を上げる冒険者たちを見渡して、ゴライオは口角を吊り上げた。冒険者たちの頼もしさに思わずもれた笑みだったのだが、それを見た冒険者たちは震えあがった。

「おっかねえ……」

「ゴライオさん、ヴァンパイアを食っちまうんじゃねえか?」

「あの人ならやりかねねえな……」

「…おまえらな……」

 ゴライオのこめかみがピクつく。

「先におまえらから食ってやろうか?」

 ある意味オーガよりも厳つい顔で言われると、シャレにならない。

「ご、ご勘弁を!」

 慌てて逃げ出す冒険者。

「くだらねえこと言ってねえでとっとと準備しろ!   すぐ出発だ」

「「「「オス!!!!」」」」

 ゴライオの統率力は流石の一言で、フロントの街の冒険者は、ケントからの連絡を受けてから半日もしない内に帝国へ向けて出立したのであった。



「今回も正体はつかめずか……」

 ケントは苦々しい表情で舌打ちした。

 戦力が揃う前に少しでも情報を収集しようとして色々と手を打っていたのだが、成果はまったくと言っていいほど挙がっていなかった。

 その一方で魔物による被害は拡大しており、かなり頭の痛い状況になっていた。

「このままじゃ埒があかないな。自分で見に行ってみるか」

「何言ってるの!?」

 フローリアが裏返った声で叫ぶ。

「駄目か?」

「駄目に決まってるでしょ!   ケントに万が一のことがあったらどうするのよ!?」

「でもなあ、このままじゃ進展ないだろ」

「だからって何でケントが自分で行くなんて話になるのよ!?」

「俺が一番逃げ足が早いから」

「はい?」

「ほら、ヤバいのに遭遇した時に逃げ切れる可能性が高いだろ?」

「逃げ切れなかったらどうするのよ?」

「う……」

 完全にノープランだったケントは反論できない。

「ケントはこういう言い方嫌がると思うけど、指揮を執る人っていうのは代えが利かないんだからね。軽率な行動は絶対駄目なの」

「仰るとおりで……」

 ケントはひたすら小さくなった。フローリアだって真っ先に突っ込んで行くじゃんか、と思っても口には出さない。ただ、表情には出ていたようで、傍らのセイラが笑いをこらえる表情でケントを見ていた。

「何かがいるのは間違いないんだよな」

 辺境からの魔物の流出は続いている。異変が起きているのは明らかで、問題は内容を把握できていないことにあった。

「気持ちはわかるけど、焦っちゃ駄目だよ」

 フローリアがケントを諭すが、ケントは素直に頷けなかった。焦りが禁物というのはわかるのだが、ケントには得体のしれない予感があったのだ。

 時間をかければかけるほど状況は悪くなる。それはほとんど確信だった。

「……」

 ケントの厳しい表情の理由が周りにはわからない。

 だが、その直後ーー

 突然、大地が揺動した。

「!?」

「うわっ」

「きゃあっ」

 多くの者が足を掬われて転倒した。

「地震っ!?」

 油断なく周囲に目を配りながら、ケントは懸命に頭を巡らせた。

 嫌な予感はこれか?

 この世界では地震はほとんどない。慣れていないぶん、直面した時に冷静でいるのは難しかった。

 揺れはかなり長い時間続いた。皆ただただ恐怖に耐えて地震が治まるのを待つしかなかった。

 体感的には永遠にも思える時間の後、ようやく揺れは終息した。

「怖かったぁー」

 さすがの皇女将軍も自然災害には無力であった。

 周りの兵たちも気が抜けたようになってしまっている。

 そんな中、ケントだけは厳しい表情を崩さぬまま、辺境方面の空を見つめていた。

「ケント?」

「ーー気づかないか?」

「え?」

 言われて気配を探ったフローリアは、顔色を変えた。

「…何これ……」

「見つからないわけだ。まだ現れていなかったんだからな……」

 ケントは声の震えを抑えるので精一杯だった。



「たった今、復活したみたいだな」

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