君と紡ぐ物語

桜糀いろは

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第3話 - 3

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 目を開けると、ミラーレースのカーテン越しに薄暗い空が見えた。
(……れ、わたし……いつの間に……。えっと、スマホは……)
 ベッドの端に身体を寄せ、文音は両手を突いて起き上がった。
「あ……、ある……」
 これから取りに行こうと思っていた鞄が、ベッドの脇に置いてあった。
(京也さん、わざわざ持ってきてくれたんだ……)
 手を伸ばしてスマホを取り出す。時刻を見てみると18時を過ぎていた。
(え、わたし、五時間も寝てたの?)
 いつもなら二、三時間くらいで一度目が開くのに。文音は部屋の明かりを点けようと、サイドテーブルに視線を移した。
(ん? ……紙?)
 照明用リモコンの下に、二つ折りにされたメモ用紙が挟まっていた。文音は、メモを手に取ると、スマホの光を当てて読んでみた。
「鍵を預かっている。起きたら連絡するように。京也」
 チャットアプリを開き、メッセージを送る。するとすぐに、京也から反応が返ってきた。

文音 今起きました
   さっきはありがとうございました
京也 体調、大丈夫か?
文音 大丈夫です
   鍵すみません
   京也さんもうお家ですよね?
京也 近くにいる。
文音 え!もしかして鍵返すためですか?
京也 それもあるが、とりあえずそっちに行ってもいいか?

 文音は迷った。手元にスペアキーが一本ある。鍵の受け渡しは、明日でも問題はない。これ以上、彼に近づかないようにするには、むしろそうすべきだ。
(……でも、きっと京也さん、待ってたよね)
 15時に店を閉め、その後の作業に一時間かけたとしても16時だ。となると、彼は二時間以上もどこかで時間を潰していたことになる。
(明日でいいです、なんて言えないよ……)
 文音は、チャットのテキストエリアを、じっと目を凝らすようにして見つめた。
 そうしている間に、京也から次のメッセージが届く。

京也 文音ちゃん、めしは? 必要なら買っていく。

「そうだ……、ごはん食べないと……」
 今のところ痛みは落ち着いてはいる。けれど、また酷くなる可能性は高い。薬を飲むのなら、何か口にしておかないと。
(朝炊いたご飯があるけど、あまり動きたくないしなぁ……。コンビニ行く? マンションから、わりとすぐだし……でも……それもなぁ……かといって……)
 もう何もかもが面倒だった。文音はベッドに突っ伏し、スマホを手放した。
(ん……着信?)
 顔を少しだけ上げ、スマホの画面に目を遣る。

京也 本当に大丈夫か?
   とりあえず適当に買って、そっちに行く。

「えっ! あ、待って――」
 文音は咄嗟に身体を起こした。しかし、すぐにまたベッドへと倒れ込んだ。
(……全然、ダメじゃん)
 口から溜め息が漏れる。
(何が、独りでも大丈夫……なんだか)
 目頭が熱くなってきた。鼻を啜り、文音はハッと我に返った。
「何やってんの、わたし! これから京也さんが来るんだよ。もう……」
 部屋の明かりを点け、文音は慌ててベッドから出た。
「やっぱり……赤い」
 洗面所の鏡を覗いてみると、ほんのり目を赤くした自分がいた。
(どうしよう……何とかならないかな)
 無理だと分かっていながらも頭を捻ってみる。と、鍵が解錠される音が聞こえてきた。
(え? あ! 京也さんカギ持ってるんだった!)
 文音は脱兎のごとくベッドへと戻り、布団に包まった。そして、少しでも多く時間を稼ごうと、部屋の入口とは正反対にあるベランダの方を向いて瞼を閉じた。
「……寝てるのか?」
 京也の呟くような声と一緒にビニール袋の音がした。それからベッドの端が沈み、彼が様子を窺おうとしている気配を感じ取った。そこで文音は、上半身をゆっくりと捻っていく。果たして目の赤みは引いただろうか。ダメ押しに、左右の目をしっかりと擦った。
「あー一応、謝っておく。コンビニへ行く際、文音ちゃんの部屋の窓を見たら電気が点いていなかった。それと、返事がなかったことから、また寝たのかと思いインターホンを鳴らさずに入った。わるい」
「……いえ、大丈夫です。気にしないでくさい」
 つまり、彼からしてみると、ほんの数分の間に自分は電気を点け、目をこするほどの睡眠を取っていた、ということになるのか。
(京也さんの言い方からして、絶対に何か思ったよね……)
 この際、演技だったことはバレてもいい。でもどうか、演技した理由にまでは、彼が気づきませんように。文音は、目をぎゅっとつぶって祈った。
「また痛み出したのか?」
「えっ……」
 目を開けると、京也が心配そうに顔を覗き込んでいた。
「眉間に皺が寄ってる」
「あ……はい。ちょっとだけ。そろそろ薬が切れてくる頃なんです。また薬を飲んで、朝まで寝ちゃえば大丈夫です。明日は普通に行けます」
 嘘だ。まだ痛みは起きていない。本当のことを隠すために、自分はとうとう嘘をついたのだ。文音は唇を軽く噛み、目を伏せた。
「無理しなくていいからな」
 京也が優しく頭をポンポンと触ってくる。顔を上げてみると、彼はいつもの柔らかい笑みを浮かべていた。文音は、自分の表情が自然と綻んでいくのを感じた。
「……………………………………………………京也さん?」
 笑顔で見つめ合って十数秒。さすがに落ち着いていられなくなり文音は言葉を発した。
「何だ?」
 京也が表情を崩さずに言葉を返してくる。文音は口を開けて、「帰らなくていいんですか?」と言おうとした。しかし、世話をしてもらった手前、そんなこと言えるわけがなかった。けれど、呼び掛けてしまった以上、何か言わなくては。そう思って言葉を探せば探すほど、文音の目は泳いでいった。
「……くっ」
 突然、京也が顔を背ける。よく見ると彼の肩がわずかに揺れていた。
「やばい……最っ高に面白い……やっぱ良いわ……ははっ」
「もう!」
 やっぱり自分で遊んでいた。文音は顔を赤くし、京也を睨みつけた。
「言っておくが、文音ちゃんの様子が心配だったから見てたんだぞ」
 京也が笑いながら弁解してくる。文音はそっぽを向くようにしてベッドから降りた。
 膝立ちになり、ローテーブルの上に置かれたコンビニの袋を覗く。中から、たまごのサンドイッチを取り出すと、文音は正座するように腰を下ろした。そして、やや怒り気味に「いただきます」と言ってからサンドイッチに口をつける。二口目を食べ終わり、三口目を食べようとしたところで、文音の手がピタリと止まった。
(京也さんが、何も言ってこないんですけど……。もしかして怒ったのかな? ううん、怒りたいのはこっちの方だからっ)
 そう思うのに、京也のことが気になってしまい食が進まない。
 文音はゆっくりと、少しずつ、京也の方を振り向いていった。
「…………」
 見た途端、自分の心を和らげてしまう柔らかい笑み。文音はそれを目にすると、静かに手元のサンドイッチへと視線を戻した。
「……京也さんも、こっちに来てくださいよ。……その方が、もしかしたら、美味しくなるのかなって」
 言い終えるなり、文音はサンドイッチを小さく囓り始めた。
「文音ちゃんにお願いされたら、聞くしかないよな」
 どこか楽しそうな声音で京也は答えると、文音の斜め前に座った。そしてすぐさま頬杖を突き、文音の顔を眺め始める。
(京也さんって、本っ当、よく飽きずに見てくるよね。やっぱり作家さんだけあって、つい観察しちゃうのかな)
 おもむろに視線を逸らしていく。足に痺れを感じ、文音は正座を崩した。
(……ん? なんか、違和感が……)
 さっきからずっと気にはなっていたのだ。今度こそ、それを突き止めようと、文音はそうっと視線を動かしていった。
「あ……京也さんが、眼鏡してる」
「ああ、これな。外してくるの忘れたんだ。正確にはPC用のメガネだけどな」
「昼間はつけてないですよね?」
「接客するのに向かないからな。あと、昼間はなくてもいいんだ」
「そうなんですね。ふふっ、葵さんとキャラが被るからしてないのかなって思っちゃいました」
「あいつ、伊達眼鏡なんだよな」
「え? それは知りませんでした」
「へぇ、意外だな。文音ちゃん、結構、葵のこと見てそうなのにな」
「そうですか?」
 まったく心当たりがない。知らず知らずのうちに観察してしまっているのだろうか。それよりも今は、目の前にいる京也の服装の方が気になった。
「京也さん、そんな薄着で外寒くなかったんですか?」
 少し温かくなってきたとはいえ、四月の夜はまだ寒い。それなのに、彼はVネックのシャツの上に、薄手のカーディガンという格好をしている。
(あ……そっか。いつも夕方には帰ってるから、おかしくないんだ――)
 そのことに気づいた途端、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「すみません! よくよく考えたら、わたしのせいで、京也さんの帰る時間が遅くなっちゃったんでした。本当に……すみません」
「いや、大丈夫だ。気にするな」
 頭を下げて謝ると、京也がまた頭に触れてきた。京也の顔を見た後、文音は気を取り直して会話を続けた。
「京也さんのお家って遠いんですか?」
「そうだな……」
 時間でも計算していたのだろうか。京也が一瞬、天井に目を遣ったのが見えた。
「少しだけ遠い、な。何でそう思ったんだ?」
「えっと、カフェにいる時と服装が違うってことは、家が遠いのかなって思って」
 そう答えた直後、京也が意味深な笑みを浮かべた。
「服装と言えば、今の文音ちゃんの格好はかなりヤバイよな。正直、俺はさっきからずっと、目のやり場に困っている」
「え?」
 文音は自分の身体に目を落とした。
(あ、あの時、何もかもが面倒で、わたし――)
 辛うじて見えていない。という状態にまで素肌を晒した足と胸。そして、パジャマ越しではあったものの、胸の先端には突起が見えていた。
「もっ、もっと早く教えてくださいよー!!」
 全身が一気に熱くなる。文音は左手で胸元を覆い、右手でパジャマワンピースの裾を下げるようにして立ち上がると、ウォークインクローゼットの中へと逃げ込んだ。
「ちょっと、待っててください!」
 ニヤニヤしながら横目で見てくる京也に、文音はそう告げると扉を閉めた。
 普段だったら絶対に着ていたはずのタンクトップとコットン生地のロングパンツをチェストから取り出す。先にロングパンツを穿いてから、文音はパジャマワンピースのボタンを外し始めた。
(もー、わたしってば、さっきからドジしてばっか……)
 この時期は、うっかりすることが多いのだが、それにしても今日は酷すぎる。
(京也さんのせい。絶対そう! 京也さんに気を取られてばっかで……っ、だから、ダメなんだってばっ、これ以上はもう……絶対に――)
 瞼を閉じた途端、悲しみ染まった元恋人の顔が浮かんだ。
 思いやりがあって、優しくて、大好きだった人。
 結婚の約束を交わし、三年も一緒に暮らした人。
 そして、自分が不幸へと追いやってしまった人。
(わたしが、エッチ出来ない身体になって、それで……)
 いつからかセックスに痛みを感じるようになった。それでも大好きな人のためにと我慢を重ねていった結果、セックスが恐いものに変わっていた。
 それからだ。セックスを避けようと彼からの接触をすべて拒否し、そして、小さなことで喧嘩をしては後悔するという日々が始まったのは。
(わたしじゃ、もう相手を幸せにすることが出来ない……。それが苦しくって……、独りで生きていこうって……、それで……、もう恋もしないって……)
 人を好きになっても自分には苦しみしかない。だからもう人は好きにならない。そう決めてきたハズなのに――。
「……っ」
 眠っていた下腹部の痛みが起きてきた。文音は深呼吸をして、速やかに服を着ると、扉に手を掛けた。
 息を潜めて、ゆっくり扉を開けていく。京也の横顔が見えてきた。仕事のことでも考えているのだろうか。彼は口元に手を添え、真っ直ぐに前を見据えている。
「お、ちゃんと着たか」
 京也がこっちに気づき、くっと笑ってきた。心臓が大きく跳ね、文音は咄嗟に顔を逸らした。
「あの……、痛みが増してきて……。薬を飲んだら、歯を磨きに行ってもいいですか?」
「ああ、俺のことは気にするな」
 耳で京也の返答を確認すると、文音は薬を飲みにキッチンへと向かった。
 そして洗面所に行き、あとは寝るだけ、あとは寝るだけ……と、心の中で唱えながら歯を磨いていく。部屋に戻ると、真っ直ぐに文音はベッドへと入っていった。
 京也に背を向けて寝る。が、胸に痛みを覚え、文音は仰向けになって目をつぶるという苦肉の策を取った。
 色々と気遣ってくれる彼に対して、今の自分の態度が良くないことは分かっている。それでも、もうどうすれば良いのか分からないのだ。悲しみと苦しみ、そしてもう一つの感情が同時に膨らんでいき、胸がぎゅうぎゅうに締めつけられていく。
「痛むのか?」
「え……」
 京也が深刻そうな顔をしてベッドに腰を降ろしてきた。さっきと違い、少しだけ身を乗り出すようにして表情を窺ってくる。
「思いっ切り、眉間に皺が寄ってる」
「あ……、すみません。ちょっと、痛くて……」
 笑顔を見せようとしたが、力が入らなかった。
 そんな自分の顔に向かって、京也が手を伸ばしてくる。
 彼は目尻のあたりにそっと指を置くと、優しく擦るようにして手を動かした。
「……っ」
 もうダメだ。そう思った瞬間、目から大粒の涙が零れ落ちた。
 ゆっくり枕に頬を寄せていく。泣くところを見せないようにしたはずなのに、なぜか、彼のいる方に自分は身体を傾けていた。
 京也が、何も言わず頭を撫でてくる。
 彼の優しさに寄り掛かってはダメだ。そう思えば思うほど、涙の量は増えてしまう。
 このままでは抑えきれなくなる……。
 それなら――。
 いっそのこと、少しだけ……ほんの少しだけ、彼に甘えてしまえばいい。
 溢れそうになる前に、少しずつ出してしまえばいいのだ。
 自分にそう許可を出した途端、昂ぶっていた感情と涙は収まっていった。
 文音はローテーブルの上に置いてある袋に視線を据えると、静かに口を開けた。
「京也さん……。その……ちょっとだけ、触れてても良いですか? そうすると、落ち着くというか……。何でそうなるのか、自分でもよく分からないんですけど……」
「ああ。好きなだけいいぞ」
 京也のゆったりとした心地よい声音が緊張を解いていく。
 文音は、京也の膝に視線を移すと、そこにそっと手を乗せた。
 その途端、全身に温もりが広がっていくのを感じた。段々と瞼が重くなってくる。
「文音……。スペアキー……いいか?」
「スペア……キー?」
 いつの間にか閉じていた瞼を開き、文音はまどろみの中で聞き取れた言葉を呟いた。
「右上の引き出しに入っているやつだ。鍵を閉めるのに、そっちを借りてもいいか?」
 京也の目を見つめながら、ゆっくりと瞼を閉じていく。
 文音は小さな頷きを返すと、手から伝ってくる優しい温もりに身を委ね、深い眠りへと沈んでいった。

 翌日、文音が店に足を踏み入れるなり、京也がすぐに歩み寄ってきた。いつもなら振り向いて挨拶をしてくる程度なのに、きっと体調を気遣ってくれてのことなのだろう。まだ少しだけ恥ずかしさが残ってはいたが、文音も礼を言うために京也へと向かって歩き始めた。
「もう、大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫です。昨日は、いろいろとありがとうございました。そして、いろいろと、すみません……」
 数々の失態を思い出し、文音は苦々しい笑みを浮かべた。
「いや。俺にとっては、かなり有意義な時間だった。だから気にするな」
 京也が口端を上げて笑う。文音は敢えて言葉どおり受け取ることにした。
「文音ちゃんは……、毎月あんな感じなのか?」
 急に表情を変えて、京也が聞いてくる。彼の真剣な表情を受け、文音は正直に答えることにした。
「はい……。毎月、あんな感じ……です。なので、毎月一日だけ急にお休みをいただくことがあるかもしれません。すみません……」
「それは構わない」
「あ、あの。今回はちょっと、うっかりしてて。次回以降は、ちゃんと注意しておくので安心してください」
「迷惑だなんて思ってないからな。何かあれば遠慮なく俺を頼れ」
「はい、ありがとうございます」
 文音が表情を緩めると、京也は微笑みを浮かべて、文音の頭に手を乗せた。
(これくらいなら……良いよね)
 文音は素直な気持ちで、彼の温もりを受け入れた。
「今の話を聞いて考えたんだが、俺がこのまま鍵を持っていたら、嫌か?」
「え?」
 京也の提案に、文音の口から驚きの声が漏れる。自分のことを、本当に心配してくれているのだろうか。彼の眼差しに、少しだけ不安の色が滲んで見えた。
「ひとり暮らしだと何かあった時に困るだろ?」
「そうですね……」
 確かに、独りで暮らしていくのなら、信頼できる誰かに鍵を預けておいた方が良いのかもしれない。
(あんな格好を見ても、京也さんは何もしてこなかったしね……)
「わかりました。鍵はそのまま京也さんが持っていてください」
「……ありがとな」
 京也が、安堵したような表情を浮かべて礼を告げてきた。なぜ彼が礼を言うだろうか。文音が首を横に倒すと、今度は目を細めて京也が頭を撫でてきた。
 それから彼は、何も言わずに、日課となった朝のラテを淹れにカウンターの中へと入っていったのだった。
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