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第八話:辺境の村の救世主
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カイル公爵の支援を受け、私の研究は飛躍的に進んだ。新しいポーションや軟膏が次々と開発され、それらはヴァレリウス公爵領の兵士や城の人々の生活を確実に豊かなものにしていった。
そんなある日、城に慌ただしい報せが舞い込んできた。
「公爵様!隣接するユーリ村で、原因不明の熱病が流行っております!」
報告に来た兵士は、顔面蒼白だった。話によれば、高熱にうなされ、咳が止まらなくなる奇妙な病で、すでに村人の三分の一が床に伏しているという。村の医者も匙を投げてしまったらしい。
「すぐに救援部隊を出す。食料と毛布をできる限り集めろ」
カイル公爵が冷静に指示を出す。その横で、私は彼の袖をそっと引いた。
「カイル様、私もお連れください」
「駄目だ。お前まで病に倒れたらどうする」
彼の声には、明確な拒絶と心配の色が滲んでいた。だが、私は引き下がらなかった。
「病の原因を特定できれば、薬を作れるかもしれません。前世で、似たような症状の感染症を扱ったことがあります。原因は、おそらく水です」
私の真剣な瞳を見て、カイル公爵はしばらく逡巡していたが、やがて深くため息をついた。
「……分かった。だが、決して無理はするな。私の側を離れるなよ」
彼と共に馬を走らせ、たどり着いたユーリ村は、静まり返っていた。家々からは、苦しげな咳の音が漏れ聞こえてくる。
私は早速、村人たちが使っている井戸の水を採取し、持参した簡易的な検査薬で調べた。前世の知識が、ここでも活きる。
「……やはり。特定の細菌に汚染されています。おそらく、上流で死んだ動物の死骸か何かが水を汚染したのでしょう」
原因が分かれば、対処法は立てられる。私はカイル公爵に、安全な水を確保するために別の水源を探すことと、井戸の消毒を指示した。そして、私は持参した薬草を使って、即席の解熱・抗菌薬の調合に取り掛かった。
携帯用のアルコールランプで薬草を煮詰め、濾過して飲み薬を作る。その手際の良さに、カイル公爵も、同行した兵士たちも目を見張っていた。
出来上がった薬を病の村人たちに飲ませると、数時間後には、あれほど苦しんでいた彼らの熱が引き始め、咳も和らいでいった。
翌日には、ほとんどの村人が快方に向かっていた。村人たちは、涙を流して私に感謝した。
「ありがとうございます、薬師様……!あなたは、私たちの命の恩人です!」
「まるで聖女様だ……!いや、王都の聖女様なんかより、ずっとお優しい!」
口々に上がる称賛の声。いつしか私は、彼らから「辺境の聖女様」と呼ばれるようになっていた。
その様子を、カイル公爵は少し離れた場所から静かに見つめていた。彼の表情はいつも通り無表情だったが、その青い瞳の奥に、誇らしさと、そして今まで見たこともないような優しい光が灯っているのを、私は遠目にも感じ取ることができた。
私の存在が、この厳しい土地に生きる人々の、確かな希望になり始めている。その事実が、私の胸を温かく満たした。
そんなある日、城に慌ただしい報せが舞い込んできた。
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カイル公爵が冷静に指示を出す。その横で、私は彼の袖をそっと引いた。
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「病の原因を特定できれば、薬を作れるかもしれません。前世で、似たような症状の感染症を扱ったことがあります。原因は、おそらく水です」
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「……やはり。特定の細菌に汚染されています。おそらく、上流で死んだ動物の死骸か何かが水を汚染したのでしょう」
原因が分かれば、対処法は立てられる。私はカイル公爵に、安全な水を確保するために別の水源を探すことと、井戸の消毒を指示した。そして、私は持参した薬草を使って、即席の解熱・抗菌薬の調合に取り掛かった。
携帯用のアルコールランプで薬草を煮詰め、濾過して飲み薬を作る。その手際の良さに、カイル公爵も、同行した兵士たちも目を見張っていた。
出来上がった薬を病の村人たちに飲ませると、数時間後には、あれほど苦しんでいた彼らの熱が引き始め、咳も和らいでいった。
翌日には、ほとんどの村人が快方に向かっていた。村人たちは、涙を流して私に感謝した。
「ありがとうございます、薬師様……!あなたは、私たちの命の恩人です!」
「まるで聖女様だ……!いや、王都の聖女様なんかより、ずっとお優しい!」
口々に上がる称賛の声。いつしか私は、彼らから「辺境の聖女様」と呼ばれるようになっていた。
その様子を、カイル公爵は少し離れた場所から静かに見つめていた。彼の表情はいつも通り無表情だったが、その青い瞳の奥に、誇らしさと、そして今まで見たこともないような優しい光が灯っているのを、私は遠目にも感じ取ることができた。
私の存在が、この厳しい土地に生きる人々の、確かな希望になり始めている。その事実が、私の胸を温かく満たした。
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