無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人

文字の大きさ
10 / 13

第9話「相棒の覚悟と禁じられた力」

しおりを挟む
 シルヴァリア魔法学園の代表選手としてユキナリは他校との対抗試合に臨むことになった。今まで彼を馬鹿にしてきた生徒たちも、今では学園の期待を一身に背負う英雄として彼に声援を送っている。その変化に戸惑いながらもユキナリは隣にいるカイの存在を確かめ心を落ち着けていた。
 対抗試合は団体戦だ。ユキナリの他にセレスティア、そして皮肉にも補欠選手としてゼノンも選ばれていた。
 試合は順調に勝ち進んだ。ユキナリの奇想天外な魔法とセレスティアの圧倒的な正統派魔法のコンビネーションは強力で、他校の選手たちを次々と打ち破っていく。
 そして、ついに決勝戦。
 相手は古くからのライバル校であるドラグニア魔法学園。特にそのエースであるクロードという男は「竜殺し」の異名を持つほどの強力な火炎魔法の使い手だった。

「いよいよ決勝だな、ユキナリ」

 試合前、セレスティアが緊張した面持ちで話しかけてきた。

「ええ。必ず勝ちましょう」

 ユキナリが力強く頷くとセレスティアはふっと微笑んだ。

「あなたと組むと負ける気がしないわ」

 その言葉にユキナリは少し顔を赤らめる。

『おい、試合前にいちゃついてる場合か』

 カイの不機嫌な声が頭に響いた。

(いちゃついてません!)

 心の中で反論しながらユキナリは戦いの舞台へと向かった。
 決勝戦が始まり試合は一進一退の攻防となった。
 セレスティアが華麗な魔法で相手を牽制し、ユキナリが意表を突く攻撃でポイントを稼ぐ。しかし相手のエース、クロードの実力は想像以上だった。

「燃え尽きろ! ドラゴンブレス!」

 クロードが放つ炎はまるで本物の竜の息吹のように、全てを焼き尽くさんばかりの勢いで襲いかかってくる。セレスティアの風の障壁もユキナリの水の壁もその圧倒的な熱量の前では長くはもたない。
 戦況は徐々にドラグニア学園に傾いていった。
 ゼノンは早々に戦闘不能にされ、セレスティアも魔力を消耗し肩で息をしている。ユキナリも立て続けの防御で魔力が尽きかけていた。

「これで終わりだ!」

 クロードがこれまでで最大級の魔力を込めた火球を放つ。それはまるで小さな太陽のようだった。
 セレスティアが最後の力を振り絞って防御壁を展開するが、火球に触れた瞬間ガラスのように砕け散る。

「くっ……!」

 絶体絶命。誰もが敗北を覚悟したその時だった。

『ユキナリ! やるぞ!』

 カイの切羽詰まった声が響いた。

(カイ!? でも、もう魔力が……!)

『俺を使え』

(え……?)

『俺の魂そのものをエネルギーに変換するんだ。俺の存在をお前の魔力に上乗せすればあんな火の玉、消し飛ばせる』

 カイの言葉にユキナリは血の気が引いた。

(そんなことしたら、カイはどうなるんですか!?)

『……少しの間、眠るだけだ。お前の魔力が回復すれば俺もまた意識を取り戻せる。だが、もしお前が負けて心が折れちまったら俺は二度と目覚められないかもしれねえ』

 それは禁じられた力。従者であるカイの魂を消費する諸刃の剣。

(ダメだ! そんなこと絶対にできない! カイがいなくなったら、僕は……!)

 ユキナリは叫んだ。カイを失うくらいなら負けた方がましだ。
 だがカイの声はどこまでも真剣だった。

『馬鹿野郎! お前は俺の主だろ! 俺はお前を最強にするって決めたんだ! お前がここで負ける姿なんて死んでも見たくねえんだよ!』

 魂からの叫びだった。

『それに俺は信じてる。お前なら必ず俺をもう一度呼び覚ましてくれるってな。……だから、行け! ユキナリ!』

 目の前には全てを焼き尽くす炎が迫っている。セレスティアが力なく膝をついている。
 迷っている時間はない。
 ユキナリは奥歯をギリリと噛みしめた。

「……わかりました。信じます。必ず、カイを……!」

『ああ。――頼んだぜ、相棒』

 カイが最後にそう言った。その声はとても優しかった。
 次の瞬間、ユキナリの胸の魔導書がかつてないほどの輝きを放った。半透明のカイの姿が光の粒子となりユキナリの身体に吸い込まれていく。
 ユキナリの全身から空色の魔力が奔流のように溢れ出した。それは彼の魔力だけではない。カイの魂の力がそこに加わっていた。

「うぉぉぉぉぉぉっ!」

 雄叫びと共にユキナリは巨大な火球へと右手を突き出す。

(イメージは、絶対零度! 全ての分子の運動を、停止させる!)

 彼の掌から放たれたのは魔法の光ではない。それは空間そのものを凍てつかせるような純粋な「停止」の概念だった。
 巨大な火球はユキナリの掌に触れる寸前でぴたりと動きを止めた。
 時が止まったかのような光景だった。
 クロードも観客も何が起こったのか理解できずにいる。
 そして動きを止めた火球はその熱量を完全に失い、ただの魔力の塊となってパラパラと光の粒子に分解され消えていった。

「……馬鹿な」

 クロードが呆然とつぶやく。
 だがユキナリは止まらない。彼の瞳は今はただ目の前の敵だけを見据えていた。
 カイの力を借りた身体は悲鳴を上げていた。だが心は熱い。カイの覚悟を無駄にはできない。
 ユキナリはまるで瞬間移動したかのようにクロードの目の前に現れた。

「これで……終わりだッ!」

 放たれた拳は目に見えない衝撃波を伴い、クロードを闘技場の壁まで吹き飛ばした。
 勝敗は決した。
 勝利の歓声が沸き起こる中、ユキナリはその場に崩れ落ち意識を失った。
 彼の胸に抱かれた黒い魔導書はその輝きを失い、まるでただの古い本のように静まり返っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆ 毎日朝7時更新! 「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」 過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。 絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!? 伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!? 追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

過労死した俺、異世界で最強農業チートに目覚める。神農具で荒野を楽園に変えたら、エルフや獣人が集まって最高の国ができました

黒崎隼人
ファンタジー
「君、死んじゃったから、異世界で国、作らない?」 ブラック企業で過労死した俺、相川大地。 女神様から授かったのは、一振りで大地を耕し、一瞬で作物を育てる**最強の『神農具』**だった!? 右も左もわからない荒野でのサバイバル。 だけど、腹ペコのエルフ美少女を助け、頼れるドワーフ、元気な猫耳娘、モフモフ神狼が仲間になって、開拓生活は一気に賑やかに! 美味しいご飯とチート農具で、荒野はあっという間に**「奇跡の村」**へ。 これは、ただの農民志望だった俺が、最高の仲間たちと世界を救い、種族の壁を越えた理想の国『アグリトピア』を築き上げる物語。 農業は、世界を救う! さあ、今日も元気に、畑、耕しますか!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

過労死した植物学者の俺、異世界で知識チートを使い農業革命!最果ての寂れた村を、いつの間にか多種族が暮らす世界一豊かな国にしていました

黒崎隼人
ファンタジー
これは、土を愛し、土に愛された男の物語。 そして、忘れられた歌を紡ぐ、始まりと終わりの物語。 過労の果てに命を落とした植物学者の魂は、異世界で「カイ」として新たな生を得る。彼が目覚めたのは、魔法の代償で枯れ果て、人々が希望を失った最果ての村だった。前世の知識という唯一無二の力で、カイは死んだ土に緑を、人々の心に温かな灯をともしていく。 彼の育てる作物はただ腹を満たすだけでなく、魂を癒し、奇跡を呼び起こす。その噂は静かな波紋のように広がり、やがて世界を揺るがす大きな渦となる。 森の奥で悠久の時を生きるエルフの少女、リーリエは歌う。彼の起こした奇跡を、彼が築き上げた温かな国を、そして土に還った愛しい人の記憶を。 これは、一人の男が村を興し、国を育て、世界を変えるまでの壮大な叙事詩。 異世界農業ファンタジーの新たな地平。

処理中です...