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第5話:神の手を持つ男
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アークライトの領主、バルトロ辺境伯の屋敷は、町で一番大きな建物だった。俺が依頼書を持って訪ねると、厳つい執事が半信半疑といった顔で俺を応接室に通してくれた。
「君のような若者が、本当に“星砕き”を修復できるのかね?」
目の前に座る、白髪混じりの威厳ある領主が尋ねる。
「お任せください。まずは、現物を見せていただけますか?」
俺が自信を持って答えると、領主は少し驚いた顔をしたが、やがて侍従に命じて、桐の箱を持ってこさせた。
箱の中に納められていたのは、依頼書の通り、見事に真っ二つに折れた長剣だった。刀身は錆びつき、本来はめ込まれていたであろう宝石も失われている。もはやただの鉄クズにしか見えない。
「これが、かつて我が祖先が魔竜を屠ったという伝説の剣“星砕き”だ。多くの名工に依頼したが、誰も修復は不可能だと言った。君に、本当にこれが直せるのか?」
領主の問いに、俺は答えず、静かに剣の残骸に手を触れた。そして、目を閉じてスキルを発動する。
「【分解】」
俺の手の中で、剣は一瞬にしてまばゆい光の粒子と化した。その光景に、領主と執事が「なっ!?」と息をのむ。
俺の脳内には、星砕きの剣の完璧な設計図が流れ込んでくる。素材はミスリルとアダマンタイトの合金。刀身には、風と雷の魔法が付与されるよう、微細な魔力回路が刻まれている。そして、柄頭にはめ込まれていたのは、魔力を増幅させる「風魔石」だったのか。なるほど、これなら魔竜を屠ることも可能だろう。
「……完全に理解した」
俺はつぶやくと、懐から先日、インゴットを作った際にとっておいた純度の高い鉄と、ダンジョンで手に入れたありふれた鉱石を取り出した。
「おい、若者! それはただの鉄鉱石ではないか! 伝説の剣にそんな安物を混ぜる気か!?」
領主が怒鳴るが、俺は意に介さない。
俺は鉄鉱石を【分解】し、その原子構造を組み替える。不要な元素を取り除き、炭素の結合構造を変化させ、存在しなかったはずの新たな元素を配置する。それは、ミスリルでもアダマンタイトでもない、それらを遥かに凌駕する強度と魔力伝導率を持つ、俺だけのオリジナル金属「創世鋼」だ。
そして、失われた風魔石の代わりに、そこらへんに転がっていたただの石を【分解】し、その内部構造を極めて高密度な魔力増幅結晶へと【再構築】する。
全てのパーツを脳内で完璧に組み上げ、俺は宣言した。
「――【再構築】」
光の粒子が、俺の手の中に収束していく。光が収まった時、そこに現れたのは、一本の長剣だった。
刀身は夜空のような深い蒼色に輝き、刀身からは青い稲妻がパチパチと迸っている。その美しさと、部屋中に満ちる圧倒的な魔力に、領主も執事も言葉を失っていた。
修復された剣は、もはや元の“星砕き”ではなかった。元の性能を遥かに上回る、まったく新しい伝説の剣へと生まれ変わっていたのだ。
「こ、これは……なんと……。神の御業か……」
震える手で剣を受け取った領主は、その場に膝をつき、俺に深々と頭を下げた。
「君は、神に愛されし者だ……! 約束の報酬に加え、君に『神の手』の称号を与えよう! 今後、我がバルトロ家は、君を全面的に支援することを約束する!」
この一件は、瞬く間にアークライト中に、そして辺境の他の都市へと広まっていった。
「神の手を持つ職人、ベルク」。
その噂を聞きつけ、俺の元には次々と依頼が舞い込むようになった。
水で薄められた粗悪な薬草を【分解】し、どんな病も治す高純度の万能薬を【再構築】する。
ただの鉄鉱石から、ミスリルやオリハルコンといった伝説級の金属を【再構築】する。
俺の作るものは、常識では考えられない奇跡を次々と起こした。
俺は工房兼店舗を構え、莫大な富を築き上げた。小さな家は、領主が用意してくれた豪華な屋敷に変わった。
だが、どれだけ成功しても、俺の心は驕ることがなかった。なぜなら、俺の隣にはいつもルナがいて、変わらない優しい笑顔で俺を見守ってくれていたからだ。
俺がこの力を使うのは、金や名声のためじゃない。ただ、愛するルナと、俺たちを温かく受け入れてくれたこの町の人々との平和な暮らしを守るため。その想いだけは、決して変わることはなかった。
「君のような若者が、本当に“星砕き”を修復できるのかね?」
目の前に座る、白髪混じりの威厳ある領主が尋ねる。
「お任せください。まずは、現物を見せていただけますか?」
俺が自信を持って答えると、領主は少し驚いた顔をしたが、やがて侍従に命じて、桐の箱を持ってこさせた。
箱の中に納められていたのは、依頼書の通り、見事に真っ二つに折れた長剣だった。刀身は錆びつき、本来はめ込まれていたであろう宝石も失われている。もはやただの鉄クズにしか見えない。
「これが、かつて我が祖先が魔竜を屠ったという伝説の剣“星砕き”だ。多くの名工に依頼したが、誰も修復は不可能だと言った。君に、本当にこれが直せるのか?」
領主の問いに、俺は答えず、静かに剣の残骸に手を触れた。そして、目を閉じてスキルを発動する。
「【分解】」
俺の手の中で、剣は一瞬にしてまばゆい光の粒子と化した。その光景に、領主と執事が「なっ!?」と息をのむ。
俺の脳内には、星砕きの剣の完璧な設計図が流れ込んでくる。素材はミスリルとアダマンタイトの合金。刀身には、風と雷の魔法が付与されるよう、微細な魔力回路が刻まれている。そして、柄頭にはめ込まれていたのは、魔力を増幅させる「風魔石」だったのか。なるほど、これなら魔竜を屠ることも可能だろう。
「……完全に理解した」
俺はつぶやくと、懐から先日、インゴットを作った際にとっておいた純度の高い鉄と、ダンジョンで手に入れたありふれた鉱石を取り出した。
「おい、若者! それはただの鉄鉱石ではないか! 伝説の剣にそんな安物を混ぜる気か!?」
領主が怒鳴るが、俺は意に介さない。
俺は鉄鉱石を【分解】し、その原子構造を組み替える。不要な元素を取り除き、炭素の結合構造を変化させ、存在しなかったはずの新たな元素を配置する。それは、ミスリルでもアダマンタイトでもない、それらを遥かに凌駕する強度と魔力伝導率を持つ、俺だけのオリジナル金属「創世鋼」だ。
そして、失われた風魔石の代わりに、そこらへんに転がっていたただの石を【分解】し、その内部構造を極めて高密度な魔力増幅結晶へと【再構築】する。
全てのパーツを脳内で完璧に組み上げ、俺は宣言した。
「――【再構築】」
光の粒子が、俺の手の中に収束していく。光が収まった時、そこに現れたのは、一本の長剣だった。
刀身は夜空のような深い蒼色に輝き、刀身からは青い稲妻がパチパチと迸っている。その美しさと、部屋中に満ちる圧倒的な魔力に、領主も執事も言葉を失っていた。
修復された剣は、もはや元の“星砕き”ではなかった。元の性能を遥かに上回る、まったく新しい伝説の剣へと生まれ変わっていたのだ。
「こ、これは……なんと……。神の御業か……」
震える手で剣を受け取った領主は、その場に膝をつき、俺に深々と頭を下げた。
「君は、神に愛されし者だ……! 約束の報酬に加え、君に『神の手』の称号を与えよう! 今後、我がバルトロ家は、君を全面的に支援することを約束する!」
この一件は、瞬く間にアークライト中に、そして辺境の他の都市へと広まっていった。
「神の手を持つ職人、ベルク」。
その噂を聞きつけ、俺の元には次々と依頼が舞い込むようになった。
水で薄められた粗悪な薬草を【分解】し、どんな病も治す高純度の万能薬を【再構築】する。
ただの鉄鉱石から、ミスリルやオリハルコンといった伝説級の金属を【再構築】する。
俺の作るものは、常識では考えられない奇跡を次々と起こした。
俺は工房兼店舗を構え、莫大な富を築き上げた。小さな家は、領主が用意してくれた豪華な屋敷に変わった。
だが、どれだけ成功しても、俺の心は驕ることがなかった。なぜなら、俺の隣にはいつもルナがいて、変わらない優しい笑顔で俺を見守ってくれていたからだ。
俺がこの力を使うのは、金や名声のためじゃない。ただ、愛するルナと、俺たちを温かく受け入れてくれたこの町の人々との平和な暮らしを守るため。その想いだけは、決して変わることはなかった。
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