追放された荷物持ち、【分解】と【再構築】で万物創造師になる～今更戻ってこいと言われてももう遅い～

第12話：その男、世界を創る

　俺が王国軍に協力するというニュースは、瞬く間に王国全土を駆け巡った。「創世の英雄、ベルク」。人々は俺をそう呼び、魔王軍に対する反撃の希望を託した。

　俺は早速、王国軍の拠点となっている砦で、その力の片鱗を見せつけることにした。

「これが、王国騎士団の標準装備か……」

　俺の目の前に並べられたのは、使い古されて切れ味の鈍った剣や、ところどころ凹んだ鎧ばかり。これでは、魔王軍の屈強な魔物たちに太刀打ちできるはずもない。

「すべて【分解】する」

　俺が手をかざすと、山と積まれた武具が一瞬で光の粒子と化した。そして、俺は脳内で新たな設計図を構築する。俺が創り出したオリジナル金属「創世鋼」をベースに、軽量でありながらアダマンタイト以上の強度を持ち、持ち主の魔力に応じて属性を付与できる魔法の武具。

「――【再構築】！」

　光が収束し、そこには数千人分の輝く剣と鎧が整然と並んでいた。

「こ、これは……！　なんと軽い！　そして、力がみなぎってくるようだ！」

　新しい装備を身に着けた騎士たちは、その性能に驚愕の声を上げた。

　俺の改革は、それだけにとどまらなかった。

　砦の城壁を【分解】し、どんな物理攻撃も魔法攻撃も吸収する特殊な素材で【再構築】する。
　ただの水と薬草から、一瞬で全回復するエリクサーを大量に生成する。
　空を飛ぶための魔道具「飛空艇」を設計図なしで何隻も【再構築】し、王国に空の機動力を与える。

　俺の力は、もはや人の域を完全に超えていた。戦の常識を、根底から覆していったのだ。

　そして、俺の周りには、俺を慕う人々が自然と集まってきた。聖女として兵士たちの心を癒し、的確な助言をくれるルナ。俺の力を信じ、全幅の信頼を寄せてくれる騎士団長。俺が作ったゴーレム兵団を指揮する、元冒険者の仲間たち。

　俺たちは一つのチームとして、魔王軍に反撃の狼煙を上げた。

　俺たちの進軍は、破竹の勢いだった。

　魔王軍の前線基地を、基地が立つ地形ごと【分解】し、巨大な湖に変えて無力化する。
　数万の魔物の大群を、天から無数の光の槍を【再構築】して一掃する。

　その戦い方は、もはや戦争ではなく、一方的な「創造」と「破壊」だった。

　仲間たちと共に幾多の困難を乗り越え、俺たちはついに、魔王が待ち受ける魔王城へとたどり着いた。禍々しい瘴気が立ち込める、巨大な漆黒の城。

「長きにわたる、お前の歪んだ支配も、ここで終わりだ」

　俺は城門を見据え、静かにつぶやく。隣には、ルナが固い決意を秘めた瞳で頷いている。

　愛する人たちと、これから生まれる新しい世界のため。俺は、最後の戦いに挑む。

「行くぞ、みんな！」

　俺の号令と共に、仲間たちが雄叫びを上げる。

　追放された荷物持ちが、世界を救う英雄となる。その物語は、今、クライマックスを迎えようとしていた。