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Ⅱ.未編集
第42夜
しおりを挟む「す~い~、助けてぇ~」
朝から情けない声を出しているのはご存知、蓮である。
「…何だよ」
「明後日から中間じゃん?さすがに今回も赤点のオンパレードだったら進級が危ない、ってたばっちゃんに言われた」
たばっちゃん、というのは田場先生の愛称らしい。
(高校で進級が危なくなるとか…どんだけ悲惨な成績なんだよ、コイツ)
「ちなみに前回の結果は?」
「辛うじて科学は平均いったけど、その他のは8科目合わせて100点だった!」
凄いだろ!と自慢してくるが、ある意味スゴすぎる答えに頭が痛くなる。
「…人間諦めも大事だと思うぞ」
「そこをなんとか!!」
「アキに頼めばいいだろ」
「ああー、それは無理」
妥当な提案に、けれど蓮はバツが悪い顔をして即答した。
「前回もその前も、実力テストの時も秋斗を頼ったんだけど…あまりに俺が集中しないもんだから匙を投げられた」
しかも秋斗の成績が下がっちゃって、と彼は続ける。
「そうだよ!もうレンちゃんなんて知らないっ!1人で留年でも何でもしちゃえ!!」
突然、背後から珍しい秋斗の怒声が響いた。
どうやら、蓮の勉強態度が相当悪かったようだ。
あの秋斗にでさえ見捨てられたなら、確かに後がないのだろう。
「彗!中学の頃はよく教えてくれただろ?なぁ、頼むよ!!」
「……はぁ。しょうがねーな。ただし、真面目にやらないと…どうなるか分かるよな?」
この幼馴染の相手は優しい秋斗では荷が重かったらしい。
高校に上がってからは放置していたが、さすがに留年は可哀想に思え、秋斗と3人で勉強会を開くことにしたのだった。
「そこ、寝るな!」
開始10分で船を漕ぎ始めた蓮の頭を容赦なく叩く。
「いってぇ…!!」
「お前のための勉強会だろ!やる気がないならすぐにでも解散するが?」
「すみません!彗さま、お願いします。見捨てないで下さい」
放課後の教室。
俺と蓮、それから秋斗の3人が残っているのをクラスメイトが珍しそうに眺めている。
いつもなら我先にと帰るメンバーだからだろうが、それよりも居残りの理由が勉強というのもピンとこないのだろう。
興味津々といった表情で俺たちを眺める生徒がいる中、俺は蓮のノートを見て愕然としていた。
「…お前、白紙ってどういうことだよ」
「テヘペロ!そーゆー彗だって授業にあんま出てなかったし、似たようなもんだろ?って、何これ!?真面目か!!」
ふざけた態度で蓮は躱し、彗のノートを奪う。
ところが蓮の予想とは違い、きっちりと埋まっているそれに驚きを隠せなかった。
「俺は後からアキにノート借りたり、最近は爽が貸してくれたからな。あとは独学だ。つまらない授業を受けるより、その方が生産的だろ?」
「この、裏切り者っ!!」
「はいはい、いいから先に進め」
歴史系はヤマを張って覚えさせるとして、国語は捨てて、数学をみっちりやればいけるか?
理系はある程度自力で出来るだろうし…と彗は頭で計画を立てる。
「おい、手が止まってるぞ?ムチが必要か?」
「いえ、ちょっと休憩していただけです!すぐ解きます!!」
涙目になりながら蓮は問題集と向き合った。
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