28 / 327
全年齢対応・表現マイルドバージョン
第27話 妖怪制作② ~テケテケ~
しおりを挟む新たに出て来る『素材』の回収を冷静沈着な『雪女』しらゆきにお願いして、現状の素材再生をカルマは進めていく。
この階層にはレイドに出た『探索者』の半数以上が『ある』。
どんどん進めていける。
「次は『テケテケ』を作ります!」
もみじとしらゆきを左右に従えて宣言した。
なにせ「そのために用意しました!」と言わんばかりの素材があるんですもの。
作らないわけにいかないじゃないか!
なんのことか?
しらゆきちゃんが人間だったときの彼氏を略奪した女のことだ。
騙されていただけかもしれないが、いまとなってはどちらだろうが関係ない。
ウエストのくびれた部分で輪切りにされていた子である。
傷口をすぐに凍らされたことで即死せず、ヒーラーを探して這いずった根性女子だ。
この執念。
実に妖怪向きの逸材である。
「足すモノとかないしな。すぐ作れる」
胴体の半ばから下がない以外は『人間』だからな。
創作の漫画だとハサミを持っていたりカマを持っていたりするけど。
手で這うのにハサミを持ったら動きにくいだろう。
「まぁ、モンスターとしては攻撃手段がないってのは問題だけど」
腕で這いずって、見たモノを恐怖させて追い掛け回すのがテケテケなのだ。
だが、そこは『スキル』とかで何とかなるだろう。
正直作ってみたいだけだったりするし。
「生前の意識を確認してみよう」
ポチッとな。
『システム』内のデータを呼び起こす。
死ぬ寸前の記憶だ。
ウィンドウが起動して、映像が浮かび上がる。
『痛い、痛い!』
魂なのだろうか?
へその上あたりからぶつ切りされた女の子が、宙に浮いた状態で訴えてくる。
よく見ると左手も手首から先が無くなっていた。
腹部と左手の傷口を氷なのかエクトプラズマなのか、青いものがモワモワと覆っている。
『助けて、助けて、タスケテ、タスケテ、テケ、テケ』
テケテケの名前の由来だとされる言葉が紡がれた。
「そうだね。助けてあげるよ」
体を回収、データ化したのちに『妖怪』属性のモンスターとして再構築。
それだけで、『テケテケ』は完成した。
◆園山裕子視点(テケテケの前)◆
もう、足の痛みはない。
もう、叫ばなくていい。
血まみれの手も、泡のような下半身も、 誰かに見られても、もう恥ずかしくない。
だって、もう人間じゃないから。
彼女は知っていた。
この姿になったのは、怒りのせいだって。
嫉妬のせいだって。
友梨ちゃんの、あの冷たい視線。
彼を奪った罰。
そして、わかる。
『アイツ』に『死』を強制した罪。
生きて帰れなかったのは、その報い。
変な風に復活させられるのは、その代償。
だとしても・・・ここまでされなきゃいけないことだった?
死を強制する筋書きを描いたのは学校の教師たちだ。
そう聞いている。
少なくとも、『私』ではない。
なのに・・・。
でも、それでも。
今は静かだ。
自分の鼓動も呼吸音さえ聞こえない。
この静けさは、彼女にとって救いだった。
誰も追いかけてこない廊下。
誰も叫ばない夜。
泡の中に溶けていく痛み。
彼女は、そっと目を閉じた。
そして、微笑んだ。
死の恐怖から解放され。
痛みからも解放された。
とても安らかだ。
『私』は今、地面に仰向けで横たわっている。
そう言っていいのだろうか?
へその上から下が無くなった身体だ。
驚くほど小さい。
でも。
腕で這うことになるのに、胸が邪魔ね。
もう少し大きくなってほしいって思ってたはずなのに。
今はなくなってほしい。
どうせ体が半分になったんだ。
これも切ってしまえばいいのに。
でも、それはもういい。
「ここなら、もう苦しまなくていいのね」
これが、『妖怪』としての最初の言葉だった。
「そうだね。苦しむ必要はないね」
『マスター』が頷いた。
腹から下がないのは仕様になった。
痛みなんてないはずだ。
『妖怪』には苦痛も悲しみも学校もないのだから、と。
そう言って笑いかけてくる。
横には『彼女』もいて、ガラス玉のような目を向けてきていた。
そして・・・そして?
ありえないことに寒気がした。
『彼女』の腰にある・・・ううん。
『いる』、あの虫は何?
白いふわふわな、ストラップみたいな『アレ』は何?!
怖気が走る。
コワい!
その虫が、フワリと飛んだ。
ゆっくりと、下りてきて・・・地面に投げ出されているモノにとまった。
『ソレ』が、ふわりと舞い降りたその瞬間。
気が付いた。
『アレ』は『彼』なのだと。
あの足。
私の足を褒めてくれていた。
陽の光を跳ね返す、しなやかな筋肉。
走るたびに空気を裂く、誇りある形。
そんな風に褒められたから、笑って見せつけていた。
あの足。
彼の視線が、どれほど熱を持っていたか。
わたしは覚えている。
でも今は違う。
血に濡れ、動かないその足。
まるで『供物』のように横たわっている足。
そこで、『彼』は翅を休めている。
「食べてしまいたい」
そんな言葉が、不意に思い出された。
あれは、比喩ではなかった。
本気だったんだ。
彼の体は雪に包またように美しい。
でも、心は飢えていたのだ。
わたしの命の残り香。
生きていた証。
彼は抗い得ず吸い寄せられている。
その足を、わたしを、自分のモノにしようとしている。
雪虫は、そっと足に口づけた。
それは、愛でも、哀れみでもない。
ただの、渇望だった。
あれは、わたしの足。
誰よりも速く走れた。
誰よりも高く跳べた。
誰よりも、彼に見せたかった。
なのに。
今、あの虫が、わたしの足に顔を埋めている。
音がする。
しゃくしゃくと、柔らかい肉を噛む音。
わたしは、彼がかつて言った言葉を、そっと思い出していた。
「君の足、風みたいだね」。
その言葉が、 今、しゃくしゃくと消えていく。
わたしは叫べない。
『人間』ではないから。
『アレ』と同じ。
化け物だから。
でも、心が叫んでる。
「やめて」って。
「それは、わたしの誇り、わたしの生きた証よ」って。
でも、彼は止まらない。
雪虫は、わたしの足を喰らう。
まるで『愛してる』って言ってるみたいな顔で。
そばで、『雪女』が何も言わず。
ただ静かにその光景を見つめていた。
『食べるほどに求められる』ことに、嫉妬めいた気持ちがあったのかもしれない。
気持ち悪い。
そして、哀しい。
わたしの足が、誰かの欲望で消えていく。
生きていた証が消えていくような感覚。
あれは、わたしの足。
間違いない。
膝の傷も、ふくらはぎの筋肉の形も、全部覚えてる。
走るたびに風を切って、彼に褒められた。
心が崩れていく音がする。
わたしは、『妖怪』になった。
足は『人間』のまま葬られるのね。
食べられることで・・・。
「テケテケの完成です!」
『ダンジョンマスター』がそう告げた。
その言葉が、 私の耳に届いたとき、
一瞬だけ、 心が叫んだ。
『違う』って。
でも、 声は出なかった。
その声は、雪の下に沈んでいった。
もう、 人間じゃないから。
私の名は『テケテケ』となった。
——と思ったんだけど・・・?
「んー・・・『園下ひろ』、かな?」
名前を貰えた。
『園下ひろ』。
『園』はもともとの名前からかな?
で、『下』はなんとなくわかるかな?
『ひろ』は何だろう?
空間が『広く』空いているから?
わからない。
でも優しい響き。
私は『園下ひろ』になった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。
エース皇命
青春
高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。
そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。
最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。
陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。
以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。
※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
※表紙にはAI生成画像を使用しています。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる