『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第119話 仮面デート ~背中合わせの抱擁~ 後編

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 ◇サブリーダー視点◇

 証拠は手に入れた。
 あとは、それを使って動くだけ。

 ……でも、私がすることは、ほとんどない。
 すべては、あの男がやってくれる。
 ええと、名前……まぁ、いいわ。
『名前』を呼ぶ機会なんてない。
 どうしても必要なら…『ナイト』とでも呼べばいい。

 続きをしましょうって、甘く囁いてあげた。
 それだけで、がむしゃらに働いてくれる。
 男って、単純で可愛い。

 あの場にいた女たちも、手伝ってくれるらしい。
 理由?

 知らないわ。
 でも、利害が一致してるなら、それでいい。
 目的なんてどうでもいいの。
 私の邪魔をしないなら、それでいいのよ。

 ……♪

 個人チャットの通知が鳴った。
 甘く響く、勝利のベル。

「また?」

 誰か別の人かと思って開くと――『城野敦』。
 ああ、そうそう。
 そんな名前だったわね。

 内容は……あの女の所業を告発する文面。
 しかも、複数のルートで、文面を変えて拡散中ですって?

 早い。
 そつがない。
 完璧。

 私にだけ、特別に報告をくれるなんて。
「そんなに私が欲しいのかしら?」

 胸の奥が、じんわりと熱を帯びる。
 指先が震える。
 唇が、自然と綻ぶ。

 ああ、気持ちいい。

 誰かが私のために動いている。
 誰かが、私の望みを叶えようと必死になっている。
 その姿を想像するだけで、甘い蜜が喉を滑り落ちていくような快感。

 今日は、きっと――最高の一日になる。

 黒い欲望が、ゆっくりと満たされていく。
 この陶酔感。
 この支配の味。

 もっとちょうだい。
 もっと、私を満たして。
 あなたの手で、あの女を沈めて。

 私はただ、見ているだけでいい。
 それが、私の特権。

 ◇カルマ視点◇

「……と、彼女は思っているんだろうな」

 何代ものスマホが並ぶ机の前で、カルマは静かに、ほくそ笑んだ。

 約束通りには動いている。
 告発も、拡散も、演出も。
 彼女の望んだ通りに。

 ただ、彼女は知らない。
 気づけない。

 告発されているのは、一葉だけじゃない。
 彼女自身も、すでに『火種』として投下されている。

 絶妙な角度で影が差し、顔の見えない男との密会。
 制服の襟元がわずかに乱れ、笑顔が、媚びと欲に濡れている。
 その映像が、別のルートで、別の言葉を添えて、静かに送られていく。

「さて……最初に動くのは、どのプレーヤーかな?」

 指先でスマホの画面をなぞる。
 まるで、盤上の駒を撫でるように。
 通知が弾けるたび、誰かの心が揺れる音が聞こえる気がした。

 彼女の高揚も、
 一葉の焦燥も、すべては盤上の熱。

 それを冷やすのが、オレの役目だ。

 熱を奪い、動きを止め、感情を凍らせる。

 駒を撫でる指先に、誰も気づかない毒が宿っていた。

 それは、甘い言葉の裏に潜む『呪い』。
 それは、正義の仮面をかぶった『刃』。
 それは、誰もが気づいたときにはもう遅い、『静かな死』。

 オレはただ、盤面を整える。
 そして、最後に王を詰む。

   ◇

 その告発文を読んだ『誰か』が、手を震わせた。
 スマホを持つ指が、かすかに痙攣する。
 画面に映る文字が、視界の奥で滲んだ。

 それは、盤上の熱が、初めて誰かの心を焦がした瞬間。

 胸の奥に、じわりと広がる灼熱。
 怒りか、恐怖か、それとも裏切られた痛みか。
 感情がまだ名前を持たないまま、ただ、焼けるように疼いていた。

 指先が震える。
 でも、目は逸らせない。
 言葉が、喉に刺さる。
 心が、静かに火だるまになる。

 盤面の駒が、ついに熱を帯びた。
 最初の一手が、動き出す。
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