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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます
第126話 疑惑、そして分断へ① 前編
しおりを挟む「……帰還、だと?」
レイドリーダーは、報告を受けた瞬間、言葉を失った。
先駆けB班。
先行しているはずの班が、何の前触れもなく戻ってきた。
しかも――掲示板で噂されていた『目的物独占』の疑惑を否定するために。
「おかしい……」
一葉が隣で呟いた。
その声は、震えていた。
驚きでも、恐れでもない。
疑念だった。
「彼らが本当に濡れ衣を晴らすためだけに戻ってきたなら、もっと早く動いてるはずよ」
「それに、沙羅と連絡を取ってたのも気になる」
一葉も、リーダーの声も低く、硬い。
言葉の端々に、警戒と不信が滲んでいた。
「変よね。沙羅がB班の動きを個人チャットで把握してたなんて」
沈黙が落ちる。
二人の間に、言葉よりも濃い空気が流れた。
「……裏で何かが動いてる」
キリトの言葉に、一葉は目を細めた。
「B班が仕掛けたのか、それとも沙羅が操ってるのか。もともとの疑惑の通り、A班が健在なのか。どちらにしても――私たちが狙われてる可能性は高い」
「真梨華が消えた直後に、これだ。タイミングが良すぎる。いや、悪すぎる」
一葉は、スマホを握りしめた。
画面には、B班の帰還報告と、沙羅への『警告』が並んでいた。
それぞれが、別の発信者からのもの。
つい数時間前まで、チャットに動きはなかった。
全員が戦場にいるようなものだからだ。
浮ついた噂話が飛び交う余地など、なかった。
それが、今や――饒舌だった。
まるで、誰かが意図的に情報を操作しているように。
「信じられるのは、もう……」
キリトは、言葉を濁した。
その続きを、口にすることができなかった。
一葉は、静かに答えた。
「自分の目だけよ」
その瞬間、二人の間にあった信頼に、うっすらと線が引かれた。
目には見えない、けれど確かに存在する境界線。
濁った水底に沈む真実は、まだ誰の目にも映らない。
でも、波は――確実に、立ち始めていた。
◇
「……少し、いいかしら?」
沙羅が振り返ると、そこに一葉が立っていた。
表情は穏やか。
声も柔らか。
でも、その瞳だけが――氷のように冷たかった。
「先駆けB班と、連絡を取っていたそうね」
その言葉は、水滴が静かに落ちるような響きだった。
だが、その一滴が、確実に波紋を広げていく。
「ええ、状況確認のためよ。レイドの進行に関わることだから」
沙羅は平然と答える。
だが、一葉は一歩、距離を詰めた。
「状況確認、ね。じゃあ、なぜ私に報告しなかったの? 私は幹部じゃないとでも? それとも、私が『関係者』だから?」
沙羅の眉が、わずかに動いた。
その反応を――一葉は見逃さなかった。
「あなたがB班と連絡を取っていたこと、リーダーには伝えたわ。それに、あなたが私の動きを『警告』として他の隊に流していたことも」
空気が重くなる。
周囲の視線が、少しずつ集まり始める。
「何が目的だったの? 私を排除するため? それとも、あなた自身の立場を守るため?」
沙羅は口を開きかけたが、一葉が先に続けた。
「私は、あなたを敵だとは思っていなかった。でも、あなたは私を『危険因子』と見なした。 その判断、何を根拠にしたの?」
言葉は静か。
だが、逃げ場のない圧力が、じわじわと迫ってくる。
「あなたの動きが早すぎるのよ。誰だって警戒する」
沙羅の言葉は、苦しい正当化に聞こえた。
一葉の動きが的確すぎること。
まるで、すべてを知っていて、役を演じているような――シナリオ通りの動き。
「警戒? それって、確かな根拠があるの? それとも、ただの憶測や願望? 期待にすぎないんじゃない?」
「……誤解よ。私はただ、隊の安全を――」
「安全のために、裏で情報を操作するの? 安全のために、私を孤立させるの?」
一葉の声が、少しだけ鋭くなった。
それでも、感情は見せない。
冷静に、執拗に、問いを重ねる。
「あなたが信じていたのは、誰? B班? それとも、サブリーダー? そして今――私を信じる理由はある?」
沙羅は、言葉を失っていた。
一葉は、最後に一歩だけ近づいた。
「私は、敵じゃない。でも、敵にされたなら――それなりの対応をするわ」
その言葉は、静かな宣戦布告だった。
静かな水面に落ちた一滴が、やがて濁流になる予兆。
一葉は、背を向けて歩き出した。
残された沙羅の胸に、冷たい波が打ち寄せていた。
それは、罪悪感か。
恐怖か。あるいは、敗北の予感か。
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