『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第127話 疑惑、そして分断へ① 後編

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「……誰も、信用できない」

 一人になった瞬間、沙羅は小さく呟いた。
 その声は、誰にも届かない。
 でも、自分の中では――確かな響きを持っていた。

 リーダー。
 あれほど冷静で、公平だったはずの人。
 でも今は、一葉の肩を持っている。
 サブリーダーが消えた途端、態度が変わった。
 まるで、最初から一葉を守るつもりだったかのように。

「本当に、彼は中立だったの?」

 サブリーダー。
 強引で、感情的で、でも確かに隊を引っ張っていた。
 その彼女が、突然姿を消した。
 そして、裏で誰かと会っていたという噂まである。

「何を隠していたの?」

 そして――一葉。
 冷静で、理性的で、でもあまりにも『動きが早すぎる』。 
 情報の流れを把握し、先手を打ち、告げ口までしてくる。
 まるで、すべてを見通しているかのように。

「彼女が……ただの『隊員』とは思えない」

 疑念が、胸の奥で渦を巻く。
 誰が本当のことを言っているのか。
 誰が、裏で何を企んでいるのか。

「私が、間違ってるの?」

 そう思いたくない。
 でも、信じていた人たちが、次々と『別の顔』を見せてくる。
 その顔が、本物なのか仮面なのか――もう、わからない。

「……なら、私も仮面をつけるしかない」

 沙羅は、静かに端末を開いた。
 そして、いくつかの連絡を始める。

 表向きは、進行確認。
 だが、その裏には――情報の網が張られていた。

 信じられないなら、確かめるしかない。
 誰が敵で、誰が味方か。

 その答えを見つけるために、彼女は――仮面をつけて、動き出した。

     ◇

「あなた、何を隠してるの?」

 沙羅の声が、静かに響いた。
 だがその静けさは――嵐の前の静けさだった。

「隠してる? それはあなたの方じゃないの?」

 一葉は、眉ひとつ動かさずに応じる。
 その声は冷たく、澄んでいた。

「私は、隊のために動いてる」

「私もよ」

「じゃあ、なぜ私の足をすくおうとしているの?」

 言葉がぶつかる。
 どちらも冷静を装いながら、内側では激流が渦巻いていた。

「B班と連絡を取っていたのは事実。でも、それを『裏切り』と決めつけるのは早計じゃない?」

「じゃあ、なぜ私を警戒するようなメッセージを流したの?」

「あなたの動きが不自然だったからよ」

「不自然に見せられていたとしたら?」

 沈黙。
 一瞬の間に、空気が張り詰める。

 そこに、リーダーが割って入った。

「やめろ。今は争っている場合じゃない」

 だが、その言葉に沙羅が噛みついた。

「あなたが一葉を特別扱いしているから、こうなってるの! 場を収めたいだけなら、引っ込んでいてちょうだい!」

「特別扱いなんてしていない」

「じゃあ、なぜ彼女の告白を信じて、私の報告を疑うの?」

 リーダーの顔が曇る。
 その隙を、一葉が補うように、静かに反撃に移る。

「私の言葉には証拠があったからよ。あなたの言葉には、ただの『警告』しかなかった」

「証拠? あなたの『涙』が証拠になるの?」

「じゃあ、あなたの『警戒心』は何の証拠になるの?」

 言葉が鋭く交差する。
 まるで刃のように、互いの信頼を切り裂いていく。

「もうやめろ!」

 リーダーの怒声が響いた。
 だが、誰も止まらない。
 疑念はすでに、言葉では止められないほど膨れ上がっていた。

「誰かが仕組んでるのよ」

「じゃあ、それは誰?」

「……あなたじゃないの?」

 その瞬間、空気が凍りついた。

 沈黙。
 呼吸すら、音を立てるのがためらわれるほどの緊張。

 疑念が、ついに――『敵意』へと変わった。

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