アポカリプティックサウンド~脅迫から始める終焉の恋~

魚沢凪帆

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第1の章 終焉の始まり

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手を伸ばした、あたしに
あなたは少しずつ距離を取っていく
あなたが思うよりも、ずっとずっと、
あたしはきっとあなたが好きなのに

流した涙を幾重にも重ねた夜を越えて
明日を願う事にはとうに、疲れたの
繋いだ手の温もりも、
見つめたその瞳も、
幻だと気付いてしまうなら、
私はもう、二度と目が覚めなくてもよいと

覚悟はしている
きっと、もう、ずっと前から
あぁ、やっぱり、きっとこんな日が来るって
ずっと前から分かっていたんだ

************************




耳から流れてくる心地の良いソプラノ

透き通った声なのにしっかりと響く声は、歌詞に乗せた想いをダイレクトに伝えてくる。



「また、TOKOの曲を聴いてるの?」

曲の世界に浸っていたあたしは、一気に外の音が聴こえてびっくりして振り返った。

あたしのイヤフォンの片方を持ったまま、呆れた顔をした幼馴染のひとり。



「梨花? どうしたの?」

「どうしたの、って最近さっさと一人で帰っちゃうでしょう? 気になって追いかけてきたの」

「そっか」

あたしは梨花から、イヤフォンを受け取りながら曖昧に笑った。

梨花には時雨のことはひとつも、話していない。

アンダーグラウンドの男を脅迫したなんて知ったら、きっと梨花は卒倒しちゃうかもしれない。



「最近、休み時間までTOKOの曲を聴いていて、授業中も上の空になってることが多いし、何かあったんでしょう」

5歳からの幼馴染の梨花には、あたしの変化はお見通しだってわかっている。

だけど、梨花にはまだ、なにも話したくない。

梨花はきっと、心配して、今あたしのやっていることのすべてを止めるに違いないと思う。

それが友情であって、心から感謝するものだとわかっている。

だけど、今は、あたしの始めたすべてを否定して欲しくなかった。

我儘だってわかっているけれど。



「ごめん」

呟くような声に、梨花は大きな溜息をついた。

「なにも話してくれないんだね。―――って本当は、そんな気がしていた」

心配してくれる1番の親友で、幼馴染。

こんな存在がいてくれることに、神様にだって感謝をしなくちゃいけないのに、あたしって本当に酷いやつだと思う。




あたしは今、きっと、大事なものに優先順位をつけている。

そうじゃなきゃ、ちっぽけなあたしでは、あたしが大切にしたいものを大切にできないから。






「いつか、話してくれる?」

梨花の言葉に、ハッと顔を上げた。

いつも笑ってそばにいてくれて、気丈な梨花が泣きそうに見えた。

「うん。必ず、話すよ」






―――きっと、必ず。

三ヶ月後には、すべての答えが出るはずだから。

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