『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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『清』なる勇者の病気

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「ゴウキっ!!」


烈火の如く怒り叫びながら、クレアはゴウキを押しのけて今しがた彼を襲ったスリに駆け寄ろうとした。
だがその肩をゴウキは掴み、それを阻止する。


「やめとけ、そいつナイフを持ってる。何されるわからねぇ」


そう言われてクレアの視線はスリの左手にいく。その手にはゴウキの言う通りナイフがあった。
クレアは勇者だが、対人では信じられないほど無防備になる。ナイフ一本が致命傷にならないとも限らないとゴウキは考えていたからこそ、クレアを止めた。


「馬鹿っ!だからと言ってやり過ぎよ!」


「あぁ?」


クレアの叫びにゴウキが唖然としている間に、クレアは激痛にうずくまるスリに駆け寄った。


回復ケアーー」



クレアは自分で使える回復魔法をスリにかける。彼の右手が光に包まれたかと思うと、砕かれたはずのそれはいくらか関節が変に曲がったままで不格好ではあるが、最初に比べればかなりマシな状態まで回復した。


「・・・私ではここまでしか治療できないわ。ごめんなさい」


悔しそうに顔を歪め、クレアはそう言った。
クレアも人並み以上の回復は使えるが、それでもゴウキがやったような派手な肉体の損傷となると完全に元通りとはならない。しかしそれでもやらないよりはマシだ。怪我は時間が経過すると回復魔法も受け付けなくなるのだ。


「い、いえっ!とんでもございません。も、もう二度と悪事はしません!」


スリは涙と鼻水をダラダラ流して懇願する。クレアは微笑を浮かべながら


「もういいわ。行ってください」


そう言ってスリを許した。スリはそれを聞いた瞬間、脇目も降らずその場を全力疾走で走り去っていった。


「ちっ、どうなってもしらねぇぞ」


つまらなそうにゴウキが舌打ちをする。
クレアはそんばゴウキをキッと睨みつけた。


「やり過ぎよ。どうしてあそこまでやったの?」


「憲兵に突き出されそうになったらナイフで襲ってきたやつだぜ。アイツは根っからの屑だよ。絶対に反省しねぇしまたやると思うぜ」


ていうか正当防衛だろ・・・とゴウキは溜め息をつく。
まぁゴウキもクレアがこうして来ることをある程度見越して、日常生活は送れるものの程度には右手を壊しておいたのだが。
やり過ぎ感はあるが、ゴウキなりにスリの男の狂暴性と残忍性を見抜いていたこその再犯防止策でもあった。


「そんなことわからない。彼は十分に反省していたように見えた」


「そんなやつがナイフなんか振り回すかよ」


「あれは、手を離さないゴウキに怯えたとかで・・・」


無理矢理自分に言い聞かせるように苦し紛れの言い訳をするクレアを見て、ゴウキは溜め息をついた。
クレアのこの「病気」は簡単には治らない。だからこそ自分のような人間が近くにいる必要がある・・・ゴウキはそう考えていた。
『人間』が『人間』に害をなすとは考えない。
反省の色を見せればそれを容易く信じてしまう。簡単に嘘に騙される。病的なまでにクレアはこと人間に対して純粋であるのだ。
そんな彼女だからこそ『勇者』として神託で選ばれたのかもしれないが。


何にせよあくまで『清』である必要があるクレアには、『濁』として汚れ役を買う人間が必要だ・・・
ゴウキはそう考えてクレアに付いていっていた。
例え自分が何を言われようと、どんな扱いを受けようと、そうすることでクレアの助けとなり、ひいては人の助けとなるのなら、自分は甘んじて全てを受け入れようと考えていた。
例え孤独になろうとも、自分は勇者パーティーとして出来ることをやり遂げようと思っている。
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