『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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プロローグ

お前が一番凄いんだよ

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「目をつけられてる?・・・やっぱりな」


「兄弟勘違いしてるだろ。悪い意味じゃねぇ、勇者パーティーで一番優秀に思われてるのはお前さんなんだよ」


言葉の意味を勘違いしてシュンとしたゴウキに、ディックは手を振って否定する。
優秀?俺が?
ゴウキは首を傾げる。


「俺は他人の能力を身内びいきで褒めたりはしない。お前さんは本当に勇者パーティーで一番注目されてるんだ。もし勇者パーティーを抜けることがあれば、すぐさまスカウトが殺到すると思うぜ」


「そんなバカな」


ゴウキは謙遜しつつミルクをちびっと飲む。
そんなゴウキを見てディックはバンとテーブルを叩き、更に訴えかける。


「嘘じゃねえ!俺だって兄弟がフリーなら、すぐにでも勧誘したいところだ。買い出しのアイテムの目利きは出来て、顔も広いと来てから更に圧倒的な戦闘力。正直勇者パーティーの他のメンツはお前さんほどの輝きはないよ。俺だって勇者パーティーについて話をすることあるけど、誰と話しても、って言うけど他の奴らは名前すら出てこねーよ」


「・・・そ、そうか・・・」


これまでスミレ達が自分を褒めてくれるのは身内びいきがいくらかでもあると思っていたゴウキは、ディックの言葉に少し救われた気持ちになった。いろいろ空回りして形見が狭い思いをしていただけに尚更だった。
実際ゴウキの戦闘力は極めて高い。魔物だ魔人だ醜いだのと言われているが、速度、破壊力、勘ともにバルジ王国でも群を抜いて高いレベルに達していた。
そして身体能力の高さだけでなく、自然回復が異様に早い点もゴウキの特徴である。出血が止まるのも早ければ、骨折も程度が良ければ少し放置するだけで治る。
子供の頃にクレアと喧嘩した際、折れた左足もこの自然回復により僅かな時間で動かせるようになった。バルジ王国はもちろんのこと、他のどの国を調べてもこの自然回復と同じ能力を持つ者は見つかっていなかった。



「・・・さっきさ、俺が話しかける前に絡んできた奴らがいただろ?」

「ああ・・・あいつらか」


ゴウキは自分に絡んできた少年たちのことを思い出す。


「あれ、実は俺のところの新入り達なんだ。悪いと思ったが、勉強させると思って兄弟に絡むのを黙って見てた」


「そうなのか?」


「あいつら筋は良いんだが、危険を嗅ぎ分ける勘が悪くていけねぇ。俺は口を酸っぱくして鼻を利かせろって言ってんだけどよ。まさか兄弟に絡むとは思わなかった」


短絡的ではあったが、確かに筋は良かったかもしれないとゴウキは思った。
最初の一人がやられるや否や、すぐに攻撃魔法の詠唱をして準備をし、そっちに意識を向けないようにもう一人が前に出る。
前に出たやつに気を向けてしまっていたなら、ゴウキは攻撃魔法の餌食になっていただろう。
戦い慣れしているのは確かだった。まぁ、実力が違い過ぎてあしらわれてしまったが。


「馬鹿なら馬鹿なりに強ければまだいいんだが、今日の失態を見るにまだまだだな・・・」

ディックはそう言って溜め息をつく。


「俺もギャングをそれなりに勢力拡大してきたよ。けど、どうしてもてっぺんを取るには至らなかった。それは優秀な人材が不足してんのが原因だ。兄弟みてぇなのがいると心強いし、本当は今すぐにでもスカウトしたいんだがな」


ディックの視線を受けて、ゴウキは申し訳なさそうに俯いた。


「すまん、先客がいるんでな・・・」


スミレ達のことを思い出し、ゴウキは言った。ただ、もし勇者パーティーを抜けたとしても、これほどまでに自分をまだ必要としてくれる人がいる。その事実は嬉しいと思っていた。


「今日のところは引き下がってやるよ。けど、もし行く当てが無くなったらすぐに俺に声をかけてくれよな」


「ああ」


そう言ってディックはゴウキに名刺を一枚手渡した。
見ると、そこには4区でもそこそこ有名な娼館の名前が書いてある。


「俺の組織が表向きの収入源としてる店さ。兄弟ならタダでいいぜ。良い女をつけてやるから、これからどうだ?」


「えっ・・・?いや、俺はこういうのは・・・」


「なんだよなんだよシたことねぇってわけでもないだろうに。遠慮すんなよ」


「いや・・・それが・・・」


ディックの誘いについにゴウキは何も言い返せないように口ごもる。顔を真っ赤にさせるゴウキを見て、ディックは察してしまった。


「あっ・・・(察し)ふーん、ま、まぁ・・・取っといていいもんでもないし、どうよ今日捨ててくのは?」


この誘惑に対し、ゴウキは少し・・・ほんの少しだけ迷ってしまった。
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