『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

文字の大きさ
90 / 508
追放後

剣風戦鬼デニス

しおりを挟む
「この先250メートル先、左方向に大きな広間がありそうですが、そこに多くの魔物が屯ってます。これは・・・モンスターホームですね」


索敵について担当することになったリノアが魔法で検知して言った。ちなみに索敵魔法の名前は『索敵レーダー』としたらしい。
魔物の気配は察知できるものの、未発動で隠れたままの罠の存在までは把握できないので、斥候は変わらずスミレが受け持つことになっている。「アタシの影が少し薄くなったぞ・・・いや、忍者だから本来それでいいのか?」などとスミレはブツブツ言っていた。




「モンスターホーム?」


リノアの言葉に聞いたことにない単語が出たので、ダンジョンに馴染みの無いデニスが聞き返す。
モンスターホームとはダンジョン内にて築かれている魔物の集落のことを指す。その数は100に及ぶこともあり、当然ながら多くの魔物を一度に相手にすることになるので危険度が高い。だが、ここに魔物が自分達の持っている宝物を寄せ集めて保管するという謎の習慣があり、そのお宝を目当てに会えてモンスターホームを襲撃する冒険者達もいる。


「そうか・・・そのモンスターホームとやら、俺に任せてみてくれないか」


モンスターホームについて説明を受けたデニスが、唐突にそんなことを言いだした。


「・・・任せる?おい、まさか一人でやるのか?」


流石にゴウキもこれには驚愕する。


「俺も少しは良いところを見せたいからね・・・」


どうやらデニスはスミレ達の活躍に触発されたようだった。


「魔物の数は・・・ちょっと少な目で35体ほどですね。万が一には私の魔法で焼き払える範囲です」


「35体か・・・。もし万が一打ち漏らしたら頼む」


しれっとまたとんでも能力を晒すリノアに対し、早くも馴染んだのかデニスは驚愕するでもなく普通にフォローをお願いする。むしろ(ゴウキのパーティーメンバーであるなら、やはり普通じゃないくらいじゃないとね)などと勝手なことを考えていた。


「一人で35体か。ちょっと骨が折れそうだが、無茶はするなよ?」


ゴウキもゴウキで一般人が聞いたら驚愕するようなことをしれっと言ってのける。


「任せてくれ。すぐに終わらせる」


デニスはそう言ってモンスターホームの近くまで歩き、そこで立ち止まって構えた。抜刀の構えである。





「往生せぇやぁぁぁぁ!!」



普段の物静かな雰囲気とは裏腹に、突然そう叫ぶとその場で横なぎに一閃、刀を振り抜いたかと思うと、「パチン」と音を立てて一瞬で納刀を終えていた。


「四式、ハヤテ」

納刀を終えた直後に、デニスがボソッと呟いた。

その直後、モンスターホームのあるらしきところから、何やらドタドタと音がする。
一瞬魔物達がデニスに気付いて動き始めたのかとゴウキは思ったが、音はすぐに止み静寂が辺りを包んだ。










「ん・・・終わり?」


ポカンとするゴウキ達。デニスはモンスターホームに踏み込むことなく、ただ横なぎに素振りして終わっただけに見える。


だが、違った。
その後「もう終わったようだ」とデニスがいうので様子を見に行くと、モンスターホームにいる魔物の全てが横一文字に斬られ真っ二つになっていたのである。
素振りによって発生した真空刃によって起きた現象であったが、ゴウキは「俺のキャラ、このパーティーの中じゃ一番薄いのでは」と困惑していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...