『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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追放後

一人スミレはほくそ笑む

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一匹の烏が飛んでくるのを、公園のベンチに腰掛けていたスミレは気付いた。
烏はスミレの座るベンチに着地すると、そのまま何をするでもなく佇む。


「ふん、ふん、そっか」


スミレは一人で相槌を打つ。傍からみれば危ない女だ。
実は烏は何もしていないのではない。
スミレと会話をしているのだ。スミレは王都にいる何羽かの烏を配下に置いている。そして烏から王都のあらゆる情報を入手するのだ。
凄いことだが、「忍者だから」の一言で済ませてしまうスミレ。それに、最近リノアが烏を使う以上の情報収集する手段を持っていることを知っているために、むしろこの能力も微妙なのでは?などと考えてすらいる。


「あんがとさん」


必要なことを聞き終えたのか、スミレはそう言って上質な肉片を地面に置くと、烏は即座にそれを啄み始めた。



「勇者がまだゴウキを諦めてないってか・・・目ざわりだわ」


スミレは烏を使って勇者パーティーの動向を追っている。
今回だけではない。いつだってスミレは王都における勇者パーティーの動きを把握していたのだ。


(あのモラハラ馬鹿女が、飽きずにゴウキを苦しめようってか)


スミレの表情が険しくなる。溢れ出る怒気に、美少女であるスミレを見かけナンパしょうかと思っていた男が怯えて遠ざかっていった。


(せっかくアタシが遠ざけてやったのに・・・)


スミレは前々からゴウキを勇者パーティーから解放したいと考えていた。
ゴウキがリフトを蹴り飛ばした件を、こっそり勇者パーティーに否定的な新聞社にリークしたのもスミレだった。ゴウキには悪いと思ったが、いろいろと引っ掻き回せたお陰で最終的に彼を勇者パーティーから解放することが出来たから、今では結果オーライだと思っている。


(またゴウキに寄り付くようなら、容赦なくやってやる・・・)


ゴウキはもうクレアのものじゃない。奪いにくるなら徹底的にやってやるとスミレは闘志を燃やす。

元々スミレはクレアのことが大嫌いだった。
ゴウキの善意に甘え、自分の嫌な仕事をゴウキに押し付け、ゴウキに負荷をかけ続けることでパーティーとしての均衡を守ってきた無能というのがスミレがクレアに抱く印象だ。
ちょっと困った様子を見せればゴウキが折れる、それに味をしめて延々とゴウキを苦しませて、自分は楽をしているモラハラ女。わざとじゃないとするならなお質が悪い。
ゴウキだって仕方がない、平気だ、とりあえずなんとかなる、そう言ってはいたが、それでもたまに飲んだときに愚痴るのは相当に彼も思うところがあったのだ。


「ゴウキはもうお前らに付き合わねーよ。勝手に落ちな」


餞別だ、とばかりにスミレは一通の手紙を取り出す。
これはクリスタルダンジョンでの依頼をクレア達がしくじったとする事実を新聞社にリークする内容の手紙だった。
スミレは一人ほくそ笑み、手紙をポストに投函した。


「ゴウキはアタシのだ。馬鹿女」
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