『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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ゴウキ・ファミリー

効かない圧力

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フォースギルドが取引先を見つけて数日経過してのことだった。


「は?何だと・・・?」


セントラルギルドのギルドマスターの執務室では、ギルドマスターのフミオンが部下の報告を聞いて顔を怒りで歪めていた。
さっきまでは上機嫌で笑っていたかと思えば、今は恐ろしいほどの怒りの形相で部下を睨んでいる。それだけ部下の報告はフミオンの怒りを買う内容だった。


「ですから・・・その、ゴウキ達のパーティーを尾行していた冒険者は、全て返り討ち・・・それと事件に巻き込まれています」


事件に巻き込まれた冒険者というのはゴウキを尾行していた斥候職の女のことだ。不用意に第4区に足を踏み入れて行動したために、浮浪者に襲われて性被害を受けてしまった。

他の返り討ちというのはスミレ達を尾行していた冒険者達のことだ。
案の定彼女らに気付かれないはずはなく、即座に痛い目に遭わされてしまっていたのである。スミレ達の場合はゴウキのように遊ばせることはなく、即座に尾行者に制裁を与えていた。
ちなみにそのことをスミレ達がゴウキに話したら「別にいいんだけどね、もう少し穏便にね」と言ったという。


「冒険者達は治療費と慰謝料を払えと言ってます。それと追加の口止め料を・・・と」


冷や汗をかきながら部下がそう報告すると、フミオンの眉がピクリと動いた。


「調子に乗りおって・・・」


フミオンは一瞬激昂しそうになったが、それでも堪えた。冷静に考えればセントラルギルドが別のギルドに所属している冒険者を自分のところ所属の冒険者に後を尾行させたなどと、醜聞以外の何物でもない。それも全員が返り討ちに遭い、一人が事件に巻き込まれてしまった。
これが知られれば面倒なことになるのは確実だった。特に冒険庁のジャックは何を言ってくるかわかったものではない。冒険者への口止めは必須だ。


「いくらか包んでやれ。そして他言は絶対にするなと。あと事件に遭った女には多めに包め」


金で解決するなら糸目をつけずにやるべきだ。フミオンは手痛い出費であるのはわかりながらも、部下にそう指示をする。部下は「そのようにします」と頷いた。


「優秀な斥候が見つかるまでゴウキ達の尾行は取りやめだ。すぐに今回派遣した以上に腕の良いやつを探しておけ」


今度は尾行の見つからないような優秀な人間を雇えば良い。フミオンはそう考えていた。
そんな冒険者は王都にいないことは誰も知らない。



「他に何かあるか?」


気分が悪い。これ以上無いならさっさと戻れと暗にフミオンは含めてそう訊ねると、部下は顔を蒼白とさせながらためらいがちに


「あと一つございます」


と言った。


「・・・なんだ?」


溜め息をついてフミオンは続きを促す。


「フォースギルドですが、我々の圧力の及ばない業者と取引を開始したようです」


「・・・・・・なんだと?」


「それと、まだ明確な証拠はありませんが、圧力をかけたはずの業者の一部も内密に取引を再開している可能性があるとの報告を受けております」


「はぁ!?ふ、ふざけるなぁぁぁぁぁ!!」


ゴウキ・ファミリーとフォースギルドがフミオンの仕掛けた圧力と罠をあっさりとかいくぐったことを知り、激昂した。
フミオンのゴウキへの逆恨みは更に深まることになる。
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