『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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ゴウキ・ファミリー

ゴウキだけが鬼じゃない

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ゴルドーは大柄の男だ。今いるところは平地で、スミレとの立ち位置に高低差はない。だが何故だろう、ゴルドーはスミレに見下ろされている、そんな錯覚を受けた。
これが圧倒的戦力差から来る気迫負けか、と何となく察する。自分一人で勝てる相手じゃない。しかも丸腰・・・どころか服さえ着ていない。
そう察しているゴルドーはそれでも一縷の望みにかけて口を開いた。


「一体どうして俺が生きているってわかったんだ?」


ゴルドーは質問をした。
とある目的のためのものではあったが、これは実際に彼が気になっていたことでもあった。


「アタシは忍者だ。お前ぇがやったような騙し技なんてものはむしろ忍者の専門なんだよ。アタシから見れば拙くてすーぐにわかっちゃったぜ」


「忍者・・・か。ゴルフボールを素手で握り潰すほどの握力を持ち、何十もの戦士相手に一人で戦い殲滅させられるだけの力を持っているとは聞いたことがあって眉唾だったが、案外嘘じゃねぇのかもな」


ゴルドーはスミレの返答を聞いて笑いながら言った。
笑いながら、気付かぬほど僅かに視線を巡らせ、周囲を見回す。







そんなゴルドーのことを見透かしたようにスミレは言った。
ゾクリとゴルドーの背筋が凍る。


「時間稼ぎだったんだろ?アンタのお仲間が合流してくるまでのさ。一人じゃなければ、玉砕覚悟でアタシを倒せるかもしれないって思ったんだろ?」


「・・・なっ・・・」


ブラフをかまそうか、どうしたものか考えが及ばぬまま、ゴルドーは絶句するしかなかった。


「アンタの仲間ならもう既に眠らせてあんだよ」


そう言って不敵に笑うスミレは、何かを放り投げてゴルドーの足元にやってみせた。それはゴルドーの仲間達が普段身に着けているアクセサリなどだった。無力化し終わっていたのはブラフではなく事実だと知って、ゴルドーは信じられないと口を半開きにする。
ゴルドーは全力で逃げたが、それまでの間に6人いた仲間を無力化してきたというのだから、もう格上と相手をしているというよりただただ超常的な悪夢を見せられている気分にさせられていた。


「は、はは・・・悪夢だ・・・」


重ね重ね思う。
本当にアンドレの言う通りにしておけば良かったと。
やはり彼は正しかったのだ。どうして自分で勝手に決めつけて暴走してしまったのだろう。ゴルドーは悔やんでも悔やみきれなかった。


「悪夢?これが?お前ぇ人の話聞いてたか?」


いつの間にか、ゴルドーの首元にスミレの手が伸びている。そしてギリギリと首を左手だけで締め付け、ゴルドーは苦しさのあまり悶絶した。
ゴルドーより遥かに細いはずのその腕を、彼は力づくで跳ね除けることが出来なかった。


「地獄を見せてやるって言っただろぉ?まだまだこんなん悪夢でもなんでもねぇから。これから起こることに比べればさ・・・」


悪魔のようなスミレの歪んだ表情を視界に捉えながら、ゴルドーは徐々に意識を失っていった。

(鬼なのは・・・ゴウキだけじゃねぇんじゃねぇか・・・)

調べが足りなかったなとゴルドーは悔やんだ。
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