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ゴウキ・ファミリー
スミレ その1
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気絶させたゴルドーを引きずりながら、スミレはふと以前のことを思い出す。
スミレは東の国からやってきた留学生だった。家名はモチヅキ。
彼女は冒険者多きバルジ王国でも「究極の斥候職」と呼ばれるほどの高ランクジョブである『忍者』というジョブについている。
スミレは世界中の冒険者が集うバルジ王国の王立学園に留学することによって、将来有益となりそうな人間との交流による人脈作りに精を出しつつ、また可能な限り国の内情を偵察するのを目的として実家より送られてバルジ王国にやってきた。
王立学園の留学生となるからには厳しい試験をパスする必要があるが、祖国でも稀代の天才と呼ばれるほど優秀なスミレはどうということなくこれをパス。授業についても優秀な成績を収めていた。
スミレは学園を卒業後は親の決めた婚約相手との婚姻が待っていた。そして速やかに子を為すことが責務とされている。
学園を卒業したら、天才忍者と呼ばれただけの技量を生かす機会がやってくることはない。愛情も何もない相手との子を為し、育てるだけの人生となる。
「はぁ・・・」
あの日、誰もいないと思っていた学園の校舎裏で壁に取り寄りかかりながら、他人に悟られないくらい小さく小さく溜め息をついた。
幼少より親から何度も言い聞かせられ、自分でも納得していたはずの人生設計について、ふと疑問を抱いたが故に思わず出ていた溜め息だった。
学園では成績優秀であったし、天才忍者として知られていたスミレは完璧でなければならない。だから溜め息一つとて迂闊に他人に見せてはならないはずだった。
だが、そのときのスミレは珍しく失念していたのだろうか、それともそれに気が付いた者が特殊だったのか。
「どうした?元気なさそうだな」
スミレは唐突に声をかけられ、表情にこそ出さなかったが驚愕した。
話しかけられる気配を感じ取れなかったわけではない。「元気がない」という状態を見破られたことへの驚愕だった。完璧な忍者たるスミレは「元気がない」などという弱みを他人に見せるべからずと考えている。実際に心の内を読まれないために表情に出さないことを心掛け、実践してきた。
何の気なしに言っただけかもしれない。それでも一瞬とはいえ、心を見透かされるという失態を犯してしまったかとスミレは僅かに焦りを感じていた。
「え?そんなことはないけど」
だから、そのときスミレはそう言って笑って誤魔化した。
良く笑い、元気でいること、人と仲良くするために有効なことだった。このときも彼女はそれを実践した。
「そうか?いつも元気無さそうに見えたからつい、な」
そう言い、少し心配そうな顔をして見せたのがゴウキだった。初めてスミレの内心を見透かした男の存在に、スミレが内心驚く。
これがゴウキとスミレが知り合うきっかけとなった。
スミレは東の国からやってきた留学生だった。家名はモチヅキ。
彼女は冒険者多きバルジ王国でも「究極の斥候職」と呼ばれるほどの高ランクジョブである『忍者』というジョブについている。
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王立学園の留学生となるからには厳しい試験をパスする必要があるが、祖国でも稀代の天才と呼ばれるほど優秀なスミレはどうということなくこれをパス。授業についても優秀な成績を収めていた。
スミレは学園を卒業後は親の決めた婚約相手との婚姻が待っていた。そして速やかに子を為すことが責務とされている。
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「はぁ・・・」
あの日、誰もいないと思っていた学園の校舎裏で壁に取り寄りかかりながら、他人に悟られないくらい小さく小さく溜め息をついた。
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学園では成績優秀であったし、天才忍者として知られていたスミレは完璧でなければならない。だから溜め息一つとて迂闊に他人に見せてはならないはずだった。
だが、そのときのスミレは珍しく失念していたのだろうか、それともそれに気が付いた者が特殊だったのか。
「どうした?元気なさそうだな」
スミレは唐突に声をかけられ、表情にこそ出さなかったが驚愕した。
話しかけられる気配を感じ取れなかったわけではない。「元気がない」という状態を見破られたことへの驚愕だった。完璧な忍者たるスミレは「元気がない」などという弱みを他人に見せるべからずと考えている。実際に心の内を読まれないために表情に出さないことを心掛け、実践してきた。
何の気なしに言っただけかもしれない。それでも一瞬とはいえ、心を見透かされるという失態を犯してしまったかとスミレは僅かに焦りを感じていた。
「え?そんなことはないけど」
だから、そのときスミレはそう言って笑って誤魔化した。
良く笑い、元気でいること、人と仲良くするために有効なことだった。このときも彼女はそれを実践した。
「そうか?いつも元気無さそうに見えたからつい、な」
そう言い、少し心配そうな顔をして見せたのがゴウキだった。初めてスミレの内心を見透かした男の存在に、スミレが内心驚く。
これがゴウキとスミレが知り合うきっかけとなった。
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