166 / 508
ゴウキ・ファミリー
謎の不法占拠
しおりを挟む
「単なる不法占拠なら俺のところの兵隊を動かしてしまいさ。けど、今その物件を占拠しているのは複数の冒険者なんだ」
ディックの言葉を聞き、ゴウキは一瞬でピンと来た。
4区を歩いていた場に相応しくない冒険者風の人間達・・・もしかしたら彼らのことではないかと思ったのだ。
「ディックのところの兵隊で排除できないとすると、結構腕が立つのか」
「立つよ。B級には確実にランクインしている冒険者だと思う」
「B級が?」
B級冒険者となるとバルジ王国でも十分に成功していると言えるレベルの冒険者だ。
社会的信用も高いから銀行から金を借りるのもたやすく、家だって保証人なしで借りられるレベルだ。サボってさえいなければ収入だって悪くないはずである。
「B級なのに4区で不法占拠?」
不思議な話だ。
そんなことしなくても、もっとずっとマシなところに堂々と住めるはずの立場だ。
「B級ってのは実力からそうではないかとアタリをつけただけさ。実際の奴らの身元はまだわかっちゃいない。だが、強いのは確かだ。うちの兵隊じゃ全く手が出ない有様でね」
ディックは苦虫を噛み潰したような顔になる。
立ちはだかる者を力で押さえつけてなんぼのギャングとしてのプライドを傷つけられているのだろう。
「元は俺が縁あって安く買ったものなんだが、いつの間にか我が物顔で住みだしたんだ。それ以外に特にここで悪さをしている様子はないが、何にせよ舐められたまんまってのは嫌だったんだよな。だったら兄弟、あんたに快く手渡してやったほうがいい。どうだ?行ってくれるか?」
「・・・まずは話をしてみて、だな」
ディックは即座にでも力でねじ伏せて溜飲を下げたそうにしているが、それでもゴウキは十分に身を立てられるはずの冒険者が、不法占拠などという手段で居座っているというのが気になった。
円満に話をして出て行ってくれるならそれに越したことはない。まぁ、それで解決する可能性は限りなくゼロだろうが。
「話が出来るかねぇ・・・俺らが行ったときは話すら出来なかったぜ。近づいただけで威嚇された。俺の持ってる物件なのによ?おかしくないか?」
ディックは思い出しながらもイラついてきたのだろう。話ながら煙草をスパスパと吸い始めた・・・と思いきや、ちょっと吸ってすぐに灰皿で揉み消している。
「ま、とりあえずこれから行ってみるわ」
やるなら早いほうがいい。ゴウキはこの後すぐに物件まで行くつもりだった。
「すまねぇな兄弟。本当はついていきたいんだが、今日は女達と約束をしてるんだよ」
ディックは申し訳なさそうに小指を立ててそう言った。
「兄弟も女は大事にしろよ。入れ込み過ぎると身を亡ぼすが、それでも蔑ろにするのはいけねぇ。わかるよな?そういうのいるんだろ」
ゴウキはディックの言葉を否定しようとしたがやめた。
一応、頭に思い浮かぶ人がいないわけではないからだ。
「それとも女のことちょっと知っとくか?俺のところの店の女なら用意するぜ」
ディックの申し出に、ゴウキはほんの少し・・・ほんの少しだけ後ろ髪を引かれる思いをしながらも、丁重に断りを入れるのであった。
ディックの言葉を聞き、ゴウキは一瞬でピンと来た。
4区を歩いていた場に相応しくない冒険者風の人間達・・・もしかしたら彼らのことではないかと思ったのだ。
「ディックのところの兵隊で排除できないとすると、結構腕が立つのか」
「立つよ。B級には確実にランクインしている冒険者だと思う」
「B級が?」
B級冒険者となるとバルジ王国でも十分に成功していると言えるレベルの冒険者だ。
社会的信用も高いから銀行から金を借りるのもたやすく、家だって保証人なしで借りられるレベルだ。サボってさえいなければ収入だって悪くないはずである。
「B級なのに4区で不法占拠?」
不思議な話だ。
そんなことしなくても、もっとずっとマシなところに堂々と住めるはずの立場だ。
「B級ってのは実力からそうではないかとアタリをつけただけさ。実際の奴らの身元はまだわかっちゃいない。だが、強いのは確かだ。うちの兵隊じゃ全く手が出ない有様でね」
ディックは苦虫を噛み潰したような顔になる。
立ちはだかる者を力で押さえつけてなんぼのギャングとしてのプライドを傷つけられているのだろう。
「元は俺が縁あって安く買ったものなんだが、いつの間にか我が物顔で住みだしたんだ。それ以外に特にここで悪さをしている様子はないが、何にせよ舐められたまんまってのは嫌だったんだよな。だったら兄弟、あんたに快く手渡してやったほうがいい。どうだ?行ってくれるか?」
「・・・まずは話をしてみて、だな」
ディックは即座にでも力でねじ伏せて溜飲を下げたそうにしているが、それでもゴウキは十分に身を立てられるはずの冒険者が、不法占拠などという手段で居座っているというのが気になった。
円満に話をして出て行ってくれるならそれに越したことはない。まぁ、それで解決する可能性は限りなくゼロだろうが。
「話が出来るかねぇ・・・俺らが行ったときは話すら出来なかったぜ。近づいただけで威嚇された。俺の持ってる物件なのによ?おかしくないか?」
ディックは思い出しながらもイラついてきたのだろう。話ながら煙草をスパスパと吸い始めた・・・と思いきや、ちょっと吸ってすぐに灰皿で揉み消している。
「ま、とりあえずこれから行ってみるわ」
やるなら早いほうがいい。ゴウキはこの後すぐに物件まで行くつもりだった。
「すまねぇな兄弟。本当はついていきたいんだが、今日は女達と約束をしてるんだよ」
ディックは申し訳なさそうに小指を立ててそう言った。
「兄弟も女は大事にしろよ。入れ込み過ぎると身を亡ぼすが、それでも蔑ろにするのはいけねぇ。わかるよな?そういうのいるんだろ」
ゴウキはディックの言葉を否定しようとしたがやめた。
一応、頭に思い浮かぶ人がいないわけではないからだ。
「それとも女のことちょっと知っとくか?俺のところの店の女なら用意するぜ」
ディックの申し出に、ゴウキはほんの少し・・・ほんの少しだけ後ろ髪を引かれる思いをしながらも、丁重に断りを入れるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
親友に恋人を奪われた俺は、姉の様に思っていた親友の父親の後妻を貰う事にしました。傷ついた二人の恋愛物語
石のやっさん
恋愛
同世代の輪から浮いていた和也は、村の権力者の息子正一より、とうとう、その輪のなから外されてしまった。幼馴染もかっての婚約者芽瑠も全員正一の物ので、そこに居場所が無いと悟った和也はそれを受け入れる事にした。
本来なら絶望的な状況の筈だが……和也の顔は笑っていた。
『勇者からの追放物』を書く時にに集めた資料を基に異世界でなくどこかの日本にありそうな架空な場所での物語を書いてみました。
「25周年アニバーサリーカップ」出展にあたり 主人公の年齢を25歳 ヒロインの年齢を30歳にしました。
カクヨムでカクヨムコン10に応募して中間突破した作品を加筆修正した作品です。
大きく物語は変わりませんが、所々、加筆修正が入ります。
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる