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ゴウキ・ファミリー
外交非礼
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「ようこそおいでくださいました。こちらへどうぞ」
目的地である北の国境付近に到着したクレア達を出迎えたのは、やつれた顔をした騎士だった。
鎧も服も薄汚れており、戦況が決して楽観視できるような状態ではないことが見て取れる。
クレア達は騎士の誘導に従って本陣のテントまで歩くが、道中は怪我をした騎士がそこら中におり、布に包まれた死体と思わしきものも多く見た。
「・・・・・・」
クレア達も案内役の騎士も、誰も声を出さなかった。
リフトでさえも周囲に広がっている地獄絵図に軽口が出ず、押し黙っている。これがこれから自分達が踏み込むことになる戦場なのだと、ここに来てようやく実感が湧いてきたのだ。
「勇者様御一行をお連れしました!」
騎士団の本陣のテントに来ると、そこには何人かの騎士がいた。彼らはクレア達を見て、安堵したような表情を見せる。
「おぉ、貴方が陛下が送ってこられた勇者様ですか!私がこの現場の指揮を執っておりますギリアムです」
一人の騎士が前に出て、喜色の表情を浮かべる。
ギリアムと名乗った騎士は、歳は30代後半くらいのようだが、戦疲れでやつれているのか随分と老け込んで見えた。自分達が来たことで彼らが少しでも元気づいたのなら、それは幸いなことだ、来て良かったとクレアは思う。
「ギリアム殿ですか。私はリフト・アウナス・・・我々が来たからにはもう大丈夫です」
「おお!なんと心強い・・・!」
横からリフトがでしゃばる。ギリアムは気にした様子もなく、リフトの言葉に笑みを浮かべていた。ちょっとした無礼も気にならないくらい、ギリアムは疲弊していた。
だが、次のリフトの言葉を聞いて、戦慄することになる。
「ところで、今回の戦は正体不明の魔物の襲撃ということで伺っているのですが、実際のところはディンコクからの侵略なのですよね」
領土問題で揉めている隣国からの侵略と決めてかかっていたリフトは、もうそれで確定だろうという態度でそう言った。一瞬にして場が凍り付いた。
「これまでだって何度もそう言う報告が上がってきた事がありましたが、実際はディンコクの侵略軍との戦いだった。今回もそうなのでしょう?」
「リフト!黙りなさい!」
クレアはリフトの肩を掴む。
極寒の辺境まで王命で来させられて、ストレスも溜まっていたリフトは敵の正体を勿体ぶらされるのが我慢できずに、つい自分から切り出してしまった。どうせ答えはリフトの言った通り・・・のはずだった。
「アウナスさん、貴方は間違えています。非常に愚かな早合点だ」
「なに?」
先ほどまで笑みを浮かべていたギリアムは、くだらない愚か者を見るような目でリフトを見ていた。周囲にいる他の騎士も同様だ。
「報告の通りなのです。我々が今戦っているのは、正体不明の魔物なのです。断じてディンコクの兵士などでは
ありません」
「・・・は?」
唖然とするリフトを無視し、ギリアムは近くにいた自分と違うタイプの鎧を着ている騎士に向かって頭を下げた。
「申し訳ありません!このような無礼を・・・」
「いえ、今はそれについて揉めている場合ではありません。お気になさらず」
「本当に申し訳ありません。そう言っていただけると・・・」
ギリアムと騎士のやり取りを見つめているクレア達の方に、再度ギリアムは向き直る。
「こちらはディンコク国境警備隊の隊長を務めていらっしゃいます、グリード様です。我々は今、共同戦線を張って未知の魔物と戦闘しているところなのです」
ギリアムに紹介された騎士が頭を下げる。
クレア達の頭から血の気が引いた。
「リフト殿。早合点とはいえ、この非常事態にとんでもない外交非礼です。この事は陛下に報告させていただきますよ」
目的地である北の国境付近に到着したクレア達を出迎えたのは、やつれた顔をした騎士だった。
鎧も服も薄汚れており、戦況が決して楽観視できるような状態ではないことが見て取れる。
クレア達は騎士の誘導に従って本陣のテントまで歩くが、道中は怪我をした騎士がそこら中におり、布に包まれた死体と思わしきものも多く見た。
「・・・・・・」
クレア達も案内役の騎士も、誰も声を出さなかった。
リフトでさえも周囲に広がっている地獄絵図に軽口が出ず、押し黙っている。これがこれから自分達が踏み込むことになる戦場なのだと、ここに来てようやく実感が湧いてきたのだ。
「勇者様御一行をお連れしました!」
騎士団の本陣のテントに来ると、そこには何人かの騎士がいた。彼らはクレア達を見て、安堵したような表情を見せる。
「おぉ、貴方が陛下が送ってこられた勇者様ですか!私がこの現場の指揮を執っておりますギリアムです」
一人の騎士が前に出て、喜色の表情を浮かべる。
ギリアムと名乗った騎士は、歳は30代後半くらいのようだが、戦疲れでやつれているのか随分と老け込んで見えた。自分達が来たことで彼らが少しでも元気づいたのなら、それは幸いなことだ、来て良かったとクレアは思う。
「ギリアム殿ですか。私はリフト・アウナス・・・我々が来たからにはもう大丈夫です」
「おお!なんと心強い・・・!」
横からリフトがでしゃばる。ギリアムは気にした様子もなく、リフトの言葉に笑みを浮かべていた。ちょっとした無礼も気にならないくらい、ギリアムは疲弊していた。
だが、次のリフトの言葉を聞いて、戦慄することになる。
「ところで、今回の戦は正体不明の魔物の襲撃ということで伺っているのですが、実際のところはディンコクからの侵略なのですよね」
領土問題で揉めている隣国からの侵略と決めてかかっていたリフトは、もうそれで確定だろうという態度でそう言った。一瞬にして場が凍り付いた。
「これまでだって何度もそう言う報告が上がってきた事がありましたが、実際はディンコクの侵略軍との戦いだった。今回もそうなのでしょう?」
「リフト!黙りなさい!」
クレアはリフトの肩を掴む。
極寒の辺境まで王命で来させられて、ストレスも溜まっていたリフトは敵の正体を勿体ぶらされるのが我慢できずに、つい自分から切り出してしまった。どうせ答えはリフトの言った通り・・・のはずだった。
「アウナスさん、貴方は間違えています。非常に愚かな早合点だ」
「なに?」
先ほどまで笑みを浮かべていたギリアムは、くだらない愚か者を見るような目でリフトを見ていた。周囲にいる他の騎士も同様だ。
「報告の通りなのです。我々が今戦っているのは、正体不明の魔物なのです。断じてディンコクの兵士などでは
ありません」
「・・・は?」
唖然とするリフトを無視し、ギリアムは近くにいた自分と違うタイプの鎧を着ている騎士に向かって頭を下げた。
「申し訳ありません!このような無礼を・・・」
「いえ、今はそれについて揉めている場合ではありません。お気になさらず」
「本当に申し訳ありません。そう言っていただけると・・・」
ギリアムと騎士のやり取りを見つめているクレア達の方に、再度ギリアムは向き直る。
「こちらはディンコク国境警備隊の隊長を務めていらっしゃいます、グリード様です。我々は今、共同戦線を張って未知の魔物と戦闘しているところなのです」
ギリアムに紹介された騎士が頭を下げる。
クレア達の頭から血の気が引いた。
「リフト殿。早合点とはいえ、この非常事態にとんでもない外交非礼です。この事は陛下に報告させていただきますよ」
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