『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

文字の大きさ
194 / 508
ゴウキ・ファミリー

そこまで弱くはありませんよ?

しおりを挟む
ゴウキ達と後からついてくる新聞記者ドミンゴがクリスタルダンジョンに潜った。
スミレが黒鉄のダンジョンのときのように先行するが、ややもしないうちにダンジョンの魔物クリスタルウルフ数匹と遭遇。戦闘に突入した。



・・・が、スミレの爆薬付きクナイで一体が爆破され、ゴウキの拳で更に一体が粉砕、そしてデニスの刀によって最後の一体がバラバラになったことで、戦闘そのものは十秒も立たずに終了した。


「え・・・?」


後方から戦いの様子を伺っていたドミンゴは、唖然として目をぱちくりさせた。

ドミンゴは取材するにあたって今回潜ることになるダンジョンについて調べていた。そこで出現する魔物がどの程度の実力なのか、それを把握しておかないと自分の身を守りながら取材することが難しくなるからだ。
クリスタルウルフは体がクリスタルで構成されて刃物が通りづらい上に、動きは野生のオオカミよりも俊敏で、ヒットアンドアウェイを駆使しながら得物を弱らせて仕留めてくるという、近接戦を得意とするパーティーとは相性の悪い魔物だったはずだった。熟練した冒険者でも、ふとした油断から命を奪われることもあるという。

ゴウキ達はリノアを除き、基本的には接近戦主体のパーティーのはずだった。スミレに至っては基本的に斥候だ。
だが、後衛のリノアが黒魔法を使うことなく、ゴウキ達はクリスタルウルフを接近戦で瞬殺してみせた。


「つ、強い・・・」


ドミンゴは冒険者ではない。だが、何度か冒険者達の戦闘に張り付いて取材をしたことがあった。中にはS級ランクの冒険者の取材もあったが、ドミンゴは今回の一度の戦闘ではっきりと理解した。ゴウキ達はこれまで自分が取材してきたどの冒険者よりも強い、と。


(これは・・・凄いものが見られるかもしれない)


ドミンゴは唾をごくりと飲み込んだ。


しかし、そんなドミンゴとは別に釈然としない表情をゴウキは浮かべていた。


「・・・別に敵は前と比べて強くなったわけじゃねぇな」


自分の拳によって粉々に砕け散ったクリスタルウルフの破片を呆然と見下ろしながら、ゴウキは呟いた。


「そりゃ勇者様が弱かったんじゃね?」


呆れたようにスミレが言う。
スミレ自身もゴウキがあまりに警戒するので釣られて警戒していたが、あまりにあっけないので少しばかり落胆していた。


「本命はクリスタルゴーレムだろう・・・?そいつが強いんじゃないか?」


デニスは納刀しながら、それでも少しばかり落胆の色を隠せない顔で言った。強敵に出会えると思ったら肩透かしだった・・・そういった不満がデニスからも感じられ、ゴウキは首を傾げた。


「クリスタルゴーレムな・・・突然変異でそいつだけ強くなったんかな・・・」


クリスタルウルフのあまりの手ごたえの無さに落胆しているゴウキ・ファミリーの面々を見て、ドミンゴは開いた口が塞がらなかった。


(その魔物・・・そこまで弱くありませんよ!?)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

親友に恋人を奪われた俺は、姉の様に思っていた親友の父親の後妻を貰う事にしました。傷ついた二人の恋愛物語

石のやっさん
恋愛
同世代の輪から浮いていた和也は、村の権力者の息子正一より、とうとう、その輪のなから外されてしまった。幼馴染もかっての婚約者芽瑠も全員正一の物ので、そこに居場所が無いと悟った和也はそれを受け入れる事にした。 本来なら絶望的な状況の筈だが……和也の顔は笑っていた。 『勇者からの追放物』を書く時にに集めた資料を基に異世界でなくどこかの日本にありそうな架空な場所での物語を書いてみました。 「25周年アニバーサリーカップ」出展にあたり 主人公の年齢を25歳 ヒロインの年齢を30歳にしました。 カクヨムでカクヨムコン10に応募して中間突破した作品を加筆修正した作品です。 大きく物語は変わりませんが、所々、加筆修正が入ります。

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

処理中です...