383 / 508
ゴウキ・ファミリー
冒険者からリーダーへ
しおりを挟む
少し時は遡り、スミレ達とクレアが乱闘騒ぎを起こしたときのことだった。
「・・・あん?」
第4区にある河川敷で、舎弟たちの訓練を監督していたゴウキは、微かに聞こえた爆発音に反応した。
「アニキ、どうかしたんですか?」
「いや、どこかで爆発したような音がした」
「えぇ?そんなの聞こえましたか?全然わかりませんよ」
ゴウキの耳は常人より鋭い。それこそ針が落ちる音でもわかりそうなものである。
そんなゴウキは遠く離れた地でリノアとクレアの魔法の衝突による爆発の音を僅かだが聞き取っていたのだ。
「そりゃここは王都ですからね。冒険者同士の諍いなんて四六時中ありますよ。魔法使い同士が喧嘩したとかじゃないんですか?」
「ん~、そうかぁ?」
「それよりもアニキ、今度は俺達の番ですよ。見ていてくださいよ!」
釈然としないゴウキだが、結局は舎弟たちの言葉に頷き、爆発音については一旦意識の隅に追いやることにした。
ゴウキはゴウキ・ファミリーに属している舎弟たちの訓練を監督している。
ゴウキの強さに憧れる舎弟たちにせがまれたからだった。ゴウキの力は訓練によって作り上げられたものではない。ただただスラム街での喧嘩で培われた勘と、元からの才能により構成された強さだった。
だが、スミレから見てどうしようもない駄目人間と評された舎弟たちが、自らの力不足を嘆き訓練して力を付けたいと言い出したこと自体には感心したゴウキは、特に何が出来るわけでもないが舎弟たちの言われるがままに訓練を監督していた。
なんだかんだでゴウキは面倒見が良いのだ。
「おぅ、お前は瞬発力はあるが、どうにもこうにもスタミナが足りてねぇ。こういうときは走り込みだっけか?ちょっとしばらく走って来い」
「はいっ!」
「お前は随分大き目の剣持ってるけど、まだお前の筋力に見合ってねぇと思うぞ。とりあえずもうちょっと小さいのに当面は得物を変えたらどうだ?」
「は、はい・・・ちょっと武器屋見てきます・・・」
煙草を咥えたまま訓練風景を眺めるゴウキは、自分なりに思うことを口にしてアドバイスをした。
最初こそ「何で俺こんなことを」とぼやいていたが、しかし人が地位を築き、地位が人を築くと言うように、ゴウキ・ファミリーのリーダーとして舎弟たちを率いるうちに、なんだかんだで彼らの面倒を見る日常にも馴染んでいる。
ゴウキはいつしかいち冒険者ではなく、ゴウキ・ファミリーという集団のトップとしての自覚が芽生えていた。
「・・・あん?」
第4区にある河川敷で、舎弟たちの訓練を監督していたゴウキは、微かに聞こえた爆発音に反応した。
「アニキ、どうかしたんですか?」
「いや、どこかで爆発したような音がした」
「えぇ?そんなの聞こえましたか?全然わかりませんよ」
ゴウキの耳は常人より鋭い。それこそ針が落ちる音でもわかりそうなものである。
そんなゴウキは遠く離れた地でリノアとクレアの魔法の衝突による爆発の音を僅かだが聞き取っていたのだ。
「そりゃここは王都ですからね。冒険者同士の諍いなんて四六時中ありますよ。魔法使い同士が喧嘩したとかじゃないんですか?」
「ん~、そうかぁ?」
「それよりもアニキ、今度は俺達の番ですよ。見ていてくださいよ!」
釈然としないゴウキだが、結局は舎弟たちの言葉に頷き、爆発音については一旦意識の隅に追いやることにした。
ゴウキはゴウキ・ファミリーに属している舎弟たちの訓練を監督している。
ゴウキの強さに憧れる舎弟たちにせがまれたからだった。ゴウキの力は訓練によって作り上げられたものではない。ただただスラム街での喧嘩で培われた勘と、元からの才能により構成された強さだった。
だが、スミレから見てどうしようもない駄目人間と評された舎弟たちが、自らの力不足を嘆き訓練して力を付けたいと言い出したこと自体には感心したゴウキは、特に何が出来るわけでもないが舎弟たちの言われるがままに訓練を監督していた。
なんだかんだでゴウキは面倒見が良いのだ。
「おぅ、お前は瞬発力はあるが、どうにもこうにもスタミナが足りてねぇ。こういうときは走り込みだっけか?ちょっとしばらく走って来い」
「はいっ!」
「お前は随分大き目の剣持ってるけど、まだお前の筋力に見合ってねぇと思うぞ。とりあえずもうちょっと小さいのに当面は得物を変えたらどうだ?」
「は、はい・・・ちょっと武器屋見てきます・・・」
煙草を咥えたまま訓練風景を眺めるゴウキは、自分なりに思うことを口にしてアドバイスをした。
最初こそ「何で俺こんなことを」とぼやいていたが、しかし人が地位を築き、地位が人を築くと言うように、ゴウキ・ファミリーのリーダーとして舎弟たちを率いるうちに、なんだかんだで彼らの面倒を見る日常にも馴染んでいる。
ゴウキはいつしかいち冒険者ではなく、ゴウキ・ファミリーという集団のトップとしての自覚が芽生えていた。
0
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる