『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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忍者スミレ

狙われるゴウキ

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「思いの外、すんなり大掃除をすることが出来ましたな」


モチヅキ家の家令が、書斎で二人きりでいるときに当主シンゾウに言った。


「滅多なことを言うな。あれは勝手に奴らが自滅しただけのこと。まぁ、まさかここまでとは思わなかったがな」


シンゾウは家令を諫めつつも、口角を上げてそう答える。


「そうですね。勝手にバルジに渡り、失敗して帰って来たところを徐々に失脚するように持っていくつもりが、何段飛びかでいきなり全滅ですからね。流石にこれは予想だにしませんでした」


シンゾウと家令が言っているのは、サスケや十勇士達のことだ。
二人は当主を差し置いて存在感を示しつつあった彼らの失脚を虎視眈々と狙っており、バルジ王国へ渡ることを実質的に黙認したのも、向こうでの彼らの失敗を期待してのことである。

そして結果は知っての通り失敗どころか大大大失敗。
そもそも十勇士がほぼ全滅で、残る一人も精神的に障害が残るという凄惨たる有様だ。失脚以前にむしろ物理的に十勇士の席が空いてしまった。


「奴らは威勢はいいが、外の世界を知らん。いつまでも忍者の力というものを過信しておる」


サスケを始めとした、十勇士の急進派はシンゾウの言うように忍者の力を過信していた。忍者の忍術は世界に通じ、どの国でも十分に活躍が出来ると考えていた。
事実、バルジ王国へ出たスミレも一流の冒険者にあっと言う間に上り詰めることが出来た・・・が、里で天才と言われたスミレでさえ、暴走したクレアを抑えつけることは出来なかった。それどころか命の危機が迫るところまで追い詰められたのだ。

世界は広い。
かつてシンゾウも外の世界で現実を知った。忍者は確かに優秀な隠密職として活躍できるかもしれない。だが、あくまで上には上がいるということを弁えねばならないとシンゾウは考えるようになった。
自分達忍者が今すべきは、外の世界のことを学び、より術や薬学を昇華させるところにあるのだと確信していたのだ。

サスケや十勇士は外の世界のことを知らな過ぎた。そして忍者を外の世界へ売り出そうと躍起になっていた。モチヅキ家の重鎮である十勇士達をサスケが巻き込んだところで、シンゾウは彼らの処遇にほとほと困り果てていたのだ。

サスケは家同士の約束で結ばれたスミレの許嫁であり、十勇士はモチヅキ家の重鎮達。
いかに当主といえど、彼らの意向を無碍にし続ければ、いずれモチヅキ家は転覆させられるかもしれない・・・


だからこそ、スミレを連れ戻すと行き急いだサスケ達の自滅はシンゾウにとって朗報だった。
何しろモチヅキに巣くう危険分子がいなくなったうえに、サスケのことも向こうの有責で追い出すことが出来たのだから。


「それにしてもゴウキか・・・ なぁ、我が家の跡取りは、そのゴウキとスミレの子になんぞ任せることは出来ないのかな」


シンゾウはゴウキに興味を持った。
思いつきで言った言葉であるが、しかしそれを聞いた家令は深く頷くと


「とても良いお考えだと思います」


と答え、シンゾウの意向は決まった。


「戻って継がなくても良いから、せめてゴウキとの子をこちらに将来回してくれと言ってみるか」
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