『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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賢者リノア

リノアを盲信したトマス

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「おかしい・・・」


待てど暮らせど手紙が来ないことに、流石にトマスも焦燥感を覚えた。
手紙には他愛の無い近況報告だけでなく、村に帰ったらのことなど大事なことについても書いて送っているのだから、読んでいるのなら何かしら返事が来て然るべきだった。

しかし、トマスが送った手紙は一通も返事が来ず、完全になしのつぶてになっている現状に、トマスは戸惑いを覚える。


「何かあったのだろうか・・・」


トマスがリノアを袖にしてから、既に数年が経過していた。
トマスはまだ卒業までに期間があるので学生であったが、既にリノアは卒業して表向きは一介の白魔法士の冒険者として身を立てている。
リノアは村に帰ろうなどとは露ほども考えておらず、最初にトマスと立てた約束も完全に無かったことになっている。現段階で完全にトマスとリノアは違う道を歩んでいるのだ。

だが、それをトマスは理解していなかった。
リノアはいつまで経っても昔のリノアのままで、自分だけしか気の許せる相手がおらず、どれだけ素っ気なくしても最後は自分を待っていてくれている・・・愚かにもトマスは本気でそう信じていたのである。
村を出てトマスが変わったように、リノアもまた蛹から蝶へと変わったなどとは考えが及ばなかった。

トマスは日々悶々としながらも学業に勤しんだ。
リノアに対しての扱いは随分と変わってしまったが、それでも魔法学を身に着けたいという意志だけは本物だったからだ。
村に戻って起業しなくとも、魔道具開発者として身を立てることくらいのスキルは身に着けていたのだ。
だからリノアさえその気なら、学校を中退してすぐにでも村に戻り、結婚し、起業することも選択肢に入っていた。

そう、リノアさえその気なら。



「リノア、どうして返事をくれないんだ」


トマスは身勝手にもリノアからの返事を待ちわびた。リノアには自分しかいないと盲信していたからだ。
勇み足で実家には「婚約者がいるので紹介する」という手紙まで送ってしまったトマスは、リノアからの返事が来なければ動けないでいたのだ。


そうして日々を無駄に過ごしていたある日、トマスはふと見かけた新聞で驚愕の事実を知った。


「これはリノア!?・・・ぼ、冒険者だって!?」


王都で新進気鋭の冒険者パーティー『ゴウキ・ファミリー』のリーダーであるゴウキに恋人か?などと言った見出しで掲載された、リノアの写真を見てトマスは新聞を持つ手を震わせ、人目もはばからず叫んでいた。
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