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賢者リノア
最後の情
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「やぁ、リノア」
門の前で待っていたトマスは、笑顔でそう挨拶した。
ついさっきこれでもかと言う程に拒絶した相手だっただけに、流石にリノアも内心微妙なところがあったが、それでもそれを表に出すことなく接した。
「一体何の用?」
もう話すことはない、と言わんばかりにリノアはドライな対応をする。
実際これ以上関わって来られても迷惑であるし、既にトマスはリノアにとって幼馴染枠の中でも『関わりたくない』という最下層に近いところまで好感度が落ちている。それを口に出すことまではしたくなかったが、あまりにしつこいようなら態度でそれを理解してもらうしかないと考えていた。
「今までごめんねリノア。心配しなくてもこれ以上はもう関わらない。僕はこれから王都を離れようかと思って、最後の挨拶に来たんだ」
「・・・え?」
思いもがけないトマスの発言に、リノアはキョトンとした。
確かにこれ以上ないほどに打ちのめした後とはいえ、こうもあっさり引き下がり、なおかつ王都から離れることにするとは意外も意外だった。
トマスは一度こうと決めたことには執着する性格であり、それを幼馴染で距離の近かったリノアも把握していた。その性格故か、学生としての成績も優秀だった。
「これからリノアは更なる高みに上がるんだろう?もう僕とは違う世界の住人になるし、会えることもないだろうと思う。だから、どうかお願いだから最後に幼馴染として話だけさせてくれないか?二人だけで」
そう言うトマスの表情は憑き物が落ちたかのようにスッキリしており、もうリノアへの執着は無いように見えた。
リノアは考えた。
トマスは王都で犯罪を犯している可能性がある。いずれ捜査の手が及べば捕まることになるだろう。トマスが王都を離れるのは、それを察知してのことかもしれないと。
「どうかな?すぐそこで歩きながらで良いんだ」
「・・・いいよ、わかった。そこで歩きながらで良いなら」
リノアに中にあったほんの少し残っていたトマスに対する幼馴染としての情が、トマスの提案を受け入れさせた。
トマスの術中にハマっていると知らずに、である。
門の前で待っていたトマスは、笑顔でそう挨拶した。
ついさっきこれでもかと言う程に拒絶した相手だっただけに、流石にリノアも内心微妙なところがあったが、それでもそれを表に出すことなく接した。
「一体何の用?」
もう話すことはない、と言わんばかりにリノアはドライな対応をする。
実際これ以上関わって来られても迷惑であるし、既にトマスはリノアにとって幼馴染枠の中でも『関わりたくない』という最下層に近いところまで好感度が落ちている。それを口に出すことまではしたくなかったが、あまりにしつこいようなら態度でそれを理解してもらうしかないと考えていた。
「今までごめんねリノア。心配しなくてもこれ以上はもう関わらない。僕はこれから王都を離れようかと思って、最後の挨拶に来たんだ」
「・・・え?」
思いもがけないトマスの発言に、リノアはキョトンとした。
確かにこれ以上ないほどに打ちのめした後とはいえ、こうもあっさり引き下がり、なおかつ王都から離れることにするとは意外も意外だった。
トマスは一度こうと決めたことには執着する性格であり、それを幼馴染で距離の近かったリノアも把握していた。その性格故か、学生としての成績も優秀だった。
「これからリノアは更なる高みに上がるんだろう?もう僕とは違う世界の住人になるし、会えることもないだろうと思う。だから、どうかお願いだから最後に幼馴染として話だけさせてくれないか?二人だけで」
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リノアは考えた。
トマスは王都で犯罪を犯している可能性がある。いずれ捜査の手が及べば捕まることになるだろう。トマスが王都を離れるのは、それを察知してのことかもしれないと。
「どうかな?すぐそこで歩きながらで良いんだ」
「・・・いいよ、わかった。そこで歩きながらで良いなら」
リノアに中にあったほんの少し残っていたトマスに対する幼馴染としての情が、トマスの提案を受け入れさせた。
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