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賢者リノア
出来ること、やりたいこと
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「ここ・・・この建物から匂いがしますね」
リノアの匂いを辿り、ひたすら休憩の間もほとんど与えられずにいたジョルジュは、追跡を開始してから2日でようやく捜索対象であるリノアの居所までゴウキ達を連れて来ることが出来た。
「ここか」
ゴウキ達が目の当たりにしているのは、貴族の元別荘と思わしき建物だった。
規模こそでかいが、手入れがされていないのか庭の草は伸び放題で、屋敷にも蔦が絡まっている。数年は人が寄り付いていないのがわかった。
「・・・確かに、最近人が出入りした形跡があるな」
屋敷とそれに続く道を睨みながらスミレが言う。
僅かにある足跡、草の倒れ・・・それらを見て、スミレは人がいなさそうなこの屋敷に何者かが出入りしていると確信した。
「リノアがいるなら・・・早く助け出そう」
デニスが刀に手を添えながら言った。
物言いは落ち着いているが、その目には静かな怒りを湛えている。
「落ち着けよ。罠があるかもしれねーだろ?だから・・・」
まずは罠があるかを調べてから・・・そう言おうとしたスミレだったが、ゴウキはそれを聞き終える前に既に歩き始めていた。
「罠だろうと関係ねぇ。俺は行くぜ」
トマスに対して・・・何より不甲斐ない自分に対して憤慨しているゴウキは、完全に頭に血が上っているのか罠があろうと関係なく突っ込む気満々だった。
どんな罠があろうと、力づくで突破すれば良い。死ななければ良いだけだーー それよりも、一分一秒でも早くリノアの元に辿り着かねば・・・そうゴウキは考えている。
「はぁ・・・」
言葉通り、本当にそのまま歩いていきそうなゴウキの前に、スミレは溜め息をつきながら立ちはだかった。
「悪いが退いてくれスミレ」
僅かに苛立ちを紛らせながら、静かにゴウキは言った。
「退かねぇよ・・・ボケ!」
バキッ
スミレは返事をしながら・・・次の瞬間にはゴウキの顔面に拳を叩きこんでいた。
ゴウキは口から血を流しながら呆然とし、デニスとジョルジュも目を見開いて固まっている。
「頭に来てんのはゴウキ、お前だけじゃねぇんだよ。アタシもだ。アタシだって馬鹿男に好きなようにさせちまった不甲斐ない自分に頭に来てんだ。だからアタシだって自分に出来ることはやりてぇんだ。お前だけがやりたいようにやって良い状況じゃねぇんだよ」
スミレの言葉を聞いて、ゴウキはハッとした。
リノアを助けたくて仕方がないのは、ゴウキだけではないのだと。
ゴウキが拳を振るうのが彼なりの戦いなら、スミレは罠を調べ上げ、より安全にリノアの元に辿り着けるようにするのが彼女なりの戦いなのだ。
「すまねぇ・・・スミレ」
ゴウキは自分を恥じて謝罪する。
スミレはそれに「おぅ」とだけ答え、踵を返し屋敷の方へゆっくりと歩き出した。
ゴウキ達によるリノアの救出が今、始まろうとしている。
リノアの匂いを辿り、ひたすら休憩の間もほとんど与えられずにいたジョルジュは、追跡を開始してから2日でようやく捜索対象であるリノアの居所までゴウキ達を連れて来ることが出来た。
「ここか」
ゴウキ達が目の当たりにしているのは、貴族の元別荘と思わしき建物だった。
規模こそでかいが、手入れがされていないのか庭の草は伸び放題で、屋敷にも蔦が絡まっている。数年は人が寄り付いていないのがわかった。
「・・・確かに、最近人が出入りした形跡があるな」
屋敷とそれに続く道を睨みながらスミレが言う。
僅かにある足跡、草の倒れ・・・それらを見て、スミレは人がいなさそうなこの屋敷に何者かが出入りしていると確信した。
「リノアがいるなら・・・早く助け出そう」
デニスが刀に手を添えながら言った。
物言いは落ち着いているが、その目には静かな怒りを湛えている。
「落ち着けよ。罠があるかもしれねーだろ?だから・・・」
まずは罠があるかを調べてから・・・そう言おうとしたスミレだったが、ゴウキはそれを聞き終える前に既に歩き始めていた。
「罠だろうと関係ねぇ。俺は行くぜ」
トマスに対して・・・何より不甲斐ない自分に対して憤慨しているゴウキは、完全に頭に血が上っているのか罠があろうと関係なく突っ込む気満々だった。
どんな罠があろうと、力づくで突破すれば良い。死ななければ良いだけだーー それよりも、一分一秒でも早くリノアの元に辿り着かねば・・・そうゴウキは考えている。
「はぁ・・・」
言葉通り、本当にそのまま歩いていきそうなゴウキの前に、スミレは溜め息をつきながら立ちはだかった。
「悪いが退いてくれスミレ」
僅かに苛立ちを紛らせながら、静かにゴウキは言った。
「退かねぇよ・・・ボケ!」
バキッ
スミレは返事をしながら・・・次の瞬間にはゴウキの顔面に拳を叩きこんでいた。
ゴウキは口から血を流しながら呆然とし、デニスとジョルジュも目を見開いて固まっている。
「頭に来てんのはゴウキ、お前だけじゃねぇんだよ。アタシもだ。アタシだって馬鹿男に好きなようにさせちまった不甲斐ない自分に頭に来てんだ。だからアタシだって自分に出来ることはやりてぇんだ。お前だけがやりたいようにやって良い状況じゃねぇんだよ」
スミレの言葉を聞いて、ゴウキはハッとした。
リノアを助けたくて仕方がないのは、ゴウキだけではないのだと。
ゴウキが拳を振るうのが彼なりの戦いなら、スミレは罠を調べ上げ、より安全にリノアの元に辿り着けるようにするのが彼女なりの戦いなのだ。
「すまねぇ・・・スミレ」
ゴウキは自分を恥じて謝罪する。
スミレはそれに「おぅ」とだけ答え、踵を返し屋敷の方へゆっくりと歩き出した。
ゴウキ達によるリノアの救出が今、始まろうとしている。
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