『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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賢者リノア

衰弱

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リノアは軟禁された状態から脱することが出来ず、しばしトマスと過ごすことになってしまった。
だが、脱出を諦めたわけではない。何か手はないかと、リノアは隙を見逃すまいと常に神経を尖らせていた。

しかし、トマスの魔道具は実に良く出来ているらしく、彼の言う通りリノアは一切の魔力を練ることも出来ず、数時間経過しても糸口を掴めないでいた。


「リノアが賢者として成功したように、僕だって魔道具技術者としてはまずまずの成果を出してきたんだよ」


トマスは得意げにリノアに言った。リノアに自分に惚れ直させるためにあれこれとこれまでの自分の実績のアピールをする。

トマスは学生でありながら現役の技術者顔負けの知識と勘を持ち、既にいくつかの特許を取っていたのだった。
女で失敗しなければ、このような凶行に及ばなければ、間違いなくそれなりの人物になり、富を築けたに違い無かった。

何しろ賢者であるリノアを不意打ちとはいえ誘拐し、軟禁に成功しているのだから。
間違いなく、トマスは天才であり、話を聞いただけでリノアもそうであると感じた。

だが、その事実はリノアを惚れさすどころか、彼女を絶望させただけである。




「言っておくけど、ここにゴウキが助けに来たところで、返り討ちにするだけの準備はしてあるよ」



トマスの言葉に、リノアは言いようのない不安を感じた。
ゴウキは助けに来てくれる。
そしてトマスに負けることもない。

そう信じているが、このトマスには恐らく相手に対してかける情けや躊躇というものがない。
だがゴウキにはそれがある。
そこをトマスに突かれ、ゴウキが大怪我を負ったり、大変な目に遭ってしまうのではないか。

リノアは自分の現状も忘れ、ただそれを憂いていた。


トマスはリノアを惚れさせることは出来なかったが、代わりに恐怖心を植え付けることは出来た。
ハッキリ言えばこれまでリノアはトマスを舐めていた。それ故にトマスが何をしても対処できると思っていたし、それ相応の相手の仕方をすることもできた。

だが、無力化されて軟禁され時間が経過すると、リノアは精神的に衰弱し、徐々にだがトマスに対して屈服しそうになっていた。
自分さえ折れれば良い。そうすればゴウキ達にも迷惑はかからない。
そう考え始めるようになってしまっていたのだ。
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