『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

文字の大きさ
492 / 508
賢者リノア

騙す者、騙されない者

しおりを挟む
数発リノアを叩いたトマスは、ここでようやく我に返ったのか、今更ながら気まずそうに表情を曇らせた。


「す、すまないリノア・・・ついやり過ぎてしまった・・・後で回復アイテムを使うよ」


叩かれて顔を赤くし唇を切らしたリノアは、感情の無い瞳でトマスを見つめ返す。
そのあまりに冷たい視線に、トマスはグッと息を詰まらせるが、咎めるような目を向け言った。


「僕だってやり過ぎたとは思っているけど、聞き分けが悪いリノアが悪いんだよ」


他の男に抑えてもらいながら、一方的に暴力を振るっておいてトマスは自分は悪くないといった風だ。


(この男、癇癪持ちか。この嬢ちゃんが何も知らずこいつと結婚したとして、きっと思い通りに行かないとすぐ暴力振るわれる家庭になったんだろうな。どうあっても、こいつとは幸せな家庭とやらは築けなかったろう)


用心棒はトマスを見て、そんなことを考え少し同情的な視線をリノアに向ける。


「リノアを逃げ出せないように縛り上げてくれないか。僕はここをすぐに移動する」


トマスは用心棒にそう言うと、ハンガーにかけてあった外套を羽織った。


「移動する?」


用心棒は疑問に思った。
この屋敷とその周辺は、トマスの提案によってセントラルギルドが用意したゴウキの処刑場兼トマスの魔道具の実験場である。
計画の首謀者であるトマスがこの場を離れるということは、事実上ゴウキの抹殺作戦の中止を意味するようなものだった。

用心棒の疑問に答えるように、トマスは言った。


「別にここを放棄するわけじゃないよ。次の計画に移行するだけさ。すぐに戻ってくるから、気にしなくて良い。君は持ち場を離れないようにしてくれ」


「・・・」


用心棒は黙って聞いていたが、経験から何となくトマスに対して疑いを持っていた。
トマスは嘘を言っている。そう用心棒の勘が告げていたのだ。


「はい、わかりましたよ」


だが、用心棒はあくまでギルドの雇われだ。現場ではギルド職員だけでなく、トマスの言うことにも従うように言われている。
だから表面上はトマスに従い、頷いたのだった。


(・・・潮時かな。多分こいつ、終わるわ)


だが、内心用心棒はここでトマスとギルドに見切りをつけていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?

久野真一
青春
 2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。  同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。  社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、  実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。  それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。  「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。  僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。  亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。  あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。  そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。  そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。  夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。  とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。  これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。  そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

処理中です...