聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

反逆

二人の聖剣

聖女と聖騎士はワンセット。
聖女が聖騎士の使う聖剣を作り、聖騎士はそれを振るい、聖女を守る。
となると、二人に必要なのは絶対的な信頼と理解である。そうして強い絆を結ぶほどに、聖剣はより力を増すと言われているのだ。

そうなると、聖女と聖騎士の絆を深める手っ取り早い方法は「共同生活」であると昔の人は考えた。
聖騎士は聖女の護衛であり、いついかなるときも離れることは許されないわけであるし、お互いの信頼と理解を深める意味でも実に有効的な手段であると。
恋仲になることも禁止してはいない。むしろ選定前は違っていても、クリスやアルマのような同性といったケースを除けば、後に聖女と聖騎士が恋人同士になる可能性は極めて高い。「この二人なら（身分的に）釣りあいが取れているし問題ない」といった選定基準が存在するくらいだ。

カイとイリスもそうだった。もし二人が恋仲になったとしても、平民同士なら身分的に問題はない。だからこの二人の組み合わせが決定した。


「言っとくけど、変なことしたらぶん殴るから」


「しねーよ」


カイとイリスはコンビが決まったと同時に共同生活を余儀なくされた。家を一軒与えられ、寝食はそこでするように強制される。しかし健全な男女が一つ屋根の下にいれば、いずれ間違いは起こり得る。
だが、彼らは恋仲になることは許されても、肉体関係を結ぶことは許されていない。聖女も聖騎士もともに純潔を失うと、聖力を失うと言われているのだ。なので掟を破るとすぐにわかる。
今だ掟を破った者は現れていないとされているが、これをもし破ると死罪に等しい厳罰が待っている。

厳しいようであるが、サンクレアの名誉と威信をかけた聖女と聖騎士の名誉職を、個人の欲望によって汚されてはならないので、仕方がないといえば仕方が無かった。



だが、体の繋がりは無くとも、元より波長が合っていたのかカイとイリスはあっと言う間に距離を縮めた。
結局同居を開始してから一月と待たないうちに、二人は恋人同士となったのである。

強い心で結ばれた二人の間で作られた聖剣は非常に斬れ味の鋭い、東方の国の曲刀の形となる。
「ムラマサ」と名付けられたそれは、カイの剣の腕のこともあっていかに頑強な敵であっても、簡単に切り裂くのことの出来る史上最強と呼ばれる聖剣であった。

国民達はその聖剣の強さから、二人の愛はとても深く強いのだと羨望の眼差しを向け、カイとイリスは熱狂的と呼べるほどの人気を誇るようになった。