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反逆

嵐の前の静けさ

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カイは思い出にふけりながら歩き、中心街へと足を踏み入れる。

中心街は郊外エリアから塀を隔てたエリアであり、郊外エリアからも自由に人の出入りは出来るものの、郊外エリアとは明らかにインフラの整備加減から建物の質まで何もかもが違っている。
財を持つ者、ラビス教の信仰が深く教会からの覚えの良い者、教会関係者などなど、サンクレア内でもカーストの高い位置にいる者がこの中心街エリアに住まう。

中心街では郊外エリアと違い、全体的にお祭りムードとなっていた。
「戦勝記念セール」と銘打った安売りをしている商店がいくつかあり、また街中でも祝い事のときに使われる飾り物がいたるところに用意されていた。

今、サンクレアでは二つの祝い事がある。
一つはユーライ国への戦勝記念。そしてもう一つは聖女マーサと聖騎士ハルトとの結婚式だ。
結婚式当日はパレードが行われ、中心街全域をハルト達が回り人々にお披露目されることになっている。中心街の住民はその日を今か今かと待ち遠しくしているようだった。


「浮かれているねぇ・・・」


カイはそんな街の様子を見て、皮肉めいた笑みを浮かべながら呟いた。
住人の大半が、この世の春が来たと言わんばかりの浮かれっぷりだなとカイは思った。影で誰が死んだか何てわからない、誰が泣いているかなんて知ろうともしない、ただただ法王の発表を鵜呑みにし、都合の良い情報だけを信じて面白可笑しく楽しく暮らす。


(大衆は楽でいいな)


小ばかにする気持ちと、羨ましい気持ちが芽生える。
自分もいっそ彼らのように、信じたいものだけを信じ、良いものだけを見ていられて能天気に生きていけていられたら、どれだけ良かったか。


(というか、俺って死んだことになってるんだよな。もう少しそういうの引っ張ってくれていても良かったんじゃない?)


中心街の人間は元聖騎士カイと元聖女イリスの死についてはすっかり忘れ去ったかのようなはしゃぎっぷりである。それを見てカイは呆れるやら寂しいなら複雑な気持ちになった。


「まぁ、せいぜい楽しんでおいてくれよ皆・・・」


そう呟き、カイは再び歩きだす。


「もう少ししたら、この幸せを壊してしまうかもしれないからなぁ」


カイの独り言は、誰にも聞かれることはなかった。
住民達はを堪能していた。
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