聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

凋落した世界の指導者

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「ほぉ、サンクレアは籠城を決め込んだか」


神都から僅か離れた平原、そこに展開するユーライ軍の陣で臣下の報告を聞いてユーライ国王は感嘆したように言った。


「まさかカイ殿の読み通りとはな」


ユーライ国軍は神都の混乱に乗じて突入し、勢いこそあったものの絶対数ではサンクレア騎士団には遠く及ばない。ましてサンクレアにはまだ秘蔵の神殿騎士もいれば、聖騎士もいるのだ。多少の犠牲を払ってでもユーライ国軍を殲滅するまで兵は引かぬだろうとユーライ国王は考えられていたが、カイはサンクレアは遠からず籠城戦に移行するだろうということを読んでいた。

ユーライ国軍の被害は現在のところは極めて軽微なれど、それでも従来ならサンクレアが混乱から立ち直り、冷静に対処するようになれば、簡単に押し返されてしまうはず・・・それだけの戦力差があるはずだった。


「報告します」


ユーライ国王が考え込んでいると、そこへ斥候部隊が本陣に帰還し、隊長が王の前に跪いて報告を始めた。


「斥候部隊全て引き上げました。サンクレア城はカイ殿が申していた絶対魔法障壁を展開し、外界と隔絶。神都民と騎士団が取り残されている状態です」


「ほぉ、そうか」


サンクレア上層部が民と兵を見捨てたことに驚愕するが、これもカイが「可能性の一つ」として予想していたことだった。

繰り返しになるが、サンクレアの戦力はユーライ国軍のそれを遥かに上回る。
落ち着いて対処すれば、時間はかかっても決して負けることはないし、神都内に兵を侵入させても大して暴れさせることなく押し返すことが出来るはずだった。


「カイ殿が言った、『サンクレアの急所』を突いた結果ということか。サンクレアは明らかに冷静さを欠いている」


斥候の報告を聞くに、サンクレアは既に法王城とそれ以外とで二分しているような状態だという。
法王城は騎士団に事前通達することなく障壁を張って籠城し、騎士団は騎士団でこれまた独断で神都で籠城するつもりのようであった。民にも騎士団が根気強く説明し、どうにか混乱を最小限に抑え込もうとしている最中だと聞き、王はふぅと溜め息をついた。


「随分と聞こえの良い言葉を並べていた『世界の指導者』を自称していたサンクレアも、一度揺らいでしまえばこのようなものか。最も、一度国を滅ぼしかけた私に言えたことではないだろうが・・・な」


王は自嘲気味に笑うが、次の瞬間には表情を引き締めた。


「では次の段階に移るぞ。皆の者、準備をいたせ」
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