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反逆

見捨てられた者達

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サンクレアの法王城を囲む絶対魔法障壁。
法王城の周囲を囲む城壁の数百カ所に及び点在する魔法陣を使って発動されるそれは、神都民のみならず騎士団でも知っている者はある程度階級の高いごく僅かの人間である。

副騎士団長は障壁を一目見て、それだとすぐに気付いた。
有事の際は法王、そして法王城の警護を優先し、外界と隔絶する代わりにあらゆる脅威から身を守り、籠城する。
それがサンクレアに極秘で伝わる非常時の裏プランであった。

法王城には騎士団とは比較にならないほど強力な武装と実力を持った神殿騎士が控えており、実質サンクレアの武力の四分の一ほどが温存されている。

その法王城が外界と隔絶した。
外で戦っている騎士団は、法王城に見捨てられたということになる。


「・・・はは、馬鹿な・・・」


副騎士団長は力なく腕をだらりと下げた。
膝を折らないでいるのは奇跡と言えるほど、彼の心は空虚なものになっている。

サンクレアのために命を賭して戦うつもりだったのに、その肝心のサンクレアの上層部は民も兵も見殺しにするという決断を下した。
周辺各国にはサンクレアの駐在軍が点在している。
それらが本国へ戻ればユーライ国軍など軽く一掃できるだろうーー だが、それらサンクレア軍まで通達が行き、準備をし、本国まで戻ってくるまでには最短距離にいる軍でも二週間はかかる。
その間は民も騎士も法王城の支援もなく耐えねばならないのだ。無茶である。

騎士はそれでも良い。鎧を着たときからそれが死に装束になるという覚悟が出来ている。
だが、民はそうではない。せめて民を少しでも城に避難させてからでも、障壁を張るのは遅くはなかったはずだーー


そう考えて、そう言えば騎士団長であるアドルや聖騎士であるハルトが戻ってこないことに気付く。
戦場では絶対にいるべき存在であるのに、今ここにはいない。
そうか、元よりハルトは法王城に戻って来いという達しがあったのだろうーー 聖騎士はサンクレアの宝だ。だから雑兵である我らと違って切り捨てて良いものではない。

副騎士団長はハルトですらが自分達を裏切り、安全圏に避難したと思った。
それは厳密には誤解であったが、結果としてハルトは法王城に残る決断をしたのだから同じことである。


(法王城が我らを切り捨てるならば、我らは・・・!)


「全軍、直ちに神都内まで撤退せよ!これより我々は籠城する!!」


副騎士団長は独断でそのように決断し、命令を発した。
ユーライ国軍を迎え討てという当初上層部から出された指示を無視したものだが、誰も副騎士団長の意向に異を唱える者はいなかった。

これにより、サンクレアは意外な形で崩壊を迎えることになる。
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