135 / 203
反逆
聖剣を持たぬ聖騎士に意味はあるのでしょうか
しおりを挟む
「・・・なんだと?」
サンクレアの心臓の手前にある隠し通路を警備していた神殿騎士達は、ハルトに警備を代われと言われて驚きの声を上げた。
サンクレアの心臓を警備は名誉職である。それをいきなり横取りしようとしているのか?と、神殿騎士らは腹を立てて抗議をする。
しかし、法王自らが書いた手紙を見せることで、彼らは渋々ながらもその場を離れる意志を見せた。いかに神殿騎士といえど法王の意向には逆らえない。
ハルトはこの場の警備をする際、万が一カイとの戦闘になったら足手まといになるだけだと判断したので、彼らをサンクレアの心臓から遠ざけることに決めた。
法王の意向でもあるとはいえ、これには神殿騎士らもプライドを刺激されて憤った。
「それにしても、今となっては名ばかりの聖騎士サマで本当に大丈夫なんですかねぇ・・・」
現場を離れる際、一人の神殿騎士が負け惜しみを言い出した。
「名ばかりとは?」
聞き流せばそれで終わりだったが、あえて負け惜しみにハルトが反応する。
「えぇ?いやぁ、ほら・・・」
絡んだ神殿騎士は、ニヤニヤと笑いながらハルトの腰に下げている剣を見つめた。
「聖女様亡き今は、その聖剣は力を失われているのでしょう?でしたら今腰に下げているそれは、ナマクラということになりますなぁ」
嫌味ったらしく言われた神殿騎士のそれは明らかに挑発的な態度であったが、近くにいる彼の仲間も特に咎めようとはしない。神殿騎士の多くは聖騎士に敬意を持っていないからだ。むしろ下位の人間だとすら思っているのである。
だから神殿騎士達は無遠慮にハルトの心を抉るようなことを言えるのだ。
「持っている得物が聖剣でないとするならば、ただのカカシですな」
神殿騎士は実際に戦場に出ることがほとんどない。だから、聖騎士の戦闘力は聖剣があってこそと勘違いをしている者も普通にいた。
「・・・えぇ、今僕が持っている得物は、確かに聖剣ではありません。ですが、貴方がたよりはずっとお役に立てることでしょう」
そう言って徐にハルトは剣の柄に手をかける。
そしてゆっくりと刀身を鞘から出すのを見て、神殿騎士達は息を飲んだ。
サンクレアの心臓の手前にある隠し通路を警備していた神殿騎士達は、ハルトに警備を代われと言われて驚きの声を上げた。
サンクレアの心臓を警備は名誉職である。それをいきなり横取りしようとしているのか?と、神殿騎士らは腹を立てて抗議をする。
しかし、法王自らが書いた手紙を見せることで、彼らは渋々ながらもその場を離れる意志を見せた。いかに神殿騎士といえど法王の意向には逆らえない。
ハルトはこの場の警備をする際、万が一カイとの戦闘になったら足手まといになるだけだと判断したので、彼らをサンクレアの心臓から遠ざけることに決めた。
法王の意向でもあるとはいえ、これには神殿騎士らもプライドを刺激されて憤った。
「それにしても、今となっては名ばかりの聖騎士サマで本当に大丈夫なんですかねぇ・・・」
現場を離れる際、一人の神殿騎士が負け惜しみを言い出した。
「名ばかりとは?」
聞き流せばそれで終わりだったが、あえて負け惜しみにハルトが反応する。
「えぇ?いやぁ、ほら・・・」
絡んだ神殿騎士は、ニヤニヤと笑いながらハルトの腰に下げている剣を見つめた。
「聖女様亡き今は、その聖剣は力を失われているのでしょう?でしたら今腰に下げているそれは、ナマクラということになりますなぁ」
嫌味ったらしく言われた神殿騎士のそれは明らかに挑発的な態度であったが、近くにいる彼の仲間も特に咎めようとはしない。神殿騎士の多くは聖騎士に敬意を持っていないからだ。むしろ下位の人間だとすら思っているのである。
だから神殿騎士達は無遠慮にハルトの心を抉るようなことを言えるのだ。
「持っている得物が聖剣でないとするならば、ただのカカシですな」
神殿騎士は実際に戦場に出ることがほとんどない。だから、聖騎士の戦闘力は聖剣があってこそと勘違いをしている者も普通にいた。
「・・・えぇ、今僕が持っている得物は、確かに聖剣ではありません。ですが、貴方がたよりはずっとお役に立てることでしょう」
そう言って徐にハルトは剣の柄に手をかける。
そしてゆっくりと刀身を鞘から出すのを見て、神殿騎士達は息を飲んだ。
0
あなたにおすすめの小説
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる