新訳・親友を裏切った男が絶望するまで

はにわ

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サヨナラ!

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「ディオ!無理をするな!」


ウラエヌスさんが叫んだ。

別にディオは深手を負っているわけではない。だが、バリーさんと違い、決定打となる剣技を持ってはいなかったはずだ。決め技を持っていたバリーさんが雌堕ちしてしまった今、もう魔王を倒す手立てはない。

それなのに・・・


「おぉっ・・・あれは・・・」


ウラエヌスさんは驚愕に目を見開く。それは俺も同様だった。
なんとディオはデッドレールではないものの、バリーさんが使っていた技を見様見真似で繰り出し、魔王の外皮を少しずつ削り取っていたのだ。

バリーさんから教えを乞う時間はなかったはず。
となるとディオはバリーさんの技を「見て覚えた」のだ。とことん非凡なやつ。
いっそ嫌味に思うくらいの才能であるが、それが今はとにかく頼もしい。

だが、細々と削ったところで魔王を仕留めるには至らない。
ディオは魔王の攻撃を捌きながら、針に糸を通すような細かな隙を突いて攻撃を重ねていく。ただ、徐々に魔王の動きが元に戻り、ディオが攻撃を捌くのもギリギリになっていった。
そしてついに防戦一方になり、攻撃をすることが一切できなくなっていった。


「・・・そうか、そうなのだな」


俺にしなだれかかっていた(やめてほしい)バリーさんが何かに気付いたように呟いた。
そして再び愛剣ブライアントを手に取ったのである。


「何をするんですか?もうあなたの体は・・・」


「ふっ、雌に堕ちた男でもそれなりにできることがあるのだ」


バリーさんは何かカッコつけたように言っているが、とても期待できそうにないなと俺は思っていた。
そう思った次の瞬間だった。


「イヤーーーー!」




バリーさんは奇声を上げながら魔王に突貫した。
あまりの奇声に驚き、思わず魔王も標的をディオからバリーさんに変えたようだ。

魔王が腕を振って攻撃を仕掛けてくる。
先ほどは剣で受け流してバリーさんは、今度はもろに食らって血反吐を吐いていた。
どうやらデッドレールの後遺症で雌になってしまった体では先ほどのように渡り合うことはできないらしい。


バキッ
ガスッ
ドカッ


死体蹴りのようにダウンしたバリーさんを魔王の追撃が襲う。


「バリーさん!」


もう駄目だ、死んでしまう・・・
俺はその瞬間を覚悟した。

だが、そう思っていた次の瞬間には信じられないものを見て俺は驚愕していた。


「でぃ、ディオ!?」


ディオが剣を構えて魔王の死角から突貫していた。


「ま、まさかあの技は・・・!」


ディオが放った技、それは先ほどバリーさんが打った必殺技デッドレールであった。
伝説の勇者の必殺技を、初見でディオは会得したのだ。


「ガアアアアアアアアアア」


魔王は今度こそ花火めいて爆裂四散した。
こうして魔王はついに倒された。
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