新訳・親友を裏切った男が絶望するまで

はにわ

文字の大きさ
39 / 92

運命の分かれ道

しおりを挟む
「やった・・・!ついに魔王を倒したのか・・・!」


思わず俺は歓喜の声を上げていた。まぁ俺は何も魔王にダメージを与えていない役立たずですけどね。


「手ごわかったが、どうにか片付いたか」


そう言ってウラエヌスさんが溜め息をつく。
出ましたね役立たず二号さん。


「そうだ、ディオ!」


俺がデッドレールを放って膝をつくディオの元に駆け寄った。
デッドレールを放ったバリーさんは技の後遺症で脱力して雌になってしまっていたが、ディオは大丈夫だろうか?

ディオは少し息は荒かったが、それでも技の後遺症はバリーさんほどではないようだ。
ないようだ・・・が・・・なんだか少し弱っているからというか、元から美形なディオが女に見えてしまう。このまま見ていると心奪われてしまうような・・・そんな魅力が・・・


「って、いかん!」


俺は頭を振って変な気持ちを吹き飛ばした。


「バリー!しっかりせんか!!」


ウラエヌスさんの声でバリーさんのことを思い出した。
そういえばディオがデッドレールを撃つ直前まで魔王の攻撃を受けていたのだった。あれはディオの動きに気付いて、陽動していたのだと今ならわかる。
かなりダメージを受けていたようだが、大丈夫だろうか。


「ふ・・・もはやここまでのようだ」


あ、駄目みたいですね。


「元々死病に侵されていたのだ。最後の奉公のつもりで臨んだ戦いだったが、ディオのような有望な男がこの国にいるのなら、もう私は思い残すことはない・・・」


そう言うバリーさんの顔は本当に晴れやかだった。これから死ぬというのに、全く微塵も未練など無さそうであった。


「私達の後継者たる者がいないのに、時代が変わるからと排除されることに悔しさを感じていた・・・若いだけの無能どもがと若者を見下していた・・・だが、ディオのような逸材が現れたのなら、私は心置きなく消えることができる。最後くらい勇者らしくいられたかな・・・?」

そう言ってバリーさんは震える手で自身が持っていた名剣ブライアントをディオへ差し出した。


「良かったら使ってくれ・・・」


ディオはブライアントを受け取ると、しっかりと頷いた。
それを見届けるとバリーさんは満足げに笑みを浮かべてそのまま帰らぬ人となった。


ディオはバリーさんの手を握ったまま動かず、ウラエヌスさんは僧侶としてバリーさんが昇天できるように祈っていた。忘れていたけど僧侶だったなあの人。

俺は、こういう湿っぽい空気は苦手なので、なんとなく彼らから目を逸らしてうろうろしていた。

だがそのとき俺は、とある石像の台座のところに何やら隠し扉のようなギミックがあるのを発見する。
この発見がこそがこの先の俺の運命の分かれ道であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...