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重い2週間

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「あれこれ言うつもりはないわ。全てに優先して、2週間あの子と一緒に居て頂戴。それだけよ」


ビールを半分ほど飲んでから言ったローザの要求は実にシンプルだった。
どこまでだろう?全てだろうか?多分そうなんだろうな。
この酒場でアミルカと交わした会話はほぼ把握されているだろうから、今さら「何故知ってる?」などと言うつもりはない。ローザはそういうやつだ。


「まぁ約束しちまったからな。約束は可能な限り守るさ。ただ・・・」


言いかけて、俺は言葉に詰まった。
ギルドからの依頼についてはどうしようもない。極秘依頼が出されれば出るしかない。
俺はこれまで全く休んでいないから、いくらかは言えば休めるはずだ。しかし、2週間まるまるというわけにはいかないだろう。良くて半分ほど休めるかどうかといったところではないだろうか。

しかしそれをここでローザに伝えることはできない。
極秘依頼について話をしようとするなら守秘義務に反してしまうことになる。だからどう言ったものかと悩んでいると


「ギルドのことなら心配いらないわ」


「えっ?」


全てを見透かしたようにローザは言った。
極秘依頼のことをまさか知っている・・・?
ローザなら確かに知っていそうな感じはするが。


「この2週間、貴方には依頼が出されることは無いから」


「・・・は?」


そう言って不適に笑うローザ。


「どうしてそれがわかるんだ?」


最近の依頼の頻度からして、ローザが言うようなことになるはずはない。断言できると言っていい。



「そういう風にするからよ」


「・・・」


表情も変えずにそう言ってのけるローザに対し、俺はそれ以上聞くことをやめた。
聞いても何をするかは答えてくれない気がするし、ローザがそう言ったからには何があろうとそうするのだろうと確信があった。


「はぁ、わかったよ。有難い休みを頂戴したと思っておく」


俺が観念してそう言うと


「わかって貰えて嬉しいわ。けど、その時間は全てアミルカに捧げてほしいの。本当に休まれちゃ困るわ」


ローザは微妙に怖いことを言う。アミルカが不眠不休で付き合えといえば、付き合ってくれと言わんばかりだ。



「何にせよ邪魔は入らないようにするから、2週間アミルカとしっぽりやって頂戴」


「いやしっぽりって・・・」


「あの子がもし望むなら、本当にそうしてほしいところだけど・・・」


「いやいやいやいや」


アミルカは俺が故郷に恋人を残してきたということを知っているから、冗談でもそんなことは言わないだろうが。
それにそうするわけにいかない。




「残り2週間だけ、アミルカを楽しませてあげて」


不意に・・・これまで冗談ぽく笑って言っていたローザが、真剣な顔をしてそう言った。
残り2週間・・・もしかしたらこの2週間は、俺が思っているよりずっとアミルカやローザ達にとっては重く感じているものなのかもしれない。
その大事な2週間を、俺と一緒に過ごしていいのか?そんな野暮なことを聞くつもりはなかった。
それをアミルカが望むなら、出来る範囲で俺はそれに応えるつもりだ。


「おぅ、任せな」


俺がそう答えるとローザは嬉しそうに笑い、また俺に酒を勧めてきた。



その日の夜、俺は飲み過ぎで盛大に吐いた。
翌日まで酔いが長引かないことを祈るばかりだ。
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