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第2話 アイテムボックスって、何?
【2】(挿絵有り)
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(なんだ? 筒から何かが飛び出した?)
目を凝らすと、“円錐のような金属”がミナトの構えた短筒から18個射出した。その“物体”は次々と怪物に当たってはその皮膚を抉り、ダメージを与えている。
アスヴェルはその光景から、あるモノを連想した。
(まさか、アレは“銃”なのか!?)
銃とは火薬を使って鉄筒から弾を発射して攻撃する武器であるが、彼の知っているソレはもっと巨大であり、少女が片手で扱えるような代物ではない。しかし、見たところ機構は似ているように思えた。
(遥かに高度な技術で作られている、のか? 推進力から察するに、火薬の威力自体がそもそも違う。 弾の軌道も滑らかで――おそらく、銃身の精度がこちらとは比べ物にならない程に高い)
加えて、弾の大きさに比べて破壊力が高いように見受けられる。
(先端が尖っているから?――いや、それだけじゃないな。弾の回転が威力を底上げしているんだ。
ひょっとしたら弾道の安定にも一役買っているのかもしれない。
しかし、いったいどんな技術があればあれ程に精巧な銃身と弾丸を造れるというんだ!?)
ラグセレス大陸の技術レベルでは、どれだけ時間と費用をつぎ込んでも真似できそうにない。ミナトは、丸腰どころか驚くべき武器を携帯していたのだ。
――と、ここまでの考察を思考を加速させて数秒で済ませる。最終的にたどり着いた結論は、
(……ま、後で聞けばいいか)
身も蓋も無いものだった。実際問題、今は魔物退治が先決である。
「よっと!」
銃弾を浴びて狼狽えている怪物の内、一匹の腕を掴んで先程同様に投げ飛ばす。
「ほいっ!」
もう一匹は頭を掴み、テコの要領で首をポキッと捻り折った。
どさりと崩れ落ちる怪物。
「ふむ、今ので最後のようだな」
周囲を見渡してみるが、もう動く気配は無い。
「……マジかよ、ヌエ5匹を軽く仕留めやがった。一匹HP2万は超えてるのに――イベント戦闘にしたってやり過ぎじゃないか?」
一転、呆けた様子で最早動かぬ怪物達を見つめるミナト。言っている内容はいまいち不明瞭だが、アスヴェルの力量に感嘆しているのは間違いない様だ。
(ふっふっふ、これで好感度は爆上がりだろう)
内心ほくそ笑んでいた、その時。信じられないことが起きた。
「な、なんだ!? 魔物の姿が消えた!?」
「そら消えるだろ、倒したんだから」
怪物が消滅したことに驚くアスヴェルだが、一方でミナトは涼しい顔。こうなって当然、と言わんばかりだ。
「よ、よくあることなのか、これは?」
「そうだよ」
あっさりと返答がくる。嘘をついているようには見えない。
(ゴーストか何かの類だったのか? その割に、殴った時にしっかり手応えがあったが……)
色々な考えが頭をめぐるが、悩んでも仕方ないと一旦思考を中止する。少女がそう言っている以上、そういうものなのだと割り切るしかない。
そう納得した直後――
「――む? 何だこれは?」
床に何か落ちていることに気付く。ちょうど、魔物が倒れていた場所だ。
「何って“ドロップ”だよ――ってうぉおっ!!? アイテムがゴロゴロ落ちてるじゃないか!!」
言う通り、石畳の上には爪やら毛皮やらが幾つも転がっていた。ミナトを信じるなら、魔物が落としたアイテムということなのだが……
(姿は消えても、こういうのは残るのか?)
仕組みがよく分からない。ただ、彼女が目の色を変えているところを鑑みるに、
「これは高価な物品なのか?」
「おう! こんだけありゃ、数十万クライズにはなるぜ!」
……クライズとは、こちらでの通貨単位であろうか? 喜びようからして、大金なのだと思われる。無一文の身(所持金も無くなっていた)なので、お金が手に入るというのは有難い。ただ、
「……少し量が多すぎるな。全部を運ぶのは無理か」
落ちているアイテムはかなり嵩張っていた。大きな袋か何かが無ければ、運搬は難しい。残念だが、持てる分だけ拾っておくしか――
「あ、それなら大丈夫だ」
――と、思っていたらミナトがあっさり否定した。彼女は軽く手を上げると、
「<アイテムボックス>、オープンっ」
「え?」
その言葉を呟くや否や、何も無い空間へ“窓”のようなモノが出現した。“窓”にはよく分からない記号だか文字だか絵だかが色々と浮かび上がっている。ミナトはそれを確認すると、
「よし、まだ“空き”は十分有るな」
一つ頷いてから、床に転がっている物品をその“窓”へと放り投げる。すると――
「――え? え?」
……理解できないことが起きた。投げられたアイテムが“窓”に当たると、そのアイテムが消えてなくなったのだ。まるで、その“窓”に吸い込まれたかのように。
「ちょっ――――え? え? え?」
アスヴェルが戸惑っている間にも、ミナトは物品を拾っては“窓”に入れ、拾っては“窓”に入れ、を繰り返す。あっという間に、床には何も無くなっていた。
「あの――ミナトさん?」
混乱して、ついつい敬語で話しかけてしまう。
「ん? どうした?」
「今、何したの?」
「何って、<アイテムボックス>にドロップを回収――――あー、そうか。NPCは<アイテムボックス>使えないんだっけ」
「……アイテムボックス?」
他にも気になる単語はあったが、とりあえず今の出来事に一番直結しそうな単語を聞き返す。
「そ、<アイテムボックス>。この中にアイテムを収納できるんだ」
言って、ミナトは宙に浮かぶ“窓”に手を突っ込む。その手を引き抜くと、先程落ちていた爪が握られていた。
「ほら、こうやって出し入れ自在。持ち歩きにくい道具は全部ここに入れてるって寸法さ」
少女は他にもランタンやロープなどの冒険道具も“窓”から取り出して見せた。
その後、出したアイテムを再び“窓”にしまい込む。
「<アイテムボックス>、クローズっ」
最初と似たような言葉を紡ぐと、“窓”は消え去った。後には何も残らない。
「……なにそれ、凄い便利」
アスヴェルは完全に呆けていた。
(そんなの有りなのか)
何もない場所に物をしまうとは、いったいどういう原理だと言うのか。別の場所に物体を一時的に転移させている? それとも圧縮して小さくしているのか? 何にせよ、自分の理解が及ばない技術なのは間違いない。
口を半開きにしたまま呆然としているアスヴェルに対し、ミナトはどこか意地悪そうに笑って、
「へへ、驚いたか? ここじゃ誰だって<アイテムボックス>使えるんだぜ?」
「な、何ぃいいいっ!!?」
石造りの部屋に、アスヴェルの絶叫が木霊した。有り得ない。そんなトンデモ技術が、民衆に広まっているとは。このロードリア大陸においては、下手をすると“運搬”という概念そのものがラグセレス大陸と異なるかもしれない。
「ほ、本当に――本当に消えてなくなったのか!?」
だが目の前で見せられたといっても、やはりそう簡単に納得いくものではなかった。実は彼女が何らかのトリックを使って――それこそどんなトリックか想像もできないが――物品を隠し持っているのではないか。そんな疑念が拭いきれなかった。
――なので、身体チェックしてみる。
「お、おい、だからアレは<アイテムボックス>に入れたんだって! オレを怪しんでも何も出てこねぇよ!」
ペタペタとミナトの身体を触ってみても、確かにアイテムのアの字も無い。しかしまだ納得できない。
「しつこいぞ!? <アイテムボックス>のこと、いい加減理解しろっ――――あぅっ」
ピクッと少女が小さく震える。しかしそれは些細なことだ、今は問題では無い。
問題なのは本当に物が消えたのかどうかであって――――なんというか、凄くスベスベしている肌である。
この大陸のことを理解するためにも、必要なことなのである――――そのモチモチ感は癖になりそうだった。
「ちょ、ちょっと、どこ触ってんだ! や、ダメ、待って、そこは――!?」
アイテムは本当に無いのか――ああ柔らかい。
少女の言う<アイテムボックス>という技術は信じるに値するのか――それにこの丸み、芸術品だ。
「んっ、あっ、やめっ―――い、いい加減、変なとこ触るの止めろぉっ!!!!!」
怒りの回し蹴りを繰り出すミナト。その爪先は的確にアスヴェルのこめかみにヒットし――
「キテハァッ!?」
――その衝撃で、彼はその場に崩れ落ちるのだった。
◆勇者一口メモ
どっちかっていうとお尻星人。
目を凝らすと、“円錐のような金属”がミナトの構えた短筒から18個射出した。その“物体”は次々と怪物に当たってはその皮膚を抉り、ダメージを与えている。
アスヴェルはその光景から、あるモノを連想した。
(まさか、アレは“銃”なのか!?)
銃とは火薬を使って鉄筒から弾を発射して攻撃する武器であるが、彼の知っているソレはもっと巨大であり、少女が片手で扱えるような代物ではない。しかし、見たところ機構は似ているように思えた。
(遥かに高度な技術で作られている、のか? 推進力から察するに、火薬の威力自体がそもそも違う。 弾の軌道も滑らかで――おそらく、銃身の精度がこちらとは比べ物にならない程に高い)
加えて、弾の大きさに比べて破壊力が高いように見受けられる。
(先端が尖っているから?――いや、それだけじゃないな。弾の回転が威力を底上げしているんだ。
ひょっとしたら弾道の安定にも一役買っているのかもしれない。
しかし、いったいどんな技術があればあれ程に精巧な銃身と弾丸を造れるというんだ!?)
ラグセレス大陸の技術レベルでは、どれだけ時間と費用をつぎ込んでも真似できそうにない。ミナトは、丸腰どころか驚くべき武器を携帯していたのだ。
――と、ここまでの考察を思考を加速させて数秒で済ませる。最終的にたどり着いた結論は、
(……ま、後で聞けばいいか)
身も蓋も無いものだった。実際問題、今は魔物退治が先決である。
「よっと!」
銃弾を浴びて狼狽えている怪物の内、一匹の腕を掴んで先程同様に投げ飛ばす。
「ほいっ!」
もう一匹は頭を掴み、テコの要領で首をポキッと捻り折った。
どさりと崩れ落ちる怪物。
「ふむ、今ので最後のようだな」
周囲を見渡してみるが、もう動く気配は無い。
「……マジかよ、ヌエ5匹を軽く仕留めやがった。一匹HP2万は超えてるのに――イベント戦闘にしたってやり過ぎじゃないか?」
一転、呆けた様子で最早動かぬ怪物達を見つめるミナト。言っている内容はいまいち不明瞭だが、アスヴェルの力量に感嘆しているのは間違いない様だ。
(ふっふっふ、これで好感度は爆上がりだろう)
内心ほくそ笑んでいた、その時。信じられないことが起きた。
「な、なんだ!? 魔物の姿が消えた!?」
「そら消えるだろ、倒したんだから」
怪物が消滅したことに驚くアスヴェルだが、一方でミナトは涼しい顔。こうなって当然、と言わんばかりだ。
「よ、よくあることなのか、これは?」
「そうだよ」
あっさりと返答がくる。嘘をついているようには見えない。
(ゴーストか何かの類だったのか? その割に、殴った時にしっかり手応えがあったが……)
色々な考えが頭をめぐるが、悩んでも仕方ないと一旦思考を中止する。少女がそう言っている以上、そういうものなのだと割り切るしかない。
そう納得した直後――
「――む? 何だこれは?」
床に何か落ちていることに気付く。ちょうど、魔物が倒れていた場所だ。
「何って“ドロップ”だよ――ってうぉおっ!!? アイテムがゴロゴロ落ちてるじゃないか!!」
言う通り、石畳の上には爪やら毛皮やらが幾つも転がっていた。ミナトを信じるなら、魔物が落としたアイテムということなのだが……
(姿は消えても、こういうのは残るのか?)
仕組みがよく分からない。ただ、彼女が目の色を変えているところを鑑みるに、
「これは高価な物品なのか?」
「おう! こんだけありゃ、数十万クライズにはなるぜ!」
……クライズとは、こちらでの通貨単位であろうか? 喜びようからして、大金なのだと思われる。無一文の身(所持金も無くなっていた)なので、お金が手に入るというのは有難い。ただ、
「……少し量が多すぎるな。全部を運ぶのは無理か」
落ちているアイテムはかなり嵩張っていた。大きな袋か何かが無ければ、運搬は難しい。残念だが、持てる分だけ拾っておくしか――
「あ、それなら大丈夫だ」
――と、思っていたらミナトがあっさり否定した。彼女は軽く手を上げると、
「<アイテムボックス>、オープンっ」
「え?」
その言葉を呟くや否や、何も無い空間へ“窓”のようなモノが出現した。“窓”にはよく分からない記号だか文字だか絵だかが色々と浮かび上がっている。ミナトはそれを確認すると、
「よし、まだ“空き”は十分有るな」
一つ頷いてから、床に転がっている物品をその“窓”へと放り投げる。すると――
「――え? え?」
……理解できないことが起きた。投げられたアイテムが“窓”に当たると、そのアイテムが消えてなくなったのだ。まるで、その“窓”に吸い込まれたかのように。
「ちょっ――――え? え? え?」
アスヴェルが戸惑っている間にも、ミナトは物品を拾っては“窓”に入れ、拾っては“窓”に入れ、を繰り返す。あっという間に、床には何も無くなっていた。
「あの――ミナトさん?」
混乱して、ついつい敬語で話しかけてしまう。
「ん? どうした?」
「今、何したの?」
「何って、<アイテムボックス>にドロップを回収――――あー、そうか。NPCは<アイテムボックス>使えないんだっけ」
「……アイテムボックス?」
他にも気になる単語はあったが、とりあえず今の出来事に一番直結しそうな単語を聞き返す。
「そ、<アイテムボックス>。この中にアイテムを収納できるんだ」
言って、ミナトは宙に浮かぶ“窓”に手を突っ込む。その手を引き抜くと、先程落ちていた爪が握られていた。
「ほら、こうやって出し入れ自在。持ち歩きにくい道具は全部ここに入れてるって寸法さ」
少女は他にもランタンやロープなどの冒険道具も“窓”から取り出して見せた。
その後、出したアイテムを再び“窓”にしまい込む。
「<アイテムボックス>、クローズっ」
最初と似たような言葉を紡ぐと、“窓”は消え去った。後には何も残らない。
「……なにそれ、凄い便利」
アスヴェルは完全に呆けていた。
(そんなの有りなのか)
何もない場所に物をしまうとは、いったいどういう原理だと言うのか。別の場所に物体を一時的に転移させている? それとも圧縮して小さくしているのか? 何にせよ、自分の理解が及ばない技術なのは間違いない。
口を半開きにしたまま呆然としているアスヴェルに対し、ミナトはどこか意地悪そうに笑って、
「へへ、驚いたか? ここじゃ誰だって<アイテムボックス>使えるんだぜ?」
「な、何ぃいいいっ!!?」
石造りの部屋に、アスヴェルの絶叫が木霊した。有り得ない。そんなトンデモ技術が、民衆に広まっているとは。このロードリア大陸においては、下手をすると“運搬”という概念そのものがラグセレス大陸と異なるかもしれない。
「ほ、本当に――本当に消えてなくなったのか!?」
だが目の前で見せられたといっても、やはりそう簡単に納得いくものではなかった。実は彼女が何らかのトリックを使って――それこそどんなトリックか想像もできないが――物品を隠し持っているのではないか。そんな疑念が拭いきれなかった。
――なので、身体チェックしてみる。
「お、おい、だからアレは<アイテムボックス>に入れたんだって! オレを怪しんでも何も出てこねぇよ!」
ペタペタとミナトの身体を触ってみても、確かにアイテムのアの字も無い。しかしまだ納得できない。
「しつこいぞ!? <アイテムボックス>のこと、いい加減理解しろっ――――あぅっ」
ピクッと少女が小さく震える。しかしそれは些細なことだ、今は問題では無い。
問題なのは本当に物が消えたのかどうかであって――――なんというか、凄くスベスベしている肌である。
この大陸のことを理解するためにも、必要なことなのである――――そのモチモチ感は癖になりそうだった。
「ちょ、ちょっと、どこ触ってんだ! や、ダメ、待って、そこは――!?」
アイテムは本当に無いのか――ああ柔らかい。
少女の言う<アイテムボックス>という技術は信じるに値するのか――それにこの丸み、芸術品だ。
「んっ、あっ、やめっ―――い、いい加減、変なとこ触るの止めろぉっ!!!!!」
怒りの回し蹴りを繰り出すミナト。その爪先は的確にアスヴェルのこめかみにヒットし――
「キテハァッ!?」
――その衝撃で、彼はその場に崩れ落ちるのだった。
◆勇者一口メモ
どっちかっていうとお尻星人。
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