勇者がログインしました ~異世界に転生したら、周りからNPCだと勘違いされてしまうお話~

ぐうたら怪人Z

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第15話 サービス終了、だな

【3】

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(うむ、完璧なタイミングだな。流石だ)

 “ゲーム”の管理室へ侵入した男を見て、アスヴェルは内心で称賛を贈っていた。
 それを口に出すよりも先に、床に転がっている室長が乱入者を指さしながらきょどった声を上げる。

『お、おま、おま、おまえ、は――!?』

 呂律の回っていない。何故こんなのが一番上の立場に就いているのだろうと、首を傾げてしまう。

(よほど人材不足なのか、それとも政府自体も頭あっぱらぱーな集団なのか……)

 何かしっかりとした理由があって欲しいと切に願うアスヴェルである。そうでなければ、そんな間抜け集団と敵対する自分まで哀れに見られてしまう。
 そんな感想をアスヴェルが抱く一方、スキンヘッドの男は先の質問に答える形で律儀に自己紹介を始めていた。

『俺の名は西郷。クラン“エルケーニッヒ”の団長代理をやってるもんだ。
 まあ、レジスタンスでもテロリストでも、好きな方で呼んでくんな』

『て、て、て、テロ――!?』

 分かりやすく驚き怯える男。いやしかし、こんな場所にこんな登場の仕方をしておいて、テロでなければ他になんだと言うのか。

 ――そう。
 サイゴウは、現政府に対するレジスタンスに身を置いていたのだ。いや、サイゴウだけでなく、“エルケーニッヒ”団員のほとんどがそのレジスタンスに所属している。クランを隠れ蓑にして行動していたのである。

(通りで、反政府的な言動をよく見かける訳だ)

 自分達が抵抗組織であると紹介を受けた際、なるほどそれでか、と寧ろ納得してしまった。

(……しかし、本名を言って大丈夫なのか?)

 そんな考えがチラリと浮かぶが――今更か。ここまでしておいて彼等の情報がバレない訳が無い。
 と、アレコレ考えるのはここまでだ。早く彼に現状を聞いておかねばならない。

「なかなか様になってるじゃないか、サイゴウ。首尾はどうだ?」

 画面越しに話しかけると、サイゴウはこちらへと笑顔を向け、

『バッチリさ。この施設の制圧はほぼほぼ完了してる。お前さんが連中をかき回してくれたおかげで、えらく簡単だったぜ』

「そいつは良かった。私も身体を張った甲斐がある」

『他の連中は今、参加者や鑑賞者の身柄確保に走ってるとこだ』

「念を押しておくが、ハルに手荒な真似をしてくれるなよ?」

『当然だ。あいつだってクラン俺達の仲間だからな。それに何より、大恩人でもある。万に一つも失礼な真似はしねぇよ。丁寧に送り出させて貰うし――もし臨むなら、VIP待遇での滞在も受け入れるとも』

「なら安心だ」

 アスヴェルが“ゲーム”内で派手な立ち回りをしたのは、システムへの干渉を隠すためだけではない。サイゴウ達を滞りなく行動させるための陽動でもあったのだ。

 なんでもこの施設は、“ゲーム”の関係で中央から独立して運用されいるため、政府の目が届きにくく襲撃目標に適した場所なのだとか。
 前々から計画は立てられていたものの、警備の厳重さから先送りにし続けていたらしい。

(それを後押ししたのがミナトであり、私ということだな)

 クランの大事な一員であるミナトが参加者に選ばれてしまったことで心が揺さぶられ、そこへアスヴェルが手助けを申し入れたことで覚悟が決まった。

(渡りに船とはこのことだ。流石に私も一人ではどうしようもなかった)

 実を言えば、アスヴェルがクラッキング(とこの技術は呼称するのだそうだ)で行ったのはこの“管理室”と呼ばれる場所を他から孤立させる・・・・・ことだけなのである。
 ……恥ずかしくて人には言えないが、その辺りが限界だった。
 システムの細かい操作や、敵への鎮圧は完全にサイゴウ達頼り。彼等の協力が無ければ、参加者やハルの安全を確保するのは困難を極めただろう。

 ハル、サイゴウ、“エルケーニッヒ”の皆――多くの人々の協力の上で成り立った勝利なのだ。
 かくも頼りになる仲間に恵まれたことを感謝しなければなるまい。

『しかしなぁ、お前さん』

「うん?」

 物思いに耽っていると、サイゴウから声をかけられる。

『こういう状況になると大分性格が変わるのな。最初、別人かと思っちまったぜ?』

「よく言われるよ。まあ、私は敵と相対した際、相手の身も心もズタボロになるまで磨り潰すことを信条としているからな」

『……お前さんの敵に回ることが無いよう、肝に銘じておこう』

「そんなことにはならないと思うがね」

 それにアスヴェルとて、誰にでもあんな態度をとる訳ではない。有り得ないことではあるが仮にサイゴウが敵になったとしても、“苦しまないように屠る”だけの情けはちゃんと持っているのだ。

「それで、この後はどうする?」

『施設職員は全員拘束して当面人質扱いだな。あの政府相手に意味のある行為かは怪しいとこだが。あとは参加者の健康チェック、鑑賞者は態度に応じて逐次対応を検討、周辺を見回りつつ政府に声明を出して――はあ、やることが盛りだくさんだ。悪いが、お前さんはしばらく待機してちゃくれねぇか』

「では、そうさせて貰おう」

 そう言って、アスヴェルは早々に通信を切る。
 さしもの自分も今回は大分消耗した。協力を要請されても、今すぐ応えるのは難しかっただろう。
 だが、本格的な戦いはこれからだ。自分達は政府に喧嘩を打ったのだから。
 ……交渉でなるべく穏便に事を済ませないかという案も出てはいたのだが、サイゴウが一蹴していた。中途半端な覚悟は破滅を呼ぶ。一度始めたなら、最期まで走り切らなければならないのだ、と。アスヴェルも同意見だった。


 ――迫りくる“嵐”を前に、勇者はしばしその身を休めるのだった。






 ――――――――――――――――






「そうだ、これだ、これが勇者アスヴェルだ……!」

「随分と嬉しそうですね」

「と、失礼。
 ――僕はそんなに嬉しそうにしていただろうか?」

「ええ。我が事のように喜んでおいででした。仲がよろしいのですね」

「ハハハ、いや、まさか。
 それで、感想は?」

「とても強いお方と見受けます。実力も、意思も兼ね備えている。
 ただ、勇者という割にあまり品行方正とは言い難いようですが……」

「……まあ、1度世界を滅ぼしかけてるからなぁ」

「え」

「いやいや、それでも2回世界を救っているので、差し引きではプラスだ」

「す、凄い理屈ですね。それで安心させられるとお思いですか?」

「確かに。あいつは劇薬だ。場合によっては無辜の民にすら牙を向けることがある」

「…………」

「だがそれでも、僕達にはあいつが必要なんだ。何より、この機を逃せばもう“奴ら”の支配から抜け出すことはできない。それは貴方も分かっているだろう、陛下・・

「陛下などと。私達の一族がそのような敬称で呼ばれていたのは遠い昔のこと。しかも私はその末席に過ぎません」

「だが人々は貴方が旗印になることを望んでいる」

「――勝てるのでしょうか、“彼等”に」

「勝つ。必ず勝つ。あの“オーバーロード”を相手どって戦えるのは、アスヴェルを置いて他に居ない」

「……分かりました。
 貴方を信じましょう――我が同志、魔王・・テトラ」


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